アドホック傭兵・北面の神将殺しゲオルジオ「俺達の出番だ。なに、俺とアンタが組んだんだ、打ち破れぬ敵などいないさ」
アドホック傭兵・コンドッティエーレ・ヴァレスタイン「ここが分水嶺か……舐めるなよ。不利なんぞは過去に幾らでも覆して来たんだ俺は」
依頼主・フェニキシア女王ベルエーシュ(フェニキシア王国)
概要・全軍の勝敗を分ける精鋭隊との戦い
シナリオタイプ・戦闘
シナリオ難易度・易しい
主な敵NPC・コンドッティエーレ「ヴァレスタイン」
関りが深い敵NPC・ボスキ公爵「ルカ」
主な味方NPC・北面の神将殺し「ゲオルジオ」
関りが深い味方NPC・フェニキシア女王「ベルエーシュ」、グブラ伯「ジザベル」
ステータス上限・無し
シナリオ参加条件・無し
光陽歴1205年の初夏の某日の事だ。
アヴリオン共和国に本拠を置く祈装傭兵組織アドホックにて、フェニキシア王国からの参戦要請の依頼が出ているのを知った貴方は、この依頼を引き受ける事にした。
アヴリオンから次元回廊を渡り、王国北西部に位置する山河の城塞都市ベールハッダァードへと向かう。
ベール市にて傭兵として王国軍に加わった貴方は、ベール市の代官も務めているグブラ伯ジザベルが指揮する精鋭隊へと配属される事となった。
ベール市の兵舎と都市付近の山地で彼女等と共に数日、訓練を行っていると、お忍びでやってきた女王ベルエーシュに貴方達は呼び出された。
女王曰く、これよりフェニキシア王国の存亡を賭す最重要任務を貴方達に与えるという。
「まぁ要するにね、目立たないようにこっそりとこの街から抜け出して、ガラエキア山脈のこの地点に潜伏して欲しいのよね」
ここ洞穴があるから、そこに隠れてて、と女王ベルエーシュはいう。
「なんでかっていうと、もうじき山脈内で戦いになるからよ、ヴェルギナ・ノヴァ帝国と。戦いが始まったら、貴方達には帝国軍の背中を襲って欲しいのよね。貴方達が上手くやってくれさえすればこっちのモンよ。上手くいったら特別報酬だすわ」
女王の説明はイマイチ全貌を掴みにくかったが(あと本当に女王? と疑うくらい口調がざっくばらんである)、何か彼女には視えているものがあるのかもしれない。あるいは、十五歳の少女のただの妄想なのかもしれなかったが。
そういう訳でフェニキシアの女王から直々に極秘任務を受けた貴方達は、グブラ伯ジザベルの指揮の下、こっそりとバラバラにベール市から出ると、人目の無い山地で落ち合い、身を隠しながら密かにガラエキア山脈内を進んだ。
「フェニキシアの側につくなんて、アンタも物好きだな」
指定された洞穴に辿り着き、身を隠している最中、緑色の外套に身を包んだ青年が声をかけてきた。茶色の髪の、腰に長剣を佩いたアンスロポス(人間)だ。
彼の名はアドホック傭兵のゲオルジオ、かつて大陸で活躍した北面傭兵団の元エースの一人で『神将殺し』と渾名される凄腕の祈士であるといわれている。
――そういうあんただってフェニキシアの側じゃないか。
という意味の事を貴方が言うと、
「女王陛下にはちょいとうちの商団に投資して貰っててね。その義理の分くらいは働かないといかんなと思ってさ」
なんでも今の彼は本業は交易商で傭兵は副業であるらしい。
「アンタの方はどうしてこっちについたんだい? アンタ、強いだろ? 依頼なんて選び放題だと思うが」
ゲオとそんな会話をかわしていると隊の指揮官であるグブラ伯からの念話が響いた。
曰く、帝国軍がやってきたので息を潜めろとの事。
<<凄いな、本当にこの山脈まで迎撃に出て来たよ。どっちかっていうと空ぶりに終わる確率のが高いと踏んでたんだが>>
ゲオが驚きの念話を発する中、徐々にヴェルギナ・ノヴァ軍の足音が耳に聞こえて来たのだった。
●
足音が大きくなり、再び小さく、遠ざかってゆく。
洞穴内にて待機する事しばし、グブラ伯から行動開始の命令が発せられた。
貴方達は密やかに動き、洞穴内から出て、フェニキシア方面へと向かう。
ガラエキア山脈は荒涼たる岩山である。
所々に細々と草木が生えているが、大部分は赤茶けた土と岩が剥き出しになっている。
赤土の斜面を登りきると、眼下には陣形を組んで整列している帝国軍の背中が見えた。
彼方からはフェニキシアの本隊もやってきているようである。
<<総員構え……撃てぇっ!!>>
グブラ伯ジザベルの鋭い念話が隊領域に響くと、貴方達は祈刃を構え、帝国兵を目がけ、轟音と共に破神の閃光を撃ち放った。
尾を引いて流星の如くに流れた光波の群れは、無防備な帝国兵達の背中や後頭部に吸い込まれるように命中し次々に爆裂を巻き起こしてゆく。
大量の帝国兵が一瞬で吹き飛んで地に転がり、たちまち絶叫や怒声が下方より響いてきた。
帝国軍は大混乱に陥っているようだった。
<<撃て! 撃て! 撃てぇええええええ!!>>
