チタンホワイト

顔料の物性をあらわす指標に「隠蔽率」というパラメータがある。これは、下地の色を塗りつぶすのに、どれだけの量の顔料が必要かという指標値で、小さいほど色濃い顔料ということになる。わかりやすい例は、修正液だろうか。修正液は、もともとはタイプライターの打ち損じた文字を消すために、アメリカのベティ・スミスがマニキュアを使った修正を行ったのが始まりだとされている。現在の修正液は、白色顔料を高濃度に分散させた白色インキであり、普通は有機高分子樹脂のエマルジョンになっている。修正液に対する性能要件としては、速乾性、下の文字をにじませないこと、上に再度文字が乗せやすいなど多岐に及ぶが、最も重要なのはいかに少量の顔料で下の字を覆い隠すことができるかである。そのため、最高の隠蔽率を有する白色顔料が用いられる。白色顔料の隠蔽率 HPは一般的には顔料粒子屈折率の関数で、下式が F. B. Stieg により提唱されている。

HP = 4430 [(n1-n2)^2/(n1+n2)]3√(C/0.70)

ここで n1 は顔料粒子の屈折率、n2 は周囲メディアの屈折率である。Cは顔料容積濃度である。

細かいことは省くが、白色顔料は粒子の屈折率が高いほど、粒子系が小さいほど隠蔽率が高くなる。そのような高屈折率の白色顔料としては、酸化チタン TiO2 がある。