ヘリオタイ光導兵長キルケー
「ぐぅ! こっ、このけったい生命体はよもや……!」
エスペランザ島の生き残りスヴァリスヴェルス
「異神よ! 注意して! ゲノスとは比べ物にならない程に手強いわ!!」
依頼主・トラペゾイド上王ピュロス(トラペゾイド連合王国)
概要・建設中の港の防衛(異神との戦闘)
シナリオタイプ・戦闘
シナリオ難易度・難しい
主な敵NPC・火唱の四面神「グラボルイノ」
主な味方NPC・ヘリオタイ光導兵長「キルケー」、傭兵「スヴァリスヴェルス」
関連の深いNPC・ハイロード「ピュロス」、ヘリオタイの鉄槌「パルメニオン」、大陸三勇者「ジャスティン」、エスペランザの騎士「エルナン」
ステータス上限・無し
シナリオ参加条件・実績「グルガルタ島の戦いを勝利した傭兵部隊長」をPCが所持している事
古よりもさらに彼方の時代。
真なる空より光が降り立った。
光はやがて緑の芽を出して、星を覆っていった。
――の加護を受け人となった者達は、やがて炎を用いて地表を覆う緑達を焼き払っていった。
●
光陽歴1205年アシェラの月(6月)、ヴァルギナ・ノヴァ帝国のルアール城村とプレイアーヒル城塞とを結ぶ街道にゲノスが出没して物資輸送が滞り、北部戦線で徐々に物資欠乏が発生しはじめ、南部ではフェニキシア王国の女王ベルエーシュがヴェルギナ・ノヴァ帝国へと攻め入った頃の事である。
トラペゾイド連合王国はグルガルタ島にて度重なるゲノスからの妨害を受けながらも港の建設を進めていた。
拠点となっているのは島内を流れる比較的大型の河川に接し、次元回廊も通っている町ラリラトヴである。
急ぎ進められている港湾施設の建設は完成が見えてきていた。
しかし眷属(ゲノス)による襲撃はなりを潜めるどころか日夜回数と勢いを増しており、いかな精鋭たるトラペゾイド軍といえども連戦から疲れが溜まり被害が増加してきていた。
今の所はなんとか致命的な損害を出さずに守り切れているが、このままのペースで推移していけば早晩どうなるかわからない。
トラペゾイドの幹部達には焦りが積もって来ていたが、
「やはり、異貌の神々が一度に操れる眷属の数には制限があるようだな。上限がどのように定められるのかは不明だが、限りがある事は前大戦からも古の時代からも変わりが無い」
最上位者たるハイロード・ピュロスの口調はいつも通りに平坦な抑揚で淡々としていた。表情もまったくもって無の鉄面皮。何一つも変わらない。
「しかし、一度に寄せて来る数が有限といえども、こうも頻繁に襲撃を繰り返されては兵の体力がもちません」
ヘリオタイの鉄槌と謳われる宿将パルメニオンが進言した。
「恐れながらハイロード、このままではいつかは破られますぞ」
「破られる事は許さぬ」
ピュロスは短く命令した。
「『太陽神(ヘリオス)』の名に懸け死力を尽くして守れ。エスペランザを攻略するには港が必要だ」
方針の変更も、度重なる敵の襲撃に対する策も、無いらしい。
とにかく死ぬ気で守り抜けと。
「……はっ」
苦汁を呑み込んだような表情を浮かべパルメニオンが頷く。
二人の様子をエスペランザ島出身の男はじっと見つめていたのだった。
●
「……パルメニオン殿」
大陸風の鎧下服に身を包んだ壮年の男が憂いを表情に浮かべている。
彼の名はエルナン・デ・バルディビア。
トラシア大陸西部にて強勢を誇るニカイア公ゴールディアスの配下であったエスペランザ伯カルロスの騎士である。
ニカイア公にエスペランザ島奪還の意志がなかった為、大陸三勇者のジャスティンと共にゼフリール島へと救援を訴えにやってきて、そのままトラペゾイド軍に加わっていた。
「手立ては何か、無いのでしょうか。このままでは……」
状況は厳しいとエルナンは訴えたがパルメニオンは眉間に皺を刻みつつ瞳を閉じ首を横に振った。
「トラペゾイドは既に全力です。上王が死力を尽くせ、と命じられたからには、やはりそうするしかないのでしょう」
「左様ですか……詮無き事を申し上げてしまいました。お許しください」
「なんの。エスペランザはエルナン殿の故郷。それを思えば、お気持ちは重々わかりまする。なんとしてもエスペランザ諸島を奪還する為、死力を尽くしましょうぞ。すべては人類世界の存続の為に」
「有難うございます。私も粉骨砕身して防衛にあたります。ええ、すべては人類世界の存続の為に」
