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【完結】ヴェルギナ・ノヴァ帝国によるゼフリール島の統一、そして……

シナリオ難易度:無し

判定難易度:普通

「君たち……僕を何だと思っているんだ?」


 雪色の髪の弱冠十八歳の副伯は、困ったような表情を浮かべて、フェニキシア女王とガルシャ聖堂騎士団総長を見返した。


「剣を抜き兵を率いれば連戦連勝、どんな状況でも勝ち抜く、帝国最強の不敗の騎士」

「さらには皇帝陛下からのご信任も篤く、沈着な頭脳と勘所を見抜く的確な目、そして破滅をも恐れぬ勇猛果敢さを兼ね備えている。複雑困難な状況下に陛下がご判断を迷われても、正しい道へと導く王佐の才覚の持ち主でもある」


 ベルエーシュとシロッツィは口々に平然とそう答えた。

 ハック=F・ドライメンがこの頃日々、感じるようになっていた事は、周囲が皆、ハックの実力を過大評価しているのではないかという事だった。


 周囲の人々の『帝国最強ハック=F・ドライメン像』が膨れ上がり、独り歩きしていっている感がある。


「……やめてくれ。過分が過ぎる。まぁ確かに武力やら影響力やらは抜きん出ている自覚はある、あぁ流石にあるとも」


 客観的に見て、実際に事実としてハックが突出している部分はあった。それだけの実績も残している。

 しかし――


「だけど所詮は傭兵崩れだぞ? メティス殿のような賢者じゃあない」


 できる事とできない事がある。

 得手不得手があるし、得意分野で突出しているといってもそれにも限度がある。

 しかしどうもここ最近の周囲からの己への扱いは、実像よりも遥かに過大なものになっているような気がする。


 すなわちハック=F・ドライメンは万能無敵であり、どんな事でもなんとかしてしまうのではないかと、そんな幻想にも似た信仰が蔓延しはじめている。


 それを感じたハックは虚像を打ち壊すべくクギを刺した。


「――だが、貴公が判断を誤っている場面を見た事はないし聞いた事もないが」


 シロッツィがふむぅと唸り顎鬚を撫でつつ反論する。


「偶々だよ。偶々まだ間違えていないだけだ」

「ここぞという場面での偶然が二度も三度も続くなら、それはもう実力だと思うけどねぇ」


 ベルエーシュからの感想に対しては、ハックは肩を竦めて見せた。

 そんな態度の白髪青年にブロンドの女王は青瞳を半分閉じて息を吐き、


「まぁアンタがそう言うならそういう事にしておきましょう」

「そうして欲しい。それと、二人が危惧している事はよくわかったよ」


 頷き、一度杯に口をつけてから言った。


「……まぁ、陛下に多少は話を通してみよう」


 するとシロッツィは喜色を満面に浮かべ、ベルエーシュはどこかほっとしたように表情をやわらげて肩から力を抜いた。


「おぉ、おぉ! さすがは帝国の盾殿だ!!」


 大柄な聖堂騎士団総長が嗄れた大声で言いながらハックの背をバシバシと叩いてくる。

 緑瞳の青年は笑顔を保ちつつシロッツィを睨み上げて、


「けどあまり期待はしないでくれよ? 必ずしも僕の言葉に陛下が耳を傾けてくれるとは限らない」

「そう? アンタの言う事なら聞くわよ、たぶんあの女」


 もう万事解決した、とでも言わんばかりに脱力してベルエーシュ。

 幻想信仰は既に根を張っていて、少しのクギくらいでは根絶は難しいらしい。


「うむ、これで安心だな。まぁ実際どんな方針になるかまではわからんが、最悪の選択肢にだけはなるまい」


 シロッツィが腕組みをしながらうんうんと頷いている。

 ハックは嘆息しつつ、


「僕は期待するなと言ったんだよ? まぁともあれ、こんな話はもう終わりだ。今は新年の宴、ゼフリール島の統一も成ってめでたい席だ。辛気臭い話はやめにして、さぁ食った食った!」


