「フェニキシアの民達にとって良い政事をして欲しいわ。お願いねセドート男爵」
依頼主・無し
概要・自領の統治方針の決定
シナリオタイプ・内政
シナリオ難易度・普通
ステータス上限・無し
シナリオ参加条件・PCがシラハ・フルーレンである事
セドートはフェニキシア王国が南部、イル・ミスタムル州に存在する村である。
海とも見紛う巨大な湖ミスタムルの付近に位置し気候は温暖。セドートでは早ければルアシス・ヴェルガン(3月)には麦が収穫され始める。
年中暖かいが、寒暖の差は少なく、砂漠ほどに気温が上昇する事は少ない。気候的には非常に過ごしやすい土地である。
さらにセドート村は古代より整備されているミスタムル湖から引かれる水路と、それによって行われている灌漑によって土壌が非常に豊かだった。
その為、農業がとても盛んで、面積あたりの収穫量は島内でもトップクラスを誇る。
村の農産物の中でもとりわけ主要な地位を占めているのは小麦だ。
そしてこの時代のフェニキシアにおいて、農村の税は金銭で納められるものもあったが、産物によって納められる物納が大半だった。
その為、収穫時期のセドート村の領主館倉庫は、大量の小麦で溢れかえる事となる。
フェニキシアの農村の領主達の現金収入の多寡は、どれだけの量の産物を税として集められるか、その収集能力で決まる部分は大きかった。しかしそれと同等に、あるいはそれ以上に、集めた産物をどのように活用するかで決まる部分もまた大きい。
故に領地の財政は、実りの豊かさや税率のみならず、領主や代官の商いの才覚によっても大きく左右されたのだった。
●
セドート村にある領主の館。
その執務室の机の前にて、黒縁の眼鏡をかけフワフワとした赤色の癖毛を長く伸ばしている若い娘が穏やかな口調で言った。
「フェニキシアの諸侯にはきたる戦いの際に、兵を率いてフェニキシアの旗の下に馳せ参じる事が王家より期待されています。大変でしょうけど……それが王国を構成する貴族の義務なのです」
王家から諸侯へと求められている事の第一はそれなのだと眼鏡娘は言った。
彼女の名はフラム・ハッダート。
最初のうちは不慣れだろうからとフェニキシア王家、つまりベルエーシュから派遣されている家宰(補佐官)である。
ベルエーシュからシラハへと宛てられた紹介文に拠るなら、フラムは文官としての仕事は丁寧で堅実であるらしい、気が弱くて相手に強くでられると流されやすいのが珠に傷との事だったが。
「男爵閣下は祈士としてご経験豊富でいらっしゃいますから、私などよりも遥かによくご承知の事かとは存ずるのですが、敢えて前提として述べさせていただきますと、現代の戦場において兵とはすなわち祈士です」
祈士の前では祈刃を振るえない一般の兵は無力に等しい為、戦争の兵といえば主力となるのは祈士である。
「そうなると必然、できるだけ大勢の祈士を揃えて率いる事が領主には求められています。ですが……祈士の運用には莫大な費用がかかります」
新品の祈刃は正規品ならば一本500タラント程度するのがフェニキシアにおける相場である。
王都アーシェラルドの一人前の職人の一か月分の賃金平均がおよそ30タラント程度であるから、一般人の月収およそ17ヶ月分である。
この祈刃を用意するだけでも安くない出費だが、さらに祈刃はメンテナンスの必要がある為、その経費や職人にあてる給与も発生する。
(なおセドート村にも人々から精神エネルギーを収集し『祈霊石(ピエドラ・ルエゲン)』に充填したりメンテナンスする為の施設と魔法技師が存在しているが、その維持費は村の財政をかなり圧迫している)
しかも祈士は需要が高い為、祈士本人の給与相場も高い。
その為、領主達が大勢の祈士を用意し率いる為には莫大な金額が必要となる。
