ハイロード・ピュロス
「我々に後退は無い。この地を失う訳にはいかない」
ヘリオタイの鉄槌パルメニオン
「ピュロス軍団は常勝不敗ィィィィィィッ!!!!」
ヘリオタイ光導兵長キルケー
「ピュロス軍団は常勝不敗ィィィィィィッ!!!!」
大陸三勇者ジャスティン・ザ・バーバリアンソード
「敵の対応が速い……!」
エスペランザ島の生き残りスヴァリスヴェルス
「私はあの島に帰らないと、もう一度」
依頼主・トラペゾイド上王ピュロス(トラペゾイド連合王国)
概要・南海の島で建設中の拠点の防衛戦(主に平原での大集団戦)
シナリオタイプ・軍団戦闘(50人隊指揮)
シナリオ難易度・普通
主な味方NPC・ヘリオタイ光導兵長「キルケー」、傭兵「スヴァリスヴェルス」
関連の深いNPC・ハイロード「ピュロス」、ヘリオタイの鉄槌「パルメニオン」、大陸三勇者「ジャスティン」
ステータス上限・無し
シナリオ参加条件・無し
『――我々は人類世界を守る為に勇者を求めている』
アドホック傭兵ギルドの掲示板スペースに、そんな題目がデカデカと書かれた依頼書が張り出されていた。
眺めていると、ちょうど板に掲示されている依頼書の張り替えに来たらしき受付嬢が貴方へと声をかけてきた。
「あぁ、それ、トラペゾイド連合王国からの依頼ですね。とっても大変なようですが、報酬は良いですよ」
艶やかに長い黒髪のアドホック職員ルルノリア嬢は張り紙の束を胸に抱えつつ貴方を見つめてそんな事を言ってきた。
「危険を厭わず、腕に自信があるならお勧めです。逆言うと戦闘技量が低い方にはとてもお勧めできないんですけど……――さんならイケルんじゃないですかね? とってもお強いですし。どうです? 一つ受けてみませんか? 人類世界を守る為っていうのが、あながち嘘でもなさそうなので、私としても他人事じゃないんですよね。嘘じゃないからこそヤバ味が深めな危険度な気はしているのですが」
――随分な言いようだが、この依頼はそんなに危険な代物なのか?
そのような旨の事を貴方が問いかけると、
「ええ、だってこれ、エスペランザ諸島奪還戦線への参戦要請ですから」
彼女はまるでそれだけですべてを説明し終えました、みたいな顔をしてくれた。
●
理由は色々とあったのだが、結局の所依頼を受諾する事にした貴方は、依頼主であるトラペゾイド上王ピュロスが治める『光の都』ケンヌリオス・ヘリオンへと向かった。
東海岸に建つ、ゼフリール島で最も栄えていると謳われる島内最大級の巨大港湾都市である。
ケンヌリオス・ヘリオンの城には腕自慢らしき多くの傭兵達が集まっていて、簡単な合同訓練(勝ち抜き式の模擬戦)が行われた。
そして――訓練が終了するとその様子を見ていたらしき灰髪の老人が貴方の前へと現れて言ったのだ。
「傭兵隊はお前が指揮せよ」
と。
●
エスペランザ諸島。
人類諸勢力から見捨てられ、異貌の神々の軍勢に侵略され、滅んだ地である。
現在は異神の軍勢に占拠され、異世から現世へと侵攻する為の橋頭保にされている地だ。
現地の人間達のうち祈士や男達は皆殺しにされたが、しかし一般の女子供は囚われて、精神エネルギーを絞り出す為に家畜のように扱われているのだという。
大陸三勇者の一人ジャスティンが、トラシア大陸の王侯へと救出・奪還を訴えたが、いずれも拒まれた。
唯一ジャスティンの声に応え、島の奪還に力を尽くすと公けに断言したのがゼフリール島のハイロード・ピュロスである。
彼はジャスティンに約束した通り、エスペランザ解放の為にゼフリール島最強と謳われる鋼の軍団を東へと向けた。
●
季節は未だ春だったが、真っ青な空に強烈な光を放つ太陽がギラギラと燃えている。
ここはグルガルタ島。
キンディネロス海の南部海域に浮かぶ小さな島である。
ゼ島と大陸とを結ぶ航路からは南に外れた位置にあり、これまではあまり注目を浴びる島ではなかった。しかしエスペランザ諸島奪還の指針が打ち出されてよりは、連合王国にとって最重要地点の一つにあげられる程に、その価値が高められている。
というのも、ゼ島からのエスペランザ諸島への距離よりも、グルガルタ島からのエスペランザ諸島への距離の方が遥かに近いのである。
それだけならさほどの意味は成さなかったが、グルガルタ島とケンヌリオス・ヘリオンの間には地脈が通じていた。
つまり『次元回廊(次元回廊の解説はこちら)』が接続されている。
次元回廊では物資を運ぶ事は出来ないが、しかし祈士ならば送り込む事が出来る。
連合王国の諸都市やアドホック傭兵ギルドの本部があるアヴリオンから、通常の船旅とは比較にならない短時間で、大戦力を送り込む事が可能だった。