 そう言って並べられている――宮殿に相応しい豪勢な――料理へと手を伸ばし、その旨味に舌鼓をうった。

 シロッツィとベルエーシュもまたそんなハックの様子に、一度二人で顔を見合わせてから頷くと、同様に戦略の話は打ち切り、料理と酒を口に運びつつ、以降は他愛もない雑談に興じたのだった。


●

 終わってみれば、なんともあっけない幕切れだった――


 ゼフリール島統一までのこれまでの歩みを振り返れば、ハックの胸中にはその感慨が在った。


『大公国も聖堂騎士団も、結局は戦機を避けた』


 そのようにハックとしては思う。

 皆、リスクとリターンを計算していて、破滅的に無謀な賭けにはでない。文字通り自分や家族や周囲の人々の命と生活がかかっているから、誰も彼もが真剣で慎重だ。

 敢えて大胆な振る舞いに出る者もいるが、根はやはり熟慮している。適当には命を使わない。

 無論、世には適当に命を使う人間も存在はしている。だがソールヴォルフもシロッツィもそういうタイプの人間ではなかった。

 彼等は基本的に勝ち目があり、十分なメリットがある時、あるいは戦わない方がリスクが大きいと判断しない限り、戦おうとはしない。

 故に、一度大勢が決してしまえば、大きな戦いは起こらない。


――あっけない。


 戦士としてはどこか物足りなさを感じる部分はあったが、しかし、


(戦で苦しむ万民にとってはその方がいいのだろう)


 そう思った。


 ある意味常識人であったソールヴォルフやシロッツィらと比較して、


『時期を見てニカイアへと宣戦布告し兵を送りたい』


 紫色の瞳で真っ直ぐにハックを見据えて、そのように言ってきた主は、その本性は、一体どの種の人間であるのだろうか?


●


――無謀に過ぎる。


 新年の宴の翌日、宮殿の奥へと呼び出されたハックは、皇帝から今後の戦略に関しての相談を受けた時、そう思った。


(あまりにも破滅的だ)