「大人数の常備祈士軍を編成する事は現在のセドート村の経済規模では難しいですから、普段は一人か二人を領主の正規祈兵として雇用する程度にしておき、戦の折りにはアヴリオンのアドホックなどから傭兵を一時的に雇って、率いる人数を増やすのが良いかと思います」
ただそれでもかなりの出費になるのだとフラムは言う。
「その費用を賄う為には、領地からの収入をしっかりと確保する必要があります」
だから領主達は資金が必要で、フェニキシアやユグドヴァリアの民達が重税に喘いでいる理由の一端であった。
「ヴェルギナ・ノヴァ帝国との戦いに勝利し祖国フェニキシアに安寧を、ベルエーシュ女王陛下に栄光をもたらすべく、セドート男爵閣下には領地運営からお励みになっていただきたいのです。そうして多くの兵を集めご参陣なされれば、女王陛下はセドート男爵の事を必ずやご評価なされるでしょう」
そうして戦で功績を上げられれば、さらなる領地獲得、陞爵も夢ではないと、柔らかい笑顔を浮かべてフラムは述べる。
「ですので、男爵閣下にまずお決めいただきたいのは、セドート村の税率をどの程度に定めるか、という事ですね。これは規定などはなくまったくの男爵のご裁量でお定めになる事が可能です。ただ、民達が生活できないようなあまりにもな重税をお取り立てになるとさすがに王家から咎められます」
あまりに酷いとそれを理由に領地を取り上げられてしまう事もあるらしい。それで実際に領地を取り上げられた貴族というのは、フェニキシア史上においては記録にあまり無いらしいが。
「フェニキシアでは収入に対して様々な税を合計して6割程度かけるのが一般的です。民達の生活が悲惨な事で有名なユグドヴァリアなどと同程度ですが、あちらと違ってフェニキシアの土は豊かですので、我々が6割を取ってもそれだけならフェニキシアの民達は文明人として暮らしてゆける程度の収入は、一生懸命に働いて病気や魔獣や盗賊などの不幸に見舞われない限りは、残るそうですよ」
7割取ると暮らしはとても厳しく、8割ともなると土地を捨てる脱走農民も出始めるらしいですが……とフラム。
なおシラハが噂で聞いた限りでは、トラペゾイド連合王国は平均して5割、ガルシャ王国(ヴェルギナ・ノヴァ帝国)は平均して3割程度の税率であるらしい。
「我々王家に仕える人間としては7割の税を上手い具合に民達から不満がでないように取り立てていただいて、その収入を元にフェニキシアの為に軍備を強化していただきたいです。ただ……」
フラムは言葉を中断し、青色の瞳を向ける先をシラハから外して宙に彷徨わせた。
少しの間の後、眼鏡娘は再びシラハへと瞳を向け桃色の唇を開く。
「……ベルエーシュ女王陛下は戦の際に連れてこれる兵数は少なくなっても良いので、あまりフェニキシアの民達に負担のないようにしてやって欲しい、とのおおせです」
とてもお優しく素晴らしいです、とフラムは女王を褒め称え、しかしその表情は憂いを帯びていた。
彼女は続ける。
「ですが……これも祈士として高名な男爵に私が申し上げるまでもない事だと思うのですが、戦いの基本は数です。基本的に戦争は数が多い方が勝ちます。そして帝国との戦争に負ければフェニキシアは、私達の祖国は破滅してしまいます」
なので、
「セドート男爵には良くお考えの上で、セドートの税を定めていただきたいのです」
と文官フラムは言った。
そしてその他にも領主として決めて貰いたい事が多数あるのだとも。
■シナリオ概要
領地(セドート村)の統治方針決定
●決めることその1
【領地の税率】
0%~100%の好きな範囲で定められます。
ただし低すぎると破産し、高すぎるとベルエーシュから「それはさすがに取り過ぎ!」と怒られ、低くするように求められます(『女王からの指示に逆らう』とあらかじめプレイングに明記しておかない限りは65%を超える場合は65%まで低下します)
