ハフニウム

【性質と製法】

ヨウ素法による、ハフニウムクリスタルバーです。

杉の葉っぱ状の電解ハフニウム結晶です。

Nikon Macro Nikkor 65mm F4.5 (ap. = 3)/Multiphot/D3

量子論の生みの親、N. Bohr によって存在が予言され、後に見出された元素です。

Bohr は原子軌道の量子数から、72番元素は周期表第四族に属する元素で、おそらくジルコニウムときわめて類似し、ジルコニウムと伴って天然に産するだろうと考え、それを報告したのですが、まさにその通りでした。

コペンハーゲンの Bohr 研で1922年に見出されたこの元素は、ジルコン(ケイ酸ジルコニウム)に伴って、双子のような顔をして混じっていました。

この元素には、コペンハーゲンのラテン語名である Hafnia(後にハフニウムの酸化物も同じ名前になりましたが)にあやかって、ハフニウムという名を与えられました。

ハフニウムは周期表上ではチタンの二つ下、ジルコニウムの真下です。

それより以前に見出された希土類の72番元素は誤報で、Bohr 研の苦労によりジルコニウムの双子の弟が確定されました。

【資源】

最初の発見どおり、天然では常にジルコニウムに混じって産し、地球化学的にきわめて類似した挙動を示します。

変種ジルコンである苗木石(岐阜県苗木地方で見出されたもの)でも最大7%程度のハフニウムを含みます。

ジルコンのジルコニウムをモル比でハフニウムが卓越したケイ酸塩鉱物であるハフノンというものがありますが、これはむしろ例外で、ジルコンに比べ非常に珍しいものです。

【用途】

ジルコニウムは極めて小さな熱中性子吸収断面積を持ち、化学的にも安定なことから原子炉の核燃料被覆で使われます。

ところが、ハフニウムはここだけはまったく兄貴とは違い、ジルコニウムの約600倍の熱中性子吸収能があります。

そのため、核実験クラスのジルコニウムの精製は、徹底的にハフニウムを取り除く必要があります。

原子炉用ジルコニウムでは、ハフニウムは 100ppm 以下にする規格になっていることからも、ハフニウムがジルコニウムの不純物としてひどく嫌われている証左でしょう。

この二つの元素を分離するのは通常の精錬では極めて難しく、ヘキソン(メチルイソブチルケトン)法と呼ばれる手法が開発されました。これは、有機溶媒でチ オシアン酸ジルコニウムおよびハフニウムを抽出してより分け、これでようやく純粋なジルコニウムができるのです。ヘキソン抽出側には若干ジルコニウム塩を 含んだハフニウム塩が来ます。

ハフニウムは熱中性子を吸収して止めてしまうので、兄貴とは異なり、核分裂制御棒(正確には制御板)に用います。

機械的強度、融点が高く、化学的にも安定で耐食性に優れることも、制御棒に用いることの出来る理由のひとつです。

ヘキソン法で分離したハフニウム塩を分解して塩化物とし、これを還元し、得られた樹枝状金属を冶金し、圧延してこの目的に用いるようです。

さらに純度を高める場合では、石英管中にヨウ素と金属ハフニウムを封じ込んで加熱し、熱フィラメント上で少量発生したヨウ化ハフニウムを分解して金属結晶とするヨウ素法によって精製されます。

ジルコニウムは高温で水と反応して酸化ジルコニウムと水素ガスになり、この水素ガスが建屋に溜まってとんでもない悪さをするというのを、今回の福島の原子力災害で学ぶことになってしまいましたが、ハフニウムも高温では水と反応するんですね。

他の用途としては、炭化物がその融点の高さから超耐熱セラミックとして用いられたり、あるいはプラズマ切断トーチの銅カソードの芯として使われたりもします。

酸化物が高い比誘電率を示し、これを利用してコンピュータの CPU のゲートに使われるようになりました。Intel Core 2 シリーズはハフニウム high-k 材料を使っています。