 皇帝アテーナニカは、シロッツィやベルエーシュらが危惧していたその通りの最悪の選択肢を選ぶつもりであると宣言してきた。


 しかも、それも適当な思いつきからではなく、その選択肢を選ぶに足る彼女なりの理由が十分にあるようだった。


 皇帝アテーナニカは紛れもなく、正気で、本気で、彼女なりに必死に熟慮していて、真剣だった。


 だからこそ――


 ゼフリール島を巨大な破滅へと誘う選択肢を熱心に語る紫瞳の女皇帝を前にして、ハックは緑瞳を閉じ、息を吸った。


 これは、希望者だの食い扶持恃みだの、そんな次元では生温い計画だ。

 捨身だ。

 命を懸けた無謀な渡海だ。

 戦争ですらなく、ヴェルギナの皇女の一種の信仰であるのだろうと理解した。


「――――生温いです」


 ハックの言葉が宮殿の奥の部屋に響いた。

 皇帝の動きが停止した。

 固まっている若い娘に対しハックは淡々と言った。


「貴女はこう言うべきなのです――――我が自死に伴する者のみ集え、と」


 女皇帝はその大粒の紫瞳を一度、二度と瞬かせると、


「自、死…………?」


 呆然としたように呟いた。

 ハックは頷いた。


「はい。自殺です。その覚悟がなければ、出兵などするべきではありません」


 皇家の責任。

 感じるところはある。

 だけどそれは、ゼフリールの民にとっての責任ではない。

 この島を護るだけなら、ベルエーシュとシロッツィの言う通りの手段を取ればいい。


 だがアテーナニカはそうしないのだろう。


 ハックの訴えにも耳を貸さないかもしれない。


 だからハックから言える言葉は、


――生き抜け。


 その時、脳内にフラッシュバックしたのは、戦災孤児だったハックが、身を寄せていた傭兵団、その団長が今際の際にハックへと告げた言葉だった。


 己の行動原理を強く胸に蘇らせながら、ハックは今まさに滅びの道を進まんとする皇帝に対し言った。


「貴方の口から『我が自死に伴する者のみ集え』と、その声が発せられた暁には、その一人目として僕は貴女の物語に付き添いましょう」


 ゼフリールに築いたこの国を、破滅させながら自死するというなら、その供をしよう。


 それが、己にとっての“生き抜く”だと、この時、ハック=F・ドライメンは覚悟を決めた。


 ベルエーシュやシロッツィらからの期待を裏切る言葉かもしれなかったが『期待はするな』とも言っておいたから、まぁ嘘にはならないだろう、とハックは頭の片隅で思った。

 後であの二人には謝罪しておくか、とも思ったが。


 静寂が耳に痛かった。


 気が遠くなる程に長い――あるいは一瞬だったかもしれない――沈黙の後、やがてアテーナニカは、錆びついた鉄人形のようにぎこちなく、薄桃色の唇を動かした。


「……それほど、までに、勝て……ないのか?」


 普段の可憐な声とは異なる、絞りだされたような、疲れ果てた老婆のような嗄れ声だった。

 皇帝の盾たる男は断言する。


「勝てません」

「貴方が指揮を取ってくれてもか?!」


 皇帝の思わずといった調子のその叫びにハックは胸中で天を仰いだ。

 どうやら、


『帝国最強ハック=F・ドライメン像』


 に対する幻想信仰は、周囲の人々だけでなく、なんと主君たるアテーナニカの中にまでいつの間にか根付いていたらしい。


 いやあるいは、それは周囲の人々よりも、アテーナニカの中にこそ、強く強く育ってしまっていたのかもしれなかった。

 なんせヴェルギナ・ノヴァ帝国の興亡を大きく分ける局面で、これまですべてのどんな困難でもなんとかしてきてくれたのがハックである。


――ハックがいれば、なんとかなるのでは?


 という幻想信仰があるなら、アテーナニカこそが第一の熱心な信者だった。


 しかし、


「どうあがいても勝てません」


 帝国最強ハック=F・ドライメンは皇帝アテーナニカに対し言い切った。

 現状のまま希望者のみで軍団を編成し船団を組んで、嵐の大海を越えて大陸へと攻め込んだところで、ニカイアとルビトメゴルを同時に相手取ったら、九割九分九厘、負けるだろう。

 奇跡でも起こらない限り絶対に勝てない。

 それほどの地形の不利、距離の不利、兵力差だった。


 奇跡というのは、起こらないからこその奇跡である。


「だから自殺です」


 ハックの声が冷徹な事実を部屋に響き渡らせる。


 静寂が耳に痛かった。


「……そう、か……自殺か……」


 やがてアテーナニカが呟いた。


「……貴方が……他ならぬ、貴方までもが、そう言うなら、そうなのだろうな……」


 紫髪の若い娘は絞り出すように声を発すると、脱力したように肩を落として、ふらふらと覚束ない足取りで室内の椅子へと着席した。

 彼女は俯いていた。

 再び静寂が訪れた。

 鉛のように重く、肺を潰すかのように纏わりついてくる。

 無音の空間は永遠に続くかに思われたが、やがて地の底から響いて来るかのような声音がそれを破った。


「……見捨てられない。私は、見捨てられない」


 皇帝が呻くように頭を抱えて洩らしていた。


「あの子は、私に言ったんだ。助けてくれって」

「はい」

「トラシアの皆は、言ったんだ、私に助けてくれって」

「はい」

「いつか私が皆を助けるからと、そう私に託して、多くの未来ある人達が、私を僭主達の手から逃がす為に、死んでいった! みんなみんな皇女様この国をどうか頼むって言って! 私は死者達との約束を果たさなければならない。私は置いて来た皆を助けに大陸に戻らねばならないんだ」