●決めることその2
【家宰(補佐官)の人選】
現在は王家からフラムが遣わされていますが、自分で別の人間を探してきて任命する事も可能です。
家宰はシラハが領地を統治する際のこまごまとしたことの補佐の他、シラハが領地を留守にする際に統治を代行する代官の役目も兼ねます。
なおフラムは王家からシラハに対する目付けの意味も兼ねており、彼女をそのまま採用した場合、領地の様子を定期的に王家へと暗黙的に報告される事になります。
いわば王家から監視される事となりますが、統治内容がベルエーシュの意に沿っている、あるいは許容範囲の場合はベルエーシュや王家からの信頼度が向上します。
フラムではなく別の誰かを採用する場合でも特にそれだけでデメリットは発生しません。
ただし、その上で統治内容がベルエーシュの許容外のものとなった場合、ベルエーシュと王家からのシラハへの信頼度が強めに低下します。
なお特定の別の誰かを家宰として欲しい場合は「この人が家宰として欲しい」と名前を、もしくは既存のネームドではなくともある程度特徴的な人物が欲しい場合は「このような感じの人物が家宰として欲しい」とその特徴をプレイングに記載しておいてください。
それが採用可能な範囲の人物ならその人物を、不可能な場合はそれに沿ったり近しい具合のNPCが新たに見つけ出されて(新キャラが作られて)採用されます。
(希望の特徴が無い場合はどんな人物になるかは完全ランダムになります)
●決めることその3
【税として徴集した小麦の換金方法】
特別なものをプレイングで指示しない場合は家宰が自己判断で処分方法を選んで換金します。
(例えばフラムなら王家と繋がりがある商団へと相場通りの価格で売却する)
他所へと小麦を効率的に売り捌く方法の一つは、特定の良い商団と繋がりを持って彼等に売却を一定手数料と引き換えに委託する事がありますが、悪い商団に任せてしまうと逆に損をしてしまう場合がありますので注意が必要です。
●決めることその4
【領内の常備祈士の採用人数】
3人を超える数は財政負担的に現実的ではありません。
常備祈士は平時は領内の治安維持(盗賊や魔獣などの討伐や村内のいざこざの解決)に努める他、戦争の際はセドート軍の小隊長に任命して傭兵達などを率いさせる事もできます。
特定の誰かを祈士として欲しい場合は「この人が祈士として欲しい」と名前を、もしくは既存のネームドではなくともある程度特徴的な人物が欲しい場合はあるいは「このような感じの人物が祈士として欲しい」と特徴をプレイングに記載しておいてください。
それが採用可能な範囲の人物ならその人物を、不可能な場合はそれに沿ったり近しい具合のNPCが新たに見つけ出されて(新キャラが作られて)採用されます。
●決めることその5
【次の戦いが起こった際に、どれだけの兵を率いて参陣するつもりなのか】
借金してでもアドホックで傭兵を限界まで掻き集めて参陣するのか、あるいは己一人で参陣して自領への経済負担は最小限に抑えるつもりなのか、あるいはその中間にするのか、などの方針を決めておきます。
実際にどれだけの兵力を率いる事が可能になるのかは、この方針決定だけでなく、領内の税率や麦の換金方法などの成果にもよります。
セドート村の統治方針決定シナリオとなります、望月誠司です。
さしあたり領主として決めるべき事になります。
このシナリオの決定方針とその判定に基づいて、次回の戦争でシラハさんが戦場内で及ぼせる影響力の範囲とその難易度に影響します。
税金は沢山取り立てて軍備を増強した方が戦場では有利になりますが、悪影響は様々な所に波及します。
しかしそもそもに帝国との戦争に勝てなければフェニキシアの存亡自体がピンチとなります。
ご興味惹かれましたらご発注いただけましたら幸いです。