その為、ハイロード・ピュロスは、このグルガルタ島をエスペランザ諸島奪還の為の前線拠点にしようと考えたらしい。
他にも条件の似た島は幾つか存在していたが、ピュロスが兵を送り込むと公けに発表したのは、この島だった。
まず密かに船で大量の食料と資材を運び込み、グルガルタ島の次元回廊が開かれている小さな町ラリラトヴを要塞化する。次元回廊はいざという時の退路も兼ねるから、ここの防御を固める事が第一だった。
そして次にラリラトヴで造船設備を整える。船の修理を可能とする拠点を前線に確保しておきたかったからだ。
これらを完成させたら、さらに食料や資材を運び込んで集積し、ゼ島から軍船を集結させる。
そうしてグルガルタ島を足がかりとして、祈士達で順序(ローテーション)を組み、戦闘員の休息・交代、船の修理、補給、これらをこなしながら、エスペランザ諸島の各島を順に一つ一つ確実に攻め落としてゆく。
大雑把に説明するならば、そういう寸法である。
一気に決戦して決めるような派手さは無かったが、手堅い戦略だった、一見では。
――しかしである。
『異貌の神々(ディアファレテオス)』というのは、人間から見て何を考えているのか良くわからないような奇怪な生物達ではあったが、決して知恵無き生き物では無かった。
人に劣らない、あるいはそれ以上の高度な思考能力を持っている。
そんな彼等が、自分達が折角奪い取った土地の近くに、敵対勢力がせっせっと前線拠点を作ろうとしている事に気づいたのなら、実行に移して来る行動は一つだった。
●
<<敵襲ー! 敵襲ー!>>
グルガルタ島にある小さな町ラリラトヴ。防衛設備の建設がまだまだ土台もやっとこという状態だったが、味方の念話領域に危機を伝える声が響き渡っていた。
グルガルタ島の拠点建設は開幕から困難の連続だった。
物資を運ぶ船は海上で捕捉襲撃されて何隻も沈められていたし、島に駐屯し土木工事にあたっている祈士達も今この時のように頻繁に襲撃を受けている。
まるで最初から人類側がこの島へと拠点を築きに来る事を知っていたのかのような対応の速さだった。
<<今回も北からか……町の外に出て迎撃する。急ぎ陣を敷け。正面は私の隊で抑える。右翼はパルメニオン、左翼はジャスティン殿、頼む>>
<<応!>>
<<承知>>
念話に老人と猛々しい男達の野太い声が響く。
異界勢力の妨害攻勢は激しかったが上王ピュロス、その人が最前線に出て戦闘の指揮を直接執っている為、トラペゾイド正規軍の士気は非常に高かった。
国王自らが先頭に立って戦うというのは、いささか時代遅れな感はあるが、ありえないという程でもない。長年の実績とカリスマのある王ならばこうして全体の士気も上がる。
……それは良い。
それは良いのだが。
<<――は、遊撃だ。今回からは完全に任せる。好きに動いてくれ>>
良く無いのは……というか、貴方が大いに戸惑っている所なのは、他ならぬ貴方自身が、いきなり傭兵隊の隊長に抜擢されていた事である。
『傭兵隊はお前が指揮せよ』
と合同訓練の後に告げた老人は、ゼフリールの覇王ピュロスその人だった。
本来なら半スタディオン(約100m)以内でしか通じない念話が聞こえているのも、指揮官用に念話の射程が強化される貴重な腕輪を貸与され嵌めているからである。
ピュロス、という人物には堅実な性格である印象があったのだが、存外に博打うちな面も持ち合わせていたらしい。
いくら傭兵隊とはいえ、流れ者の傭兵にいきなり50人からの祈士隊の指揮を預けるというのはマトモではない。一般兵に換算するならば5000人相当の戦力だ。
さらにこれを遊撃、自らの制御下に置かず、指揮官の独断で動いて良いとするのは最早狂気の沙汰と言って良かった。
もっとも、
<<もしお主が敵の回し者だったら後ろからドタマぶち抜いてやるからなッ!!>>
と傭兵隊内にしか聞こえない念話領域で告げてきたのは、銀髪のエルフ娘キルケーである。
彼女は傭兵でなく正規軍所属の祈士だ。そして貴方の副官兼傭兵隊の副隊長でもある。白く細い手に握られているのは銃剣付きの武骨なマスケットライフル型祈刃だった。
このように、お目付け役は一応つけられていた。
最初から正規軍のアンタが指揮すれば安心だろうに、という意味の念話をキルケーに飛ばした所、
<<儂だってそう思うわい! じゃが、ピュロス様がお主にやらせよとおっしゃるんじゃ…………仕方ないじゃろ!>>
との返答がかえってきた。
<<一体、陛下はこんなどこの馬の骨とも解らぬ一傭兵の何を見込まれたのやら……>>
不満そうにエルフ娘がぶつぶつと呟いている。
覇王様からはどうやら貴方は期待されているらしい。
<<大変そうだけれど頑張ってね……何でも協力するわ、勝利の為なら>>
