国産の石黄(雌黄、オーピメント)から黄色顔料をつくる

国産のオーピメント(石黄、雌黄, As2S3)の標本を使って、古の顔料「石黄の黄色」を作ってみます。

国内で顔料にできる石黄の産地はほとんどありません。江戸期の本草綱目啓蒙には「和産ナシ(日本には産しない)」とされ、全量を中国からの輸入に頼っていました。

中国は、石黄はいくらでも出てくるのです。特に湖南省。

今回は立派な標本を用意しました。ちょっとオレンジ色っぽく見えるのは、結晶粒が非常に粗いからです。

大きなものでは単結晶サイズが 2 cm 近くあります。表面にかぶってるのは、スコロド石のようです。たまに重晶石が挟まってます。

石黄は、一方向に完全な劈開があり、ペリペリ剥げます。屈折率も高く、金のように見えます。

しかし、乳鉢で砕けないこと砕けないこと。個々の結晶粒が大きすぎるほど(いい標本であるほど)、粉末化に難儀します。

雲母を粉にするようなものです。

これをすりつぶすと、劈開面の反射に見られるようなレモン黄色の粉末になると思ったんですが、予想に反し、野山に咲くヤマブキの花のような山吹色(みかんのような色)になります。これが調製したての「石黄色」です。普通の顔料塊は粉末になると淡色化する(光散乱の割合が増えるから)のですが、こんなに赤みを帯びるのは、不思議ですね。

で、中国(Shimen Mine, Shimen Co., Changde, Hunan, China)の、いかにも質の良い石黄の結晶集合体や、ロシア産の単結晶を使って同様な顔料化に挑戦したのですが、例えば中国のものは原石は明るいレモン黄色の繊維状の結晶集合体なのに

やはり粉末にすると同じ山吹色になります。

どうも、この赤みがかった独特の山吹色は、石黄(硫化ヒ素 As2S3)化合物独特の色のようです。

下の写真、上の四角いケースは国産の石黄、乳鉢のは中国の物です。ほとんど同じ色。

綺麗な色なんですけどね。これでヒ素を含まなければいろいろ使い道があるのでしょうけど。

(文献)

1. Keune, K., Mass, J., Mehta, A., Church, J., & Meirer, F. (2016). Analytical imaging studies of the migration of

degraded orpiment, realgar, and emerald green pigments in historic paintings and related conservation issues.

Heritage Science, 4, [4]. DOI: 10.1186/s40494-016-0078-1

https://pure.uva.nl/ws/files/9703975/Analytical_imaging_studies_of_the_migration_of_degraded_orpiment_realgar_and_emerald_green_pigments_in_historic_paintings_and_related_conservation_issues.pdf