 顔を上げた女の紫瞳には、鬼火のような光が宿っていた。


「やっとここまで来た。やっとここまで来たんだ。今ならトラシアに手が届くんだ。助けられる手段があるんだ」


 死者達の魂の色の光がハックの瞳を貫いていた。

 真っ直ぐに、名状しがたい圧力を全身より渦のように纏った皇帝が、ハックを見据えている。


「――それで、ハック=F・ドライメン、私が自殺に付き合え、と言えば、貴方はついてきてくれる訳だな?」

「はい。お供いたします」


 ハックは頷いた。

 言葉は曲げなかった。


「そうか、有難う……」


 女皇帝の瞳から光が掻き消えた。

 その大粒の瞳は、のっぺりとした紫色に塗り潰された。


 絶望の色だった。


 彼女は俯いた。

 か細い弱弱しい声が響く。


「貴方を、自殺に、付き合わせる訳には、いかないなぁ……他の皆も……」


 皇帝は瞳から涙を溢れさせて泣き始めていた。


「駄目なのか。本当に駄目なのか? 本当になんともならないのか?」

「なりません」

「……助けたかった! 助けたかった! トラシアのあの子達を助けたかった! でも、ゼフリールの皆も死なせたくない……」


 静かな慟哭が響く中、ハックは無言で室内に立ち続けたのだった。


●

「……ニカイア攻めは取りやめる」


 やがて落ち着いたアテーナニカは泣き腫らした赤い目でハックへと言った。


「今後は守りを固める。徹底的に固める。大陸との交易を行える間は行うが、それよりもゼフリール島内だけで経済と物資を完結できるように、産業を整え、必需品の代用品を開発する」


 ハックから自殺に等しい無謀だと言われて出兵を断念したアテーナニカは、方針を大幅に転換した。

 新たな方針はベルエーシュが唱えていたものよりも、さらに徹底して防御的だった。


 ゼフリール島だけで完全に、独立独歩でやっていく体制を固める為のものだった。


「けど、私は、トラシア大陸の奪還を諦めては、いない」


 絶望色の瞳をしている皇帝が、まるで自分でも信じていない事を自分自身に言い聞かせるように言った。


「今は無理でもいつか。いつか必ず……私はゼフリール島を豊かにして、技術を発展させて、大陸へと攻め入るのが無謀なんて言われないくらいに強くして、そして助けを求めていた民達を助けにいく。ゼフリール島の民もトラシアの民も全部を救って見せる。それが一体いつになるのかはわからないけど、いつか……もうその頃にはトラシアの皆は死んでしまっているかもしれないけど、いつか……」


 いつか。

 いつか。

 いつか。


 呪文のように、自己に暗示するかのように、その日のアテーナニカはぶつぶつと、いつまでもいつまでも繰り返していたのだった。


●

 かくてアテーナニカも戦機を避けた。


 ハックはそう思った。


 彼女もまた自ら破滅に突き進むタイプの人間ではなかったらしい。

 待ち受けている破滅に気づかないで進もうとしてしまう事ならあるが『そっち進むと破滅ですよ』と教えてやれば引き返す。


 誰彼構わず言う事を聞く訳ではないだろうが、ハックの主君は彼女の為に粉骨砕身してきた臣下からの諫言を聞き入れるくらいの度量ならあったらしい。


 そうして密かに帝国最大の滅びの危機であったかもしれない新年が、ハック=F・ドライメンの密かな活躍によって無事に終わった。


 密かな、とは言ってもどうなったかを聞きに来たベルエーシュとシロッツィにはこの件を知られるところとなり、


<<やっぱりね! やっぱりゼフリールまるっとまるごと滅亡寸前の危機だったわ! 何から何まで甘いのよあの馬鹿女っ! ホントもうあいつバッカじゃないのっ?!>>


 と地団太を踏むベルエーシュは念話で大いに憤慨し、


<<しかしガルドゥルヴォルグ副伯は皇帝陛下の愚行を見事修正せしめた。さすがは俺が一目置く男よ、そうでなくてはな>>


 などと後方で腕を組んで立つシロッツィにはうんうんと頷かれた。

 二人の間でまた『帝国最強ハック=F・ドライメン』の評価が上昇し、ハックは己の虚像粉砕に難儀する事になる訳だが、それはまた別の話である。


 大過なく新春は過ぎ、春となり、夏となり時はとどまる事なく過ぎていった。


 トラシア大陸ではニカイアを筆頭とした西方諸国の対ルビトメゴル大同盟が発足、超大国ルビトメゴルと激戦に次ぐ激戦を繰り広げていたが、ゼフリール島は平和そのものだった。