エルナンはその後他の幹部達とも言葉をかわしてトラペゾイドには死力を尽くす以外に手立てが残されていない事を改めて確認すると、自室として割り当てられた部屋に戻り、魔法陣が描かれた布を卓上に広げ水晶を置き、魔力の操作を開始した。
●
港を燃やす大火が暗黒の空を照らしている。
夜襲だった。
ゲノスの集団が町の北方より押し寄せてきて、ピュロス率いるトラペゾイド軍は町より出撃しこれを迎撃した。
その間に、町に火が噴き上がっていた。
北から寄せてきているゲノスとは別の一団が、川より突如として出現し港を襲撃したのである。
ゲノスには水中でも自在に呼吸し行動できる種類がいる。
海を越えて攻めてきている以上、グルガルタ島へと寄せて来るゲノス達はすべてが水陸両用であるのは自明である。
故にピュロスは水中にも監視の目を配してはいたが、グルガルタ島のこれまでの戦いでは川から攻められた事は一度もなかった為、監視の兵に油断が生まれていた。
また単純に北で戦闘が起こっていた事、夜間である事、そして水中である事、それらがゲノス達の水中よりの接近を早期に発見する事を困難にさせ、奇襲を許してしまっていた。
遊撃の傭兵部隊を率いていた貴方は、ピュロスからの指令を受け北の戦場より急遽町に引き返し、燃え盛る港湾施設の鎮火と、暴れ回るゲノス達の討伐にあたった。
既に被害が発生してしまっているが、早期に鎮火・鎮圧できれば修復は十分可能である。
逆に鎮火が遅れれば、港の完成に甚大な遅延が発生してしまう。妨害を繰り返されれば永遠に完成しない事態に陥ってしまう可能性すらある。
早急な敵勢力の排除が必要だった。
貴方達が辿り着いた時、港内には以前にも戦った口牙兵に似たゲノスが溢れていた。
サイズは以前のものよりも大分小さく直径三クビト(150cm)程度、肌の色は太陽光のような橙色で、口の奥から淡く橙色に輝く閃光波を吐き出している。
橙色閃光波は高熱を帯びているらしく建物に命中すると発火した。これにより港は火の海と化していたのだ。
<<ああっ?! 折角ここまで作ったのにっ!! 皆燃えてしまう! おのれぇっ!!>>
炎の明かりに照らされる中、副官の銀髪エルフ娘キルケーが怒声を発し、手にしている銃剣付きのマスケットライフルの銃口より破神の閃光波を発射した。
他の傭兵達も次々に剣や槍を振るって閃光波を発射し小型口牙兵へと攻撃してゆく。
何体かの口牙兵が倒れたが、彼等は以前よりもサイズが小さくなった割りに頑強度は上がっているらしく、倒れた数は予想よりも少なかった。
橙色の口牙兵達は傭兵達へと橙色閃光波を撃ち返し、たちまち撃ち合いとなってゆく。
<<こいつら……火力も前より上がってる……! 改良してきてるっていうの?!>>
傭兵の金髪エルフ娘スヴァリスヴェルスが杖を振るい光を放ちながら味方の念話領域に声を洩らす。
苦戦する傭兵達だったが、それはゲノスの性能が上がっているという事もあったが。
――KUOOOOOOOOO!
奇怪な叫びと共に巨大な紅蓮の火球が次々に撃ち放たれ、盛大な爆裂が連続して巻き起こると共に十数名の傭兵達が一気に吹き飛ばされてゆく。
<<なっ、なんだ、この化け物はぁああっ?!>>
とりわけ強力な個体が一体混じっていた為だった。
それは奇怪な容貌をしていた。
例えるならば、その胴体のシルエットは木の幹が近いだろうか、円柱状の形をしていた。
高さは六クビト(約3m)、直径は二クビト(約1m)程で、色は黒褐色をしている。
底は半球形になっていて、やや明るめの色に変色しており、大地から一クビト(約50cm)ほど宙に浮いていた。その周囲に土星の輪のように、光輝く輪が回転しながら浮いていて、輪には小さく奇怪な文字が無数に刻まれている。
円柱の中頃からは、真っ白に塗りたくられた顔が四つ、方向と高さをずらしながら生えていた。
正面、最も下部に一つ、人間の男の顔。
左面、下から二番目の高さに一つ、獅子の顔。
背面、下から三番目の高さに一つ、蛸の顔。
右面、最も上に一つ、鷹の顔。
そして円柱からさらに二本の腕と三本の筒のようなものが生えており、左右の手にはそれぞれ片刃の肉厚の曲刀を持ち、三本の筒からは紅蓮の火の球が撃ち放たれ、傭兵や建造物に命中すると大爆発を巻き起こしていた。
<<畜生、デタラメだぞこのゲノス?!>>
<<『眷属(ゲノス)』じゃない! こいつ……『異貌の神々(ディアファレテオス)』、火唱の四面神、グラボルイノよ!!>>
