不屈の火炎ベルエーシュ「滅びるのが私達の運命だというのなら抗うまでよ」
現存するゼフリール島内の王国では最も古い時代に成立した国家。
伝承が確かならば、この王国は千年以上の長い歴史を誇っている。
島の南西部に位置し、国土は全体的に温暖で大半は亜熱帯に属する。
古代では樹木が多く生い茂っていた地域だったが、長年の人の営みによって森のほとんどは伐採され姿を消すか縮小された。
現在では大規模なものは、北東のイル・バノン州にフェニキス樹の大森林地帯を残すのみである。
とはいえ小規模なものならばあちらこちらに残ってはいる。
ただ、やはりその国土には草原や荒れ地が多い。小規模ながら砂漠化している地域もある。
国全体の特色としては海軍が強く、海上交易が盛んだった。
ただしトラペゾイドには劣る規模であり、異界勢力出現以降は大陸との航路が断たれ、急激な衰退がはじまっている。
大陸との交易が国の生命線である事を良く理解していた前王ハミルカルは、異界勢力を駆逐せんと世界帝国ヴェルギナからの派兵要請に応え、自ら兵を率いて遠征し、カラノス帝と共に異神皇と戦い奮戦した。
が、戦死した。
国内に残っていた第一位王位継承者であった王子は病(暗殺とも噂されている)により没し、急遽後を継いだのはまだ年若い少女である王女ベルエーシュだった。
これを支える周囲が有能であれば、ダメージはまだ少なかったかもしれないが、伝統あるフェニキシア王国の当代の重鎮達は世襲とコネによりその地位についている者がほぼすべてであり、優れた実務能力の持ち主とは言い難い者が多く、国家の政治の中枢には若干の乱れが生じている。
また、中央の目の届きにくい地方では統治者である貴族によって悪政が敷かれている、という話もフェニキシアでは珍しくない。
その為、野盗や山賊の類も国内に多く、そちらの対処にリソースが割かれて魔物や魔獣の討伐が十分に行われておらず、フェニキシア内を一般人が移動する事はかなりの危険を伴う。
それらが原因で流通が滞る事もしばしばである。
この状況下でさらにヴェルギナ・ノヴァ帝国が成立した事によりゼフリール島統一戦争が勃発、フェニキシア王国の経済・治安の乱れは深刻さを増している。
なお、女王ベルエーシュは、ヴェルギナ・ノヴァ側についた場合、例え勝利しても戦争がどこまでも続くと判断し、ゼフリールの真の独立を目指すというユグドヴァリア大公国の側に立って参戦する事を決め、大公国と同盟しヴェルギナ・ノヴァ帝国へと宣戦した。
その為、王国はヴェルギナ・ノヴァ帝国の攻勢の矢面に立たされる事が予想されている。
一連の流れにより、ゲームスタート時点では「フェニキシア王国は既に斜陽にある」とまことしやかに噂されている。
●フェニキシアを構成する州
イル・アシル州
イル・クアン州
イル・バノン州
イル・ミスタムル州
の四州からフェニキシア王国は構成されている。
以下にフェニキシア王国において代表的な都市である各州の州都を記す。
(なお州都以外の街や村も記述はされないが国内に存在している)
○18 女神港都アーシェラルド
ゼフリール島に現存する国家で最も古い歴史を持つフェニキシア王国の王都。
イル・アシル州の州都でもある。
フェニキシア王国内における一大消費地で、王国内の流通の要。
港街であり木材加工業、特に造船業が盛ん。またアーシェラルド製の家具はデザイン性・強度、共に優れていると昔から評判。
材料となる木材は北東のイルハーシスから海運により運び込まれてくる。
石材類や岩塩などは北西のベールハッダァードから河川を利用して運ばれ、農作物は西のウガリィッドから陸路で運ばれて来る。
アーシェラルド側から売り出すのは海産物の他、家具類などの加工品。ルアノール・ノヴァ等には劣るがそれなりに鍛冶も盛ん(フェニキシア王国内では一位)。
ゼフリール島土着の三民族国家の中では頭一つ抜けた強力な海軍を持つ。
ただトラペゾイド海軍と比べてしまうと各船の加速力や小回り耐波性など細かいマニアックな点で勝るが、信頼性と数とコストパフォーマンスと指揮官の質で負けるので海戦するとやっぱり敗色が濃い見立て。
以前はルアノール・ノヴァとの海上交易が活発だったが、開戦以降は途絶えている。
現在の主な取引相手はアヴリオン、リムニリマニィ、タラサリカ、ケンヌリオス・ヘリオン、ナグルファリア等。
大陸との航路は断たれているが島内交易は概ね維持している。
伝統ある故に古代から続く貴族勢力が強い。
強固な階級社会であり、貧富の差が激しい。
リムニリマニィを通じてアネモニカの銀細工やナグルファリアからの宝石類、陸路ではフィリエン金細工品など装身具の類が他都市に比べて高値で多く売れている。
ウガリッドからの機織り物も良く売れる。
上層階級ではとても華やかな文化が隆盛している。
だが、下層階級では貧困に喘いでいる者が多い。
女王が領有しているが、実際の統治は代官であるティリス伯アンテノールが行っている。
領主 フェニキシア女王ベルエーシュ
統治者 ティリス伯アンテノール
○19 天神の山河都市ベールハッダァード
ヴェルギナ・ノヴァ帝国との国境を睨む城塞都市。山脈及び大河と接する要害であり、フェニキシアの国防の要。
イル・クアン州州都。
霊鉄鉱石と石材及び岩塩が特産。
山から掘り出されたそれらは船に乗せられ、河をくだってアーシェラルドへと運び込まれている。
食料の自給率は低く、もっぱらウガリィッドら他都市からの供給に頼っている。
全体的に文治であり風流なフェニキシア人の中では朴訥武骨な気質の者が比較的多い。
街並みも華美よりも実用を重んじた造りになっている。
女王が領有しているが、実際の統治は代官であるグブラ伯ジザベルが行っている。
領主 フェニキシア女王ベルエーシュ
統治者 グブラ伯ジザベル
○20 海神と森の城都イルハーシス
アヴリオン共和国を北東に睨む海と森の街。
イル・バノン州州都。
特産はフェニキス樹と呼ばれる、呪術的特性を帯びさせやすい木材。
ガルシャのボスキと同様だが元々はこちらが本場。
太陽炭も盛んに作られている。
これらは海運を利用してアーシェラルドに大量に運び込まれている。
北方にフェニキス樹の大樹海が広がっており、陸路から侵攻するのは難しくなっている。
王国の北東防衛の要。
ただこちらはベールハッダァードと違って、華美さも伴っている爽やかな街並みとなっている。
住民は陽気な者が多く、吟遊詩人が多い。
美人が道を歩いていると大体ナンパされる。
フェニキシアの特色に漏れず海軍が強い。
領主・統治者 イル・バノン侯ハンノ
○21 豊神の湖畔城都ウガリィッド
フェニキシア王国辺境の農業都市。
イル・ミスタムル州州都。
特産は機織り物及び農産物や畜産物。
アーシェラルドやベールハッダァードの食料流通を支えている。
またウガリッド産の絹などの布地は質が良い事で昔から有名で王都の上流層から根強い人気がある。
付近に大きな河川は無いが、巨大な湖があり、そこから飲料水や農業用水を調達している。
統治が良好な頃はのんびりとのどかな所だったが、近年では山賊や野盗、魔物や魔獣の被害に悩まされている。
領主・統治者 イル・ミスタムル侯アンムラピ