 平穏を貪るゼフリール島は大陸からの戦時特需により交易で莫大な利益をあげ続けた。


 さらに時が流れると西方諸国大同盟はルビトメゴルに敗北、そのことごとくが征服された。


 ヴェルギナ・ノヴァ帝国はその後も僅かな時の間はルビトメゴルとも交易がおこなわれた。

 しかし、ルビトメゴルが夥しい数の大船の建造を終えるとその猶予の時は終わった。

 ルビトメゴルからゼフリール島へと降伏勧告が行われた為である。


 兵力差が多大な事から降伏を受け容れるべき、という意見もあったが、大陸から伝わって来るルビトメゴルの支配の過酷さからその数は少なく、ルビトメゴルの支配を受け容れない、という意見が世論の大多数を占めた。


 激論の末、王侯将相からなる元老院議会、市民達からなる平民会からあがってきた意見はいずれも最終的に降伏反対となり、これらの意見を受けてゼフリールの皇帝アテーナニカは降伏勧告を拒絶、徹底抗戦を唱えた。


 トラシア大陸全土を支配しているルビトメゴル帝国は、ゼフリール島のヴェルギナ・ノヴァ帝国へと宣戦を布告、大船団を組んで前人未踏の大兵力で攻め寄せてきた。


 兵力差は多大であったが、その差を埋めるべくゼフリール島では来たるルビトメゴルの侵略に備えて技術開発や防衛設備の設置が余念なく進められていた。


 エスペランザ諸島からは住民がゼフリール島へと総員避難されたが、祈士達だけは残り、島々に隠すように築かれた防衛拠点を起点とした高速船による奇襲が度々行われた。


 最終的にはエスペランザ諸島は放棄され、ルビトメゴル帝国軍がゼフリール島の東海岸に上陸した地点が決戦の場所となった。


 海が血の色で染め上げられる程の、史上に類がない程の激戦中の激戦となった。


 その壮絶極まる地獄絵図の大戦の際に特に目覚ましい活躍したと伝えられている面々が以下である。


 陸海空で縦横の働きをしたガルドゥルヴォルグ副伯ハック=F・ドライメン。

 ゼフリール最強の海軍を持つトラペゾイドの上王ピュロス。

 それに次ぐ海軍力を誇っていた旧フェニキシア王国の海軍司令バント伯爵ハンノ。

 ならびにその旧主にして海運国フェニキシアの女王ベルエーシュ。

 そして陸戦にて老獪な戦列指揮能力を誇るガルシャ王イスクラ。

 勇猛なる北方戦士の軍団を率いるユグドヴァリア大公ソールヴォルフ。

 その大公軍をかつて打ち破ったガルシャ聖堂騎士団の総長シロッツィ。

 天下の豪傑、アヴリオン共和国の市長ユナイト。

 同じく天下の豪傑、アヴリオン共和国の議長タオ・ジェン。

 彼等彼女等が率いた諸部隊だった。


 しかし彼等の活躍を以ってしてもルビトメゴルの物量とゼフリール島にはない新兵器による猛攻の勢いは凄まじく、ゼフリール側の戦線が突破されそうになる事は幾度となくあった。


 しかし各員の必死の抵抗によって上陸が阻まれている間に、大嵐が到来した。

 キンディネロス海に吹き荒れるこの大嵐によってルビトメゴルの大船団に壊滅的な損害が発生する。


 上陸戦で多大な出血を強いられていた所に、この自然災害による大損害がトドメの一撃となった。

 結果、ルビトメゴル軍はゼフリールへの侵攻の継続を断念、撤退を決断した。


 船首を転じ、来襲した時と同じくキンディネロス海とオーケアノス海を再び越えて、トラシア大陸へと逃げていった。

 ボロボロになった船達の多くが撤退の途中で沈没し、トラシア大陸へと生還できた兵はそのうちの二割にも満たなかったという。


 一方でゼフリール島側も多大な損害を蒙っていた。

 さらに大陸の経済網から外され物流はゼフリール島のみで孤立する事となり、島の経済は急激に冷え込んだ。


 しかし、これに備えて皇帝アテーナニカらはゼフリール島の法体制と経済体制を整えており、ゼフリール島は孤立する事となっても、大戦争による莫大な損害とその後の大不況を辛うじて耐え凌ぐ事ができた。


