アリールグリニャール試薬とクロロシランとの反応による Si-C 結合形成反応

多官能性ポリハロシランのハロゲンの一部もしくはすべてをアリール化したい場合は、逆滴下により(全部の場合は順滴下でよい)アリールグリニャール試薬を所要量ハロシランに滴下する。これは、アルキルグリニャール試薬に比べて導入の選択性が高く、蒸留による精製もそれほど難しくない(高沸点ではある)。四塩化ケイ素へも比較的素直に導入できる。ただし、アリール基は立体的に大きく、通常はケイ素上にグリニャール試薬で4つ徹底的に導入するのは難しく、最後のひとつはアリールリチウムを必要とすることが多い。ただし、フェニル基だけは、グリニャール試薬でテトラフェニルシランが加熱条件下で生成する。

(実験例1)クロロ(4-メトキシフェニル)ジメチルシランの合成

三方コック、ジムロート冷却管、300 ml 等圧滴下ロートおよび大フットボール型撹拌子を備えた 1000 ml 三口フラスコにグリニャール試薬合成用削り状マグネシウム 50.3 g(2.07 mol) を収め、アルゴンで置換した。これに脱水 THF 150 mL を収め、ジブロモエタン 5 ml で活性化させた後、4-ブロモアニソール 303 g (1.62 mol)を滴下ロートから2時間かけて、還流が持続する速度で滴下した。別に、三方コック、ジムロート冷却管、300 ml 等圧滴下ロートおよび大フットボール型撹拌子を備えた2000 ml 四口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコ内にジクロロジメチルシラン 205 g (1.59 mol)および脱水テトラヒドロフラン 700 ml を収め、先に合成した4-メトキシフェニルグリニャール試薬をゆっくりと滴下した。反応熱による穏やかな発熱が収まったら、5時間室温で撹拌し、さらに1時間加熱還流した。これを減圧下で粗く濃縮し、ここに脱水ヘキサン 600 ml を加え、析出した塩をろ別して除いた。ろ液を濃縮後減圧蒸留することにより、目的物であるクロロ(4-メトキシフェニル)ジメチルシランを無色液体として247g(収率76%)得た。