惑乱公主ホン・ファ「どうですか? 今からでもわたくし達と手を組んで、夢想家ユナイト・ロックを討ち果たしませんか?」
依頼主・アヴリオンの市長ユナイト・ロック(アヴリオン共和国)
概要・売国奴達の討伐
シナリオタイプ・戦闘
シナリオ難易度・難しい
関連の深いNPC・アヴリオンの狂雷「ユナイト・ロック」招風雷「タオ・ジェン」惑乱公主「ホン・ファ」
ステータス上限・無し
シナリオ参加条件・PCが「ケーナ・イリーネ」である事
シナリオ中の確定世界線・以下の実績を獲得している。
アヴリオン市長ユナイトからの売国奴タオ・ジェン討伐依頼を受諾した
稲妻は嵐の尖兵だ。
風と雲と雨とを連れて来る。
タオ・ジェン、嵐の前触れ、超大国の尖兵、つまり――売国奴。
鮮烈な赤光が闇を押し退け消し飛ばした。
爆音が轟く。
熱波が爆風となって夜の路地を殴りつけるように突き抜けてゆく。
木材と金属とが砕ける音と共に美麗な装飾がほどこされている馬車がひしゃげ、車輪が吹き飛び、横転して車体が路地に激突した。
いななきと共に転倒する馬達、宙を舞っていた御者の男が大地に叩きつけられる。
路地の陰からさらに紅蓮の光が次々に飛び出してゆく。
火球だ。
大量の火球が嵐のように放たれ、次々に爆裂し、昼夜が反転したと錯覚する程に煌々と空間を紅蓮に染め上げる。
市長ユナイト・ロックが議長タオ・ジェンを排除せんと取った行動は直接的だった。
待ち伏せからの奇襲。
議長が乗る馬車を襲った。
議長として出席する必要がある夜会の会場と、タオ・ジェンの屋敷とを結ぶ道の途中に自ら祈士達を率いて伏せ、通りがかったところへ、爆裂する火炎球を雨あられと撃ち込んだのである。
しかし火炎球の連打はすぐに止まった。
術者である祈士達が次々に脱力し、夢遊病者のような虚ろな瞳で虚空を見つめたまま動かなくなったからである。
<<――ハハッ! おいおい正気かね?>>
笑いを含んだ念話が闇――否、紅蓮の中に響き渡った。
黄金の満月と満天の星々が輝く空の下、燃え盛る馬車が周囲を赤く照らしている。
全体領域に響く念話は議長タオ・ジェンのものだった。
<<襲撃だと? アヴリオンの司法を舐め過ぎだろうユナイト・ロック。市長としてのお前はもう終わりだ>>
<<終わらないさ、何故ならお前は売国奴だからだ>>
赤い鍔広帽子をかぶった銀髪の男は、ほぼすべての人間が脱力して動かなくなった中でも、依然として鋭く炎の塊を睨みつけながら淡々と言った。
<<フフフ正義ならば何をしても許されるという訳かい? 大事の前の小事だと? 暴走する正義は醜悪だねぇ>>
<<都合の良い時だけ遵法精神を持ち出す輩が述べる御託に付き合う気は無い。お前はここで排除する。後は有権者達が判断する事で、そして私はアヴリオン市民の知性と誇りを信じている。お前はこの街を大陸に売り渡そうとしている。もはや野放しにしておく訳にはいかない>>
<<結局はこれだ、鉄と血と炎だ。気に入らない奴は力づくで除くのだ。野蛮人どもめ。暴力で生きるというなら身の程を知れ。大陸に逆らってこの島に未来があると思うのか!>>
<<未来だと? このままお前に好き放題させておくよりはマシだ『ストームブリンガー(破滅を齎す者)』。勝てないから抗わないというなら、それは奴隷の精神だ。戦って敗死するとしても、家畜として支配されるよりはずっとずっとマシだ。最悪でも人として生きて死ねるなら、だいぶん分の良い賭けだろうよ!>>
<<狂人め! 最悪だ。狂気の沙汰だ。私が死んだら火の海だ。人がなんとかこの街を守ってやろうというのに、邪魔をしやがって馬鹿が!! お前こそが嵐を呼ぶ者だ、アヴリオンの狂雷! 破滅の尖兵!!>>
擱座し燃え盛る馬車より轟音と共に光が閃いた。
赤帽子の男が前方へと姿勢低く飛び出す。
男が一瞬前まで立っていた位置に光が突き刺さる。
爆裂が巻き起こる。