 戦時特需の頃に比べ経済規模は半分以下にまで低迷したが、皇帝の勅命による手厚い為政により各領内に餓死者などが出る事はなかったという。


 そしてルビトメゴル帝国側の損失は軍団だけにとどまらなかった。

 この大敗北の報を受け取ったルビトメゴルのカアン(皇帝)カムジーンは、


「――ここまで来て、ここまで来て世界制覇ならずに没するのか。あの時、カラノスの娘さえ仕留めきれていれば……! おのれハック=F・ドライメン! 手は打っていたのに……タオ・ジェンの役立たずがっ! アヴリオンの裏切者どもめぇっ!! いつの日か必ず奴等を殺せぇーーーっ!!」


 と嘆き憤怒を叫びながら事切れたという。

 寿命とも、病死とも、毒殺されたのだとも言われている。


 いずれにせよその文武に非常に優れた能力と圧倒的なカリスマで大帝国を統制していた皇帝が死んだ。


 頂点権力が空白化した事により、ルビトメゴルでは後継者争いが勃発した。

 カムジーン・カアンはぬかりなく後継者を指名していた。だがそれでも後継者争いが勃発した。

 彼は存命中に自分の息子達からの謀反を警戒し、己に匹敵する程に突出した権力を持つ存在を許さなかったが、それが要因の一つだと言われている。


 カムジーンに次ぐナンバー2の権力者は沢山いたが、それらは皆、カムジーンより遥かに小さな権力しか所有しておらず、かつ、どんぐりの背比べ的にいずれも大差がなかった。

 カムジーンの子達の勢力は拮抗していた。

 故に、これによってカムジーンが己の子達から謀反される心配は減っていたが、カムジーンが死した後に超帝国をまとめられるほどに突出した実力者が育っていなかったのである。


 結果、カムジーンの息子と娘達はそれぞれに己の帝国を築いて『我こそがルビトメゴルの正統後継者』として互いに相争い、それに乗じて各地で叛乱や独立運動も頻発し、ルビトメゴル帝国の旧領は散り散りとなった。


 再びトラシア大陸に戦乱の時代がやってきた。


 大陸は相次ぐ戦乱によりさらに荒れに荒れて消耗していった。

 それと対照的に再び力を増大させていったのがゼフリール島のヴェルギナ・ノヴァ帝国である。

 以前と比較して不況になれど皇帝アテーナニカの統治のもと平和を保っていたゼフリール島は大陸との交易を再開、長年育て上げた新産業と独自技術の強みを活かし、また大陸の戦乱の需要にも乗じて、交易による莫大な利益を生み出していった。


 さる日、ハックは皇都の宮殿に皇帝より呼び出された。


「あぁエスペランザ侯爵、よくぞいらしてくださいました」


 ゼフリールの文化圏では最早、若いとは言えぬ三十歳程度の年齢に見える、長い紫色の髪の婦人がハックに向かい微笑んだ。

 皇帝のアテーナニカである。

 彼女は老化が停止するのが遅かった為、以前とは外見に変化が見られていた。

 また口調や表情も変化している。

 若い頃は無表情で喋る事が多かったアテーナニカだったが、今ではころころとよく笑う婦人となっていた。

 なおハックがエスペランザ侯爵に任じられたのはルビトメゴルの大軍団を撃退した際にその功績によってである。


 多くのものが変わった。

 ガルシャ王イスクラも寿命によって既に他界し聖堂騎士団総長シロッツィは存命ではあるが現役から退いている。

 ガルシャ王国の王座はボスキ公ルカが継ぎ、聖堂騎士団総長の椅子もケルテス家のレシアへと渡っていた。


 しかし、


「ニカイアへと兵を出そうと思うの」


 女皇帝の紫色の瞳の奥に、鬼火のような光が宿っている。


 年月によって変わらないものもあるらしい。


 未だトラシア大陸への出兵を諦めていなかったらしいアテーナニカは微笑んで言った。


「ハック、今でもこの出兵は自死のようなものでしょうか?」


 ルビトメゴル帝国は既に崩壊して久しく、その国土は散り散りに細分化され、互いに相争い続けている。

 一つ国が興ってはまた一つが滅びる、群雄割拠の戦国時代にあり、トラシア大陸には突出した強国が今、一つも存在していなかった。


 異界の神々からの侵攻、世界帝国ヴェルギナ崩壊からの戦乱、ルビトメゴル帝国の圧政、さらにその崩壊からの大戦乱と、間断なく続きに続いた戦火は、国土を荒らしに荒らし回っており、トラシア大陸には最早かつてのような力は残されていなかったのである。


