オウウヨウラクとエゾチヂミボラでも貝紫を染めてみた

知人が厚岸にいるので、お願いして厚岸のオウウヨウラクガイを採取してもらった。

これもまたアッキガイ科の貝で、貝紫が取れる貝のひとつ。

見た目はこんな感じ。イボニシよりは大きく、アカニシよりはかなり小さい殻長。

厚岸湾では、アサリを捕食する大の嫌われ者。

「サンカクツブ」という名で食べることもあるが、小さい貝なので、あまり好んで食べるメリットがない。

しかも、アッキガイ科の貝なので、貝紫の前駆体であるチリンドキシル由来の辛みがある。

好きなひとはそれがいい、というのだけれども。

殻をハンマーで割るとこのようになる。アカニシほどカチカチの貝殻じゃなく、つぶれてしまうので手加減が必要。

肉の黒い線の下に、黒い線に平行に、黄色っぽいクリーム色の鰓下腺が見える。

これを楊枝で破ると、黄色い粘っこい液が出てくる。これがチリンドキシルを含む貝紫前駆体。

これを絹に摺り染めすると、黄色い液が付く。

これはゆっくりと光によって緑色のチリバージンに変色する。

日光に当てるとみるみる色が変わり、貝紫であるチリアンパープルに変化する。

アカニシ同様、純度の高いチリアンパープル(6,6'-ジブロモインジゴ)で、モノブロモインジゴやインジゴ分に由来する青っぽい着色がない。

絹には非常によく染め着くが、木綿はちょっと色がくすむ。しかし、染まることは染まる。

↓これらで15匹分ぐらい。上が絹。5cm角を染められる。

下は木綿のタオル。これも15匹使った。

楊枝で字を書き、日光に晒す前と晒した後。

扱ってる感じでは、オウウヨウラクはイボニシの3-5倍ぐらいは貝紫が多いが、アカニシに比べるとはるかに少ない。

アカニシはこの3倍ぐらいは書ける。

アカニシは最強の貝紫貝!という結論であった。

(おまけ)一緒にいる、エゾチヂミボラ(ダルマツブ)もまたアッキガイ科で、貝紫を染めることができる。

しかし、厚岸ではエゾチヂミボラは非常に少なくなり、大多数がオウウヨウラクらしい。