そう言ったのは金髪のエルフ娘スヴァリスヴェルスだ。こちらは傭兵である。
噂によれば、彼女の故郷はエスペランザ島であるらしい。異貌の神々よりの侵攻を受けた時、祈士である彼女はたった一人で辛くも島から脱出したのだと。
スヴァリはエスペランザ諸島奪還に並々ならぬ意志を秘めている様子だった。
そんなエルフ少女の様子をキルケーはちらりと一瞥し、
<<ま、今は戦時じゃ。しっかりやる限りは足並み揃えて従ってやるわい。我等五十人、上手く使えよ>>
貴方に対してそんな事を言ったのだった。
■作戦目標
ゲノス軍団の撃退
●地形
ラリラトヴの町は南を比較的大型の河川に接し、北と東が草原となっている。
西は丘が広がっている。起伏を繰り返しながら西にゆく程に徐々に高くなってゆき山地となる。
●味方の数と配置と戦力
左翼ジャスティン隊100人が丘上に、草原に中央ピュロス隊100人、右翼パルメニオン隊100人が陣取る。
味方は二列の横隊で並んでおり、前衛が『破神盾』で防御し後列がその陰から『破神剣』で射撃し迎撃する待ちの構え。
PCが率いる傭兵隊50人は初期配置はピュロス隊の南側にいる。
味方の祈士達は皆精鋭で基本的にかなり強いです(使用ダイスが1D100で能力値も平均値以上)
・備考
指揮官用腕輪をPCは貸与され装備している為、念話の射程が拡大中(シナリオ終了後、腕輪は原則返却されるなどして失われる)
●敵の数と配置と戦力
ゲノスの数は600以上。
集団行動を可能とする一定以上の知能を持っている。
ただし、引き換えに個々の単純戦闘能力はさほど高くないようだ。
敵は「射撃が可能な種類(口牙兵)」と「接近戦に長けた種類(蜥蜴人兵)」の二種が主に存在している。
彼我の距離はまだかなり離れていて、お互い有効射程に入っていない状態である。
ゲノス達は口牙兵達を横隊に広い間隔で一列に並べて前に出し、後列に蜥蜴人兵達が横隊で並んで前進してきている。
●口牙兵
体長3m程。
口内にびっしりと牙を生やした水陸両用の異貌のゲノス。
口の奥からビームのように閃光を発射する。射程は50m程度。
接近した場合はピッケルのような手先を振り下ろしてきたり、噛み付き攻撃を仕掛けて来る。
動きはやや鈍重だが皮膚がやや硬め。
使用ダイスは1D50。最大行動力1。
攻撃レート+15。
防御レート+10。
●蜥蜴人兵
体長2m程。
短刀と盾で武装した水陸両用の蜥蜴人型ゲノス。
素早い動きで肉薄し短刀で鋭く攻撃してくる。飛び道具の類は無い。
使用ダイスは1D50。最大行動力1。
攻撃レート-10。
防御レート-5。
●PL情報
敵集団はPC隊が何もしない限りは、人類側の戦列との距離が20mになるまでは、口牙兵を前列に出して射撃しながら前進して来る。
彼我の距離が20mに達すると蜥蜴人兵が前列へと飛び出して突撃してくる。
その後、口牙兵は東側に回り込む動きを見せ、味方の側面を取るなどして射線を再び通した時、射撃を再開する。
ただしPC隊が開幕でいきなり突出して突撃した場合など、何かアクションを仕掛けた場合は反応して動きを変えてくる。
その他、一際体格が大きく能力も高めの指揮官級のゲノスが一定数ちらほらとまじっている。
また口牙兵の中には体躯が他より大きくさらに色が赤い特に強力な総指揮官型ゲノスが一体だけ混じっている(能力が他より高い&最大行動力が3)
『異貌の神々』はいない。
PCが歴戦設定ならば、異貌の神々は幾つかの例外状況を除いて自分達に不利な状況、あるいは、有利か不利か不明な状況、または消耗戦が予想されるような状況では姿を現さない傾向が強いと知っていても良い。
●備考
この解説にある情報はPL情報以外はすべてPC情報扱いでOK。
最後までお読みいただき誠に有難うございます。
軍団戦へようこそ、望月誠司です。
こちらPCが傭兵隊長として配下の傭兵NPC達を指揮しながら戦うシナリオとなっています。
指揮はそこそこに個人戦闘を重視して斬り込みバッタバッタと大集団相手に無双するも良し、隊の指揮を重視して効率良くクレバーに戦うも良しです。
オープニングの冒頭で受付嬢が非常に危険な依頼だという解説をしていて、実際ゼフリール世界の標準基準ではその通りなのですが、PCはとても強いのでそれでもシナリオ難易度は普通です。まだ多少の余裕があります。
折角の自サイトなので簡易図には画像を使ってみました。やっぱり絵を使えると彼我の配置がパッと見で解るので良いですね。
もっと複雑な配置のシナリオもやれそうな気がしています。
今後も色々と個人運営の独自サイトならではの可能性を模索してゆきたいと思います。
ご興味惹かれましたらご発注いただけましたら幸いです。