 一方でルビトメゴル来襲後も平和を保ったゼフリール島は大いに栄え、その戦力はルビトメゴルが攻めて来た時まで回復したどころか、それと比較してさえ遥かに上回っていた。


 故にハックは正直なところを答えて言った。


「今なら――成功すると思われます陛下」


 帝国最強の侯爵の返答に皇帝は万感の思いで頷いたという。


●

 皇帝アテーナニカに率いられたヴェルギナ・ノヴァ帝国の船団は長年の技術革新により船そのものだけでなく航海技術も発展していた。

 それによって航海の安全性は二十年前と比べて飛躍的に増しており、一隻も落伍船を出す事なく、トラシア大陸の西部海域へと到達する事に成功した。


 無事に海を渡った皇帝アテーナニカは、ニカイアへと従属勧告の使者を送った。


 世界帝国ヴェルギナの後継者を自称していたニカイアは、ルビトメゴル崩壊後の動乱の隙を突き、ニカイアによる『ヴェルギナ帝国』を復活はさせたものの、その領土はかつてのニカイアの三分の一以下にまで減少しており、国土は戦乱で荒れ果てていた。


 民衆からのニカイア皇帝に対する怨嗟の声は溢れており、諸侯からの支持も決して高くない。

 周囲のルビトメゴル文化の国に馴染みがなく反発心があるので、その為に同じヴェルギナ文化の人間同士で不平不満を堪えつつもかろうじて連帯しているに過ぎない。


 そんな状況だったところを賢者メティスを初めとした帝国の調略部隊は巧みに突いた。


 彼女等は帝国の本隊がゼフリール島を出発するずっと以前よりトラシア大陸へと渡って調略活動を続けており、今日という日の為に仕込みを続けていた。

 メティス曰く、ゼフリール島の平和と豊かさはトラシア大陸でも既に評判になっていたので、調略活動は非常にスムーズに進んだらしい。


 入念な調略の結果、ニカイアの西海岸に現れたゼフリールの大艦隊は、ニカイアの民から歓喜の大歓声で迎え入れられた。

 民衆は口々にカラノス帝の娘のアテーナニカ様が、落ち延びた先のゼフリール島で力をつけて、自分達を助けに戻って来てくれた、救世主がやってきた、真の世界帝国ヴェルギナが復活するんだ! と叫んでいた。

 民の中には世界帝国ヴェルギナの時代に生きていた者がまだそれなりに生き残っていたから、彼等の「昔は良かった」という述懐と「英雄皇帝カラノス様の娘であるアテーナニカ様なら昔の黄金の世を取り戻してくれるかもしれない」という期待は、ニカイアの多くの民の心に染みわたっていた。


