シナリオ難易度:普通
判定難易度:難しい
深く凍える闇に囲まれていた。
砂の上で燃える赤い火と、黒長衣の男が左手に握る、油が染みこんだ布が巻かれた棒の先で輝く橙色の火とが、砂の世界を知ろしめす暗黒を僅かに押し返している。
紅粉が舞い、砂漠の夜の空気が熱に揺らいでいた。
<<――確認なんだけどさ、その聞き方だとズデンカはダグヌを引き渡したくないと思ってる?>>
栗色の髪が胸元あたりまで長く伸びている、年の頃十二歳程の少女が念話を発した。つぶらな紫瞳が橙色の火光を受け煌めいている。ケーナ・イリーネだ。
黒長衣の男と商隊の長である少女が対峙するその傍らに立っていた。
僅かな間を置いてから、
<<……ええ、私の個人的な気持ちとしては、この子を引き渡したくはありません>>
返って来た言葉には驚きのような気配が混じっていた。
ズデンカとしては内心を隠せていると思っていたのかもしれない。
少年を引き渡したくないと思っているのではないか、とケーナが判断したのには理由がある。
まず第一に今回の場合、ダグヌ少年を引き渡さないメリットとデメリットが釣り合っていなかった。少なくとも現在、把握している限りの情報においてはそのように思えた。
王家をも凌ぐ権勢を誇る大貴族、ミスタムル派閥の貴族達をまとめあげるアンムラピ侯爵――これを相手に明確に対立するのは、フェニキシア王国内での商売に悪影響が発生する可能性が非常に高いだろう。
ズデンカ達はフェニキシア内を主な商売の場としているから、それは強いリスクとなる。
だから信条や心情さえ許すのならば。
計算高く強かな商人らしく利害だけで動くのならば。
少年を引き渡す事に迷いは無い筈だった。
しかし、ズデンカは先程からケーナに対し、引き渡さなかった場合の想定ばかりを話している。
引き渡せばそれ以上は何を対応する事も無いので、話す必要が無いから一方のみを話しているという可能性もあったが――
『ズデンカはダグヌを引き渡したくないが、穏便に済みそうにない事に悩んでいるのではないか』
ケーナとしてはその可能性が高いように思えた。
今後の商隊の存続に関わる重大なリスクを伴う決断を他人任せにすることもあり得ないだろう、という想定もその判断を補強した。
きっとズデンカは、彼女自身は何らかの理由によりリスクを取っても構わないと考えていて、しかし、それをすれば護衛であるケーナも一蓮托生でリスクを負う事になってしまうので、躊躇いを覚えている。
だがケーナがリスクを負う事に対し問題がないのなら、引き渡さない選択肢を選べるので――だから、戦闘に巻き込む事に対する許可確認をしているのではないか。
一連の言動はそういった心の現れではないかとケーナは推測したのだ。
そして、どうやらその予想は的中している様子だった。
<<イル・ミスタムル州の総督を敵に回すのは、とてもリスクが大きいと思うよ。それは承知している?>>
ケーナはズデンカに改めての確認をした。
すると今度の返事はすぐに返って来た。
<<はい、承知しています>>
<<どうしてそうしたいのか、聞いても良い?>>
ケーナは怯えの色を紫瞳に浮かべて――演技である――黒衣の男達の方を盗み見るように伺いつつ念話を続ける。
念話は発声による通常会話と比べおよそ十倍もの高速でやりとりされるから、僅かな時間を稼げれば意思疎通を行う猶予がある。しかし今はそれであっても余裕がある状況でもなかったから、二人のそれは急ぎの会話になっていたが。
ズデンカは率直に答えて言った。
<<……かわいそうだからです>>
ダグヌ達は領主に対し盗みを働いたという。確かに単なる罪人であるなら、哀れな事であっても処断されるのは仕方がない事なのかもしれない。
しかしズデンカが知っている内容と照らし合わせると、アンムラピ侯というのは実際にまっとうな領主ではないように思えるのだという。
民衆に対し過酷な統治を行っているアンムラピが放った追っ手に、村人達の生き死にに関わる物を持つというダグヌ少年を引き渡したくないのだそうだ。
<<ですが……アンムラピ侯と敵対する事には高いリスクがあります。ケーナが望まないなら、望んでもいないリスクを無理に押しつけたくはないんです>>
ケーナが引き渡す選択肢を望む場合、気兼ねを覚えないよう、ズデンカが何を望んでいるのかは、曖昧にしておきたかったらしい。
<<まぁ私の気持ちはバレバレだったみたいなのであんまり意味なかったみたいですけど>>
<<なるほど、わかったよ。ズデンカの方が問題ないのなら、アタシとしてもここで戦う事に問題はないかな>>
表情は怯えの演技を保ちつつも、ケーナは軽い調子で念話を飛ばした。
ケーナとしては自分よりも重大なリスクを抱えたズデンカの意向を尊重したい、というだけであって、戦うこと自体には特に問題はなかった。
<<良いのですか?>>
<<うん。ズデンカがそうしたいなら付き合うよ。とりあえずアイツらはみんな生かして捕まえる?>>
殺す判断は後でも可能である。
それよりも生かして捕らえれば何か有益な事があるかもしれない。