その間に横転している馬車の出入り口より大陸東方風の衣服を纏った男が勢い良く飛び出している。
ユナイトが駆けつつ剣を振るって閃光を放ち、タオ・ジェンが駆けつつ左手を前方へと翳すと光の障壁が展開、次の刹那、光と光とが激突して光粒子を激しく撒き散らした。
市長と議長はそのまま互いに高速で動き、猛烈な斬撃を応酬し始める。
<<やれやれ、貴方はもう少し計算の出来るかただと思っていたのですけど>>
女の念話が、ケーナの個人領域に響いた。
馬車から女が一人、勢いよく宙へと跳び出し、ケーナの眼前へと異国の衣をふわりと広げながら軽やかに降り立った。
<<そんなにわたくし達が信用できませんでしたか? ……まぁそれはごもっともですけど、でもね? 赤帽子の側についても、明るい未来は訪れませんわよ? きっと苦難と厄介事の連続ですわ>>
艶やかに青く長い髪を靡かせ、起伏豊かな丸みを帯びた線を、大陸の東方諸国に属する民族の衣装の薄絹に浮かび上がらせる女は、深海にも似たサファイア色の瞳を細めてケーナへと艶然と微笑みかけてくる。
<<ですが、まだ取り返しはつきます。過ちは正せます>>
タァーンと呼ばれる地域のドレスを身に纏う女――ホン・ファは右手で抜き身の曲刀の柄を握り、左手の指で鋼の刀身の腹を撫でつつ語る。
<<小戦姫ケーナ・イリーネ、貴方が家族や友人との安穏とした生活を守りたいのなら、その剣の切っ先をあの赤帽子の背中へと突き刺すべきです。どうですか? 今からでもわたくし達と手を組んで、夢想家ユナイト・ロックを討ち果たしませんか? そうしたら、一度はわたくし達と敵対した事は水に流しましょう。以前に屋敷で貴方にお話した条件のまま、貴方を雇用いたしますわよ、いかがです?>>
■状況解説
市長ユナイトはケーナさんの家族と友人の身の安全を確保すべく人を手配した後、ケーナさんと共に議長タオ・ジェンを討つべく機会を窺いました。
タオ・ジェンに隙は少なく、襲撃を行う事は困難でしたが、唯一彼の議長として出席せざるをえない夜会の帰り道は守りが手薄となっていました。
市内であり、人の目につく危険性はありましたが、他に好機は無さそうであったので、市長ユナイトは襲撃を決行、OPの状況となりました。
■変装
ケーナさんが参加している事を極力秘密にする為に、市長ユナイトは変装用の帽子と度無しの色付眼鏡、ローブを用意しました。
プレイングに「変装用品はつけない」と明記しない限り、今回のリプレイ中ではそれらの変装品を身に着けている扱いとなります。
(なお身に着けていてもタオ・ジェンとホン・ファには、ホン・ファの術で無力化されなかった時点でケーナさんだなとバレています)
■作戦目標
ホン・ファの討伐ないし無力化、あるいはユナイト・ロックの討伐ないし無力化
■敵あるいは味方NPC
●惑乱公主ホン・ファ
議長タオ・ジェンの側近の女。
身の丈は170cm程度で女性平均よりもやや高め。
トラシア大陸でも東方に位置するタァーンと呼ばれる地域の衣を身に纏い、柳葉刀(肉厚の曲刀)を一振り手に携えている。
市長ユナイトから事前に伝えられた情報によると、優美で華やかな外見をしているが、剣術の他にも霊光を手足に纏わせての蹴る殴るの体術(崩撃)も使ってくるゴリゴリの武闘派らしい。
また虚掛けや力溜めも良く使うとか。
なお過去に縮地を使ってきた報告はあるが、アクセラレイターを使ったという目撃情報は無いらしい。
さらにホン・ファは彼女の霊圧以下の祈士を魅了し呆けさせて無力化する特殊な術を長時間広域に展開し続ける事ができるらしい(その為につけられた異名が惑乱公主だとか)
現在ユナイトの手勢を無力化されているのは、彼女の術が原因だと推測される。
なお馬車の中にも重傷を負った議長側の護衛祈士達が2名、路上に御者が1名ほど倒れているが、彼等も術の影響で無力化されている。