スヴァリがその個体に関して見覚えがあるらしく叫んだ。
<<グラボルイノ?! こいつがっ?!>>
火唱の四面神グラボルイノは先の大戦でもカラノス帝率いるヴェルギナ帝国軍と激闘を繰り広げ多大な被害をもたらしたという凶悪な異神だ。
エスペランザ諸島を支配している異貌の神々の将軍アルバディオの配下であるらしいから、いずれ戦う事になるだろうと、その能力については大陸三勇者の一人ジャスティンから伝え聞いていた。
曰く、遠距離からの強力な範囲攻撃が強みであり、弱点は接近戦であると。
それを思い出した貴方は副官のキルケーと腕利きの傭兵であるスヴァリへと念話を飛ばした。
グラボルイノは自分達でなんとかするぞ、と。
■作戦目標
火唱の四面神グラボルイノを可及的速やかに討つ、あるいは撃退する。
■状況
周辺にはグラボルイノの他に改良型口牙兵が大量に存在していますが、そちらは配下の傭兵達や港の守備隊が相手をしてくれるのでPCが直接戦う必要はありません。
■敵戦力
●火唱の四面神グラボルイノ
異貌の神々の一柱。
エスペランザ諸島を占領している異貌の神々の将軍アルバディオの配下。
ジャスティンから事前に主要な敵として能力情報が伝えられている為、PL情報以外の部分はPC情報として扱って良い。
○外見
ざっくり言うと円柱より四つの顔と二つの腕、三つの筒を生やした姿。肉厚の曲刀を左右の手に一本づつ持っている。
腕の長さは1m程。
円柱の高さは3m、直径は1m程。色は黒褐色。
円柱の底は半球形になっておりやや明るめの色。半球形の周囲に土星の輪のように、光輝く輪が高速で回転しながら浮いていて、輪には小さく奇怪な文字が無数に刻まれている。
四つの顔は円柱の中頃から、方向と高さをずらしながら生えている。
正面、最も下部に人間の男の顔。
左面、下から二番目の高さに獅子の顔。
背面、下から三番目の高さに蛸の顔。
右面、最も上に鷹の顔。
○基本能力
大地から一クビト(約50cm)ほど宙に浮いており、滑るように移動する。地形の影響を受けず機動力も高いが常時イニシアティブ判定にマイナス補正を受けている。
数メートル程、高々と跳躍する能力を持つが、飛行能力は無い。
3回行動
使用ダイス1D100
防御レート+20
○使用スキル
・火球砲
攻撃レート-25
超火力の範囲攻撃。
威力・精度共に非常に優れるが至近距離には撃てない。
射程3m~100m。
ラウンド中、移動する前でのみ撃つ事が可能。
射出口に赤い光を収束させ、僅かな溜めと共に球形状に光を膨れ上がらせ球体と成して射出する。
火球は指定地点に達するか何かに命中すると大爆発を巻き起こし、直径5mを衝撃波を伴った爆熱で焼き尽くす。中心に捉えられた場合、回避が非常に困難。
・二刀剣技
近距離で繰り出して来る。
左右の腕にそれぞれ握った肉厚の曲刀での剛撃。
火球砲ほどの威力はないが、それでもゲノスの一撃よりも遥かに強烈な攻撃力を誇る。
攻撃レート+10
○PL情報
初期状態のPCよりもステータスの総合値が高い。
追い詰められると縮地を使う。
追いつめられると逃走する。
グラボルイノが討たれる、あるいは逃走するとゲノス達も退却する。
■味方戦力
●キルケー
銃剣付きマスケット銃を装備。
攻撃レート+25
防御レート-15
2回行動、使用ダイスは1D100。
基本的に後方から援護射撃しようとする。
〇使用スキル
猛撃
流水
癒しの光
●スヴァリ
身の丈を超える長杖を手に持つ。
攻撃レート+20
防御レート-20
2回行動、使用ダイスは1D100。
基本的に後方から援護しようとする。
○使用スキル
紫電
火球(PCの物と違い行動消費2、精神消費34、力溜効果は1回)
閃光弾
地霊縛
癒しの光
■戦場について
建設中の港の敷地内。埠頭。
時刻は夜。
ただしあちこちで火が燃え盛っている為、ある程度は視界が効いている。
対エスペランザ戦線へようこそ、望月誠司です。
今回は前回開始されたグルガルタ島での拠点建設も完成が見えてきましたが、その分、敵の攻勢も激しさを増し、ついにゲノスではなく異貌の神々が乗り込んできました。
グラボルイノは攻撃力に優れた非常に強力なキャラクターです。
彼の得意な土俵で戦った場合、かなりの確率で敗北します。
ご興味惹かれましたらご発注いただけましたら幸いです。