グブラ伯の甲高いが勇壮な女声が響く。
フェニキシア兵達は手を休めずに閃光を乱射し、さらに大量の帝国兵を撃ち倒し、混乱を深めさせてゆく。
帝国兵の中には貴方達の方へと向き直って破神盾を展開する者もいたが、そういった者達は接近してきたベルエーシュが率いる本隊から放たれた破神剣に射抜かれて倒れていった。
完璧に奇襲からの挟撃が決まっていた。
鍛えられた帝国兵が弱兵と評判のフェニキシア兵の射撃で次々に倒れてゆく。
だが、一方的な蹂躙は長くは続かなかった。
比較的、落ち着きを保っていた一隊が貴方達の方へと向き直り猛然と斜面を駆け登り突撃してきたのである。
グブラ伯は兵の一部に射撃を停止させ、前に出して破神盾を構えさせた。
<<あぁ……ありゃ、アドホックの傭兵隊だな。コンドッティエーレ・ヴァレスタインだ。道理で動きが良いと思った。色んな意味でやりにくい相手だが、これも戦場の習いか、仕方ない>>
破神盾の陰で長剣を構えながらゲオが言った。
<<――さん、俺達の出番だ。あいつらに突っ込まれると不味い、止めるぞ。なに、俺とアンタが組んだんだ、打ち破れぬ敵などいないさ>>
貴方はゲオと共に破神盾の陰から飛び出すと、迫る傭兵隊の先頭部へと迫り、祈刃を振るった。
一秒間にそれぞれ三人、ゲオと共に三秒間で十八人も蹴散らせば、傭兵達は恐慌して逃走に入った。
後方から味方のフェニキシア兵も共通念話領域で鬨の声をあげ駆けくだってきている。
このまま敵の傭兵隊は壊走するかと思われたが、不意に流れが止まった。
大剣を手にした金髪の大男が熟練兵らしき傭兵達を率いて前に出て来ると、逃げていた傭兵達も反転、踏みとどまって再び戦列に加わり始める。
<<こいつがコンドッティエーレ・ヴァレスタインか! ――! ゲオ! コンドッティエーレを討て!! そうすればこの戦は我々の勝利だ!!>>
貴方とゲオの名を呼ぶグブラ伯ジザベルの鋭い女声を聞きつつ、貴方はゲオと共に敵の傭兵隊長へと向かって駆けた。
■状況
敵の傭兵隊長コンドッティエーレ・ヴァレスタイン及びその周囲を固めている取り巻きの熟練傭兵達を討つ、あるいは撃退する事が目標となります。
他の敵傭兵の注意はグブラ伯ジザベルが指揮しているフェニキシア兵が惹きつけるので、そちらの相手はPC達はしなくても大丈夫です。
あくまで解説に書かれている分の敵戦力を打ち破れれば勝利となります。
天候は晴れ、時刻は昼、地形は赤茶けた土の斜面です。
所々に大岩が転がっています。
コンドッティエーレ達は南側、低地となる方向より駆け登って来ています。
彼我の距離は20m程です。
――PL情報――
PC達がコンドッティエーレ達を破った場合、敵の傭兵隊は敗走し、ボスキ公軍も撃破され、フェニキシア側の勝利となります。
PC達が敗れた場合、敵の傭兵隊が奮起しグブラ伯隊は蹴散らされ、ボスキ公が軍を立て直してフェニキシア側は押し返され敗走します。
――
■敵戦力
●コンドッティエーレ・ヴァレスタイン
金髪の大柄な傭兵隊長。霊鋼の胸甲と手甲具足に身を包み、巨大な両手剣を使う。予備に短剣を持つ。
指揮能力の高さに定評があるが、一兵としてもかなりの猛者であるとの評判。
最大行動力2
攻撃レート+25
防御レート+10
使用ダイス1D100
●アドホック傭兵(熟練)×4
ベテランのアドホック傭兵の男女。
硬革鎧、あるいはチェインメイルに身を包み、両手剣で武装している。
一様に練度は高い。
最大行動力1
攻撃レート+15
防御レート+0
使用ダイス1D50
■味方戦力
●北面の神将殺しゲオルジオ
長剣と革鎧と緑色のマント、手甲と脛当てで武装。予備に短剣を持つ。
自殺するような無謀な事や味方に害を及ぼすようなもので無い限り、PCが作戦を提示すればそれに協力します。
――PL情報――
攻撃力140
防御力110
攻撃レート-5
防御レート-10
最大生命力500
最大精神力130
最大機動力30(PCと同様に行動後も再移動可能能力持ち)
最大行動力3
使用ダイス1D100
超集中以外の全ての猟技を使用、スキルの【閃光弾】【紫電】【猛撃】を使用する
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伏兵からの奇襲挟撃現場へようこそ、望月誠司です。
最後までお読みくださり誠に有難うございます。
フェニキシア王国サイドのシナリオですが、全体的に女王ベルエーシュの策があたって有利な状況にあり、敵傭兵のコンドッティエーレ達はそこそこ強いのですが、味方NPCのゲオルジオがPCと同じくらいに強い(つまり滅茶苦茶強い)ですので、よっぽど変な事しなければまず勝てる難易度となっております。
バシッと格好良く撃破していただけたらなと思います。
ご興味惹かれましたらご発注いただけましたら幸いです。