 民衆のみならずニカイアの諸侯も多数が既に圧倒的戦力差と領地の保証、もたらされる利益から寝返りが約束されていて、皇帝アテーナニカ万歳を叫んでいる始末である。


「……この空気のカンジ、覚えてるわよ。昔フェニキシアをアンタ達が侵略してくれた時に使った手管ね?」


 船上にて睨んで来た女王ベルエーシュに対し皇帝アテーナニカは少しバツが悪そうに微笑んで「得意技なんです」と返したという。


 ニカイアは大幅に弱体化している上に、最後の頼みの綱である配下の諸侯達や、民衆達からもそむかれた為、ゼフリールの大兵力に抗う術は最早なかった。


 今代のニカイア皇帝は諦念と共に従属を承諾。

 帝位を退き、アテーナニカこそをヴェルギナ帝国の正統な皇帝と認め、臣従を誓った。


 かくてヴェルギナ・ノヴァ帝国はニカイアを無血開城させトラシア大陸に上陸し、橋頭保を築いた。

 帝国はその後も同様の調略戦術と圧倒的な武力を背景にした交渉によって、次々に周囲の国を従属させてゆき、時の経過と共に帝国の構成国と影響下にある国を拡大していった。


 もっともヴェルギナ・ノヴァはすべての国に対して交渉で従属させようとした訳ではなかった。

 交渉で従属させたのは、民に対する統治が比較的良好、あるいは統治者に改善の意志が見られる者のみであった。

 民衆に対して圧政を敷く者、それを改める気がない者に対しては武力を用いて次々に討ち滅ぼしていった。

 この際には帝国最強ハック=F・ドライメンと彼が率いた部隊が大いに活躍した。

 ハックの齢は既に壮年を超えていたが、


「我はエスペランザ侯爵にしてガルドゥルヴォルグ副伯にしてアロウサ騎士伯ハック=F・ドライメン、皇帝アテーナニカ陛下の盾にして剣なり。諸兵よ祈刃を捨て投降せよ。抗う者はすべて斬り伏せる。覚悟はよろしいか」


 百戦錬磨の大貴族の剣は、若い頃と比較してもますますの冴えを見せ、立ち塞がる敵を次々に斬り伏せたという。


 これらの姿勢から、ヴェルギナ・ノヴァ帝国は民衆の味方である、という噂がトラシア大陸の民の間に広がってゆく事となった。

 この評判はヴェルギナ・ノヴァ帝国の東進を大いに助ける事となる。


 ハック達ヴァルギナ・ノヴァ帝国の進撃はとどまる事を知らず、トラシア大陸に次々に勢力を拡大していったのだった。


●物語の終わりに


 後の世の歴史書に曰く――


 ヴェルギナの皇女アテーナニカは、帝国崩壊の際に一度は西の最果ての辺境、光の終わる地ゼフリール島まで落ち延びたものの、ゼフリールのガルシャ王から王国を譲り受けて皇帝となり、ゼフリール島を統一し、数十年の時間をかけはしたものの海を渡ってトラシア大陸へと戻って捲土重来を果たし、一度は崩壊したヴェルギナ系の世界帝国を復活させた。

 彼女はトラシア文化圏における暗黒時代を終わらせた者として後代まで語り継がれる伝説的な女帝となる。


 このヴェルギナ帝国復活の歴史は、多くの説話や小説で創作も交えて語られる事になるが、皇帝アテーナニカと共に物語の主役級の人物として登場し、人気を博する事になる祈士がいる。


 それが元は天涯孤独の傭兵にして、やがて帝国の騎士伯となり、副伯となり、侯爵となって、最終的にはトラシア大陸の大公爵となるハック=F・ドライメンである。


 ハックに対する評価は創作も交えた小説――いわゆる「演義」と呼ばれる物と、史実に忠実たらんとする歴史書とではかなり扱いが異なる事になるが、後世の人々に広く知られているのは「演義」の方である。


 そこではハックは武略政略の両面で皇帝アテーナニカを支える完璧な祈士として描かれている。

 七色に輝く心剣ブラッシュで剛撃を振るい一人で百人の祈士を蹴散らす無双の豪傑の働きを見せつつも、世の流れより未来を見通し、迷う皇帝へと的確な助言を与え、時には皇帝の意志に逆らってでも諫言を述べて道を正し、帝国を躍進へと導く、王佐の叡智を秘めた賢者的な働きも見せている。


 その知勇兼備・縦横無尽の凄まじい活躍っぷりとビジュアル的な良さも手伝って、人々からの人気を大いに集め、物語の登場人物として、人の世の終わりまで半永久的に語り継がれてゆく事となる。


 かくして少年は伝説となる。


 伝説の騎士ハック=F・ドライメンや皇帝アテーナニカ達が築いたヴェルギナ・ノヴァ帝国も、時の流れの果てには、地図上から消え去る事になる。


 だが、しかしそれは彼等の死後、千年の後の事である。


 ヴェルギナ・ノヴァ帝国はトラシア文化圏のみならず『世界(テルス・マーテル)』の人類史上、最も長く続いた大帝国として、世界記録書に記述される事となる。



 暗黒時代の英雄伝説 ゼフリール 完


成功度:大成功

獲得称号:暗黒時代の英雄伝説~伝説の騎士ハック=F・ドライメン~

獲得実績1:ヴェルギナ・ノヴァ帝国の大公爵

獲得実績2:世界帝国を復活させた

獲得実績3:天下(トラシア文化圏)統一END

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