ベリリウム
ベリリウムは周期表第2族の最低周期元素で、軽い金属です。
単体は、鍛造しない状態では、脆い灰色の金属状態です。
以下は金属ベリリウム板の写真です。鋼灰色で、磨くとキレイな光沢が出ます。なかなかくすみません。
極めて軽い金属で、酸化皮膜を被ると加水分解や酸化にも強くなり、機械的強度も高いです。
その特性を見込まれて、単体ではかつてレコードプレーヤーのカンチレバー、スピーカーの振動板などにも用いられたことがあります。
現在、主な用途は銅合金のベリリウム銅です。銅にちょこっとだけ混ぜると、耐摩耗性および弾性に優れた非磁性合金を作ることができます。
塩はなめると甘い!らしいんです。なめたことないんですが。
やや高い元素毒性があり、一部の化合物(ベリル)および合金を除き、ベリリウムおよびその化合物を製品に組み込むことが難しいです。肺がやられるみたいですね。
国内では PRTR 法で管理が指定されています。
輸出の際はREACH規制に思いっきり引っかかるので、EU圏に出す製品にベリリウムを使うことができなくなってしまいました。RoHS では灰色です。
主原料はアルミニウムとのケイ酸塩、ベリル(緑柱石)です。
鉄をわずかに含んで水色のものをアクアマリン、クロムを含んで緑色のものをエメラルドといいます。
ベリルだけは、REACHの指定から見逃してもらっています。
着色イオンを含まないものは完全に無色です。
緑柱石(beryl) Be3Al2Si6O18, hex., P6mmc
鹿児島県垂水市/鹿屋市高隈山
東京大学総合研究博物館蔵(登録番号 22641)
標本長: 2.1 cm
Nikon Micro Nikkor 60mmF2.8G ED/Nikon D3
こっちは岐阜のアクアマリンです。
緑柱石(beryl) Be3Al2Si6O18, hex., P6mmc
岐阜県中津川市苗木
東京大学総合研究博物館蔵(登録番号 20497)
標本長: 4.5 cm
Nikon Micro Nikkor 60mmF2.8G ED/Nikon D3
こっちは合成のエメラルドです。
1920年代末、一人の若い男の子が、ガレージの片隅で電気炉を駆使して結晶成長をはじめました。彼の名前はキャロル・チャザム。
チャザムは12歳の時にはすでに自宅に実験室をかまえていたそうです。
彼は、現在「フラックス法」と呼ばれる金属複酸化物を融液とした鉱物の人工結晶こそが、天然の鉱物の結晶成長に最も近い条件であると信じました。様々な試行錯誤の末に、ベリリウムとアルミニウムのケイ酸塩であるベリル(緑柱石)の実用的なフラックス組成を神業のようなセンスで見つけ出し、クロムイオンにより着色した合成エメラルドに、世界ではじめてこぎつけたのです。
その後、安定した電源供給が出来るCITに入学し、そこで数々の合成宝石鉱物の結晶成長に関する卓越した研究を行い、当時極端に高いレベルでの結晶成長技術を開発していきます。ルビー、アレキサンドライト、エメラルド等等。
どう考えても天才ですね。
チャザムのエメラルドはこういうものです。結晶成長には1年近くかかっていると言われています。
彼はその後、合成したエメラルドを研磨して市場に流し、市場を大混乱に陥れます。
インクルージョンから、フラックス法による人工結晶だというのに一部の人は気付きました。しかし、誰もそれを追試できる人はいなかったのです。
チャザムは製法を不出にしたため、チャザムのフォロワーが彼の技術に追いつくまでに、ゆうに20年はかかりました。
そのぐらい彼は飛びぬけていたのです。
それが、今となっては誰でも知っている「チャザムのエメラルド」の誕生譚です。
酸化ベリリウム(ベリリア)の無色透明な人工結晶です。針金は、種結晶を吊っていた白金糸。
六方晶で、きれいな六回対称があります。
絶縁体で、非常に良く熱を伝える性質があります。
昔、シリコンバレーで半導体基板用に研究開発された結晶だということです。
酸化ベリリウムは有害性があるので、産業利用は難しいかもしれません。
イオンマルチプライヤーです。入ってくる電子やイオンをカウントして増倍検出するもので、ベリリウム銅合金が使われています。
X線単結晶回折装置です。左の金属管に線源のチューブが入っています。手前右に出してありますが、下部の丸い円板がベリリウム窓です。