日本の新鉱物(リン酸塩、ヒ酸塩、バナジン酸塩)

人形石(人形峠鉱山)

人形峠鉱山中津川鉱床の人形石です。

黒い煤状の鉱物です。黄色い粒は分解して生じた燐灰ウラン石だと思います。

亜砒藍鉄鉱(木浦鉱山ダツガタオ)

福地版日本鉱物誌(大正5年)に、この鉱物について、簡単に記載があります。旧字体は直しました。

豊後国木浦鉱山ダツガタヲに於いて硫砒鉄鉱を有する鉱石の表面に藍鉄鉱と共に微細結晶をなして附著せる鉱物あり。その鉱物は普通暗緑色にして時に橄欖緑色または帯緑褐色をなし多くは透明なり。光沢は玻璃状にしてすこぶる強し。結晶は八面体類似の晶相にしてその大さ径三ミリを超えず。へき開なし。破面は貝殻状を呈す。

この鉱物は、日本鉱物誌ではどうも毒鉄鉱っぽいけどそうではなく、どうやら新鉱物らしいという記述なんですが、これはスコロド石でした。

問題は、「藍鉄鉱」と書かれたそれで、藍鉄鉱のリンを砒素で置換した形に相当する含水砒酸鉄 (III) の成分を持つ日本の新鉱物だということが判明しました。見た目そっくりさんです。研究記載は伊藤先生、湊先生、櫻井先生。

単斜晶系の、斜めにそぎ落とされた端面がよく見えます。

ちなみに、このグループは藍鉄鉱グループという名前が付けられています。藍鉄鉱のみならず、ニッケル華、コバルト華などもこの仲間ですね。

石英および硫砒鉄鉱(もしくは砒鉄鉱)の酸化体に、他の砒酸塩二次鉱物を伴い産します。

東京石(大和鉱山)

最近、東京都の白丸鉱山で見出された新鉱物、東京石(tokyoite) です。

tokyoite という単語は、「東京生まれ、東京育ちの人」という意味があるらしいんですが、以下の写真は大和鉱山(鹿児島県)のもの。

東京生まれ、奄美大島育ちです。

グループとしては Brackebuschite Group に属し、バリウムとマンガンの塩基性バナジン酸塩になります。

熱変成を受けたマンガン鉱床に、暗赤褐色の脈状で産出します。

白いのはバライト。黒いのはブラウン鉱です。

良質の標本を頂きました!ありがとうございます。

独特のガラス-樹脂状の、ヌメっとした光沢の赤黒い部分です。

東京石(tokyoite), Ba2(Mn,Fe)(VO4)2(OH), mon., P21/m

鹿児島県大島郡大和村 大和鉱山

撮影幅 : 5.0 mm

LOMO Mikroplanar 40mm F4.5 (F = 5.6)/Nikon Multiphot/Nikon D3

東京石(tokyoite), Ba2(Mn,Fe)(VO4)2(OH), mon., P21/m

鹿児島県大島郡大和村 大和鉱山

撮影幅 : 18 mm

Nikon Macro Nikkor 65mm F4.5 (ap. = 4)/Nikon PB-6/Nikon D3

脈に対して直交した切断研磨品はこのようなものです。

バナジン酸塩が鉱石から離溶して、脈状に走っているのがよく見えます。

同じく大和鉱山のナビア石 (nabiasite) ですが、微妙に色合いが異なり、もうちょっとオレンジ色っぽい赤褐色です。

ナビア石(nabiasite), BaMn9((V,As)O4)6(OH)2, cub., Pa-3

鹿児島県大島郡大和村 大和鉱山

撮影幅 : 16 mm

Nikon Macro Nikkor 65mm F4.5 (ap. = 4)/Nikon PB-6/Nikon D3