<<恩に着ます。生け捕りの方は……可能でしたら、で。相手も手練れのようです。危険だと感じたら決して無理はしないでください。情報は重要ですが、身の安全の方が大事です>>
生かして対象を捕らえるのは、対象を殺すだけよりも難易度が高い。殺さないよう手加減する必要があるからだ。
だからそれを成すにはかなりの実力差、あるいは何がしかの策が必要だった。
「――すみやかに決断せよ、生きるか、ここで死ぬか」
無言のまま動かないズデンカを見下ろし黒長衣が威圧するように低い声を発した。
念話といえでも結構な量の会話をかわしていたので、それなりの時間が流れている。そろそろ痺れを切らし始めたのかもしれない。
「ねえ、あの人たちの言う事聞いた方がいいよ……みんな強そうだし、戦いになんてなったら絶対勝てないよ……」
ケーナはいとけなさを残した顔に恐怖の表情をまざまざと浮かべつつ、表向きは沈黙しているズデンカへと呼びかけた。
十二歳程度に見える小柄な少女は、自らの容姿を利用し、己の腕に自信がない新米の護衛のような態を巧みに演出せんとした。
ケーナ・イリーネの特技は演技である。
己が強者であるという自覚を持ってからは普段から力量を悟られないように弱者を装う事を心がけていたから、その様子は見る者に違和感を与えなかった。強い気配が急に弱弱しい素振りを見せるのは不自然だが、元から弱い気配の者が弱弱しく振る舞うのは自然な事であるから。
もっとも冷静に考えれば、ただの十二歳の子供が護衛としてキャラバンに同行している、という状況自体が違和感の塊ではあったが、人は目の前の印象に流されやすい生き物である。
霊的気配を察知し相手の力量を推し量る能力に自負を持っている者達であればこそ――手練の祈士達であればこそ――そこを偽られると信じやすくなるという効果も作用し、眼前の三人の男女はケーナの力量には気づいていないように見えた。
少なくとも表面上では、ケーナを特別に警戒しているような様子はない。
あるいは――油断している振りをして逆にこちらを嵌めてくる手管かもしれなかったが、そこまで考えるとキリがなかった。
戦場は虚々実々の世界である。
確信できる事など一握りで、それでも躊躇わず決断しなければならない。躊躇えば遅れ、遅れれば敗れる。
知恵があっても勇気の無い人間は故に一秒以下を争う戦場で敗北する。
その点においてケーナ・イリーネは前向きというか楽観的であり、優秀だった。極限状態で争う戦士の才能がある。
かつて兄が言っていた。
『剣の奥義は心技体。心が一番上だ』
と。
心が強くなければ何も活かせない。
ケーナは自分の演技に相手は騙されているだろうという己の直感を信じ、それに己たちの生死の運命を賭して次のステップに移る。
きっとなんとかなるだろうし、外れていたとしてもその時はその時だ。
(……周りに他の祈士はいなさそう……?)
以前の賊退治では闇の中に潜んでいた祈士がいた為、ケーナは今回もそれを警戒して感覚を研ぎ澄ませさぐっていた。しかし他に祈士らしき霊的気配は感じ取れない。
ケーナに霊的気配を察知させない程の者が潜んでいる可能性は皆無ではなかったが、状況的にその可能性は低いように思われる。
「……そうですね、とても、不本意ですが……」
ズデンカが振り向きケーナと視線を合わせ頷いた。
男達の気配が少しだけ緩む。
瞬間、ケーナの姿が掻き消えた。
「え?」
黒頭巾の女が気づいた時には、彼女の視界一杯に、霊光を纏った鋼鉄の握り拳が迫り来ていた。
凶悪な衝撃が爆裂した。
女が見ている世界が凄まじい勢いで回転する。
星空と炎光に照らされる砂地と、暗黒とが高速で切り替わってゆく。
黒布のローブに豊満な身を包む若い女はもんどりを打って砲弾のごとく吹き飛んでゆき、僅かな滞空の後落下激突、砂煙をあげながら砂上を転がってゆく。
ケーナが先程まで立っていた地点がくぼみ、大量の砂が噴き上がっている。踏み込みの力によるものだ。
弾丸の如く飛び出し鋼の拳を振り抜いた十二歳程度に見える小柄な少女は、さらに砂地を蹴り、栗色の長髪と茜色のミニスカートの裾を靡かせつつ猛烈な速度で前へと駆けてゆく。右手を肩越しに背後へと伸ばし、革ベルトをたすきがけにして皮鞘ごと負っている細身の片手剣の柄を掴む。
転がる黒頭巾の女が仰向けに止まった。
ケーナは地縛の霊気を連続して解き放ちつつ踏み込みざま抜刀、鞘走りの音を響かせ、闇に弧を描く剣光を走らせつつ振り下ろす。
極限まで精神を集中させ放たれた鋼の閃光は一拍のうちに二連に走り、仰向けに倒れている女の右手と左手の指が親指を除いてまとめて切り離した。一瞬の早業だ。
――本来、可能ならばケーナは女から祈刃を奪って無力化したかった。しかし、黒頭巾女はまだ両手剣を背の鞘に納めたままで抜き放っていなかった。
なまじ手に持って構えられているよりも、この状態の方が剣を奪いにくい。
祈刃は奪えそうにないのでそれを握る指を奪った。
八本の指が砂に落ち、悲鳴と共に鮮血が噴出して、砂を赤黒く染め上げてゆく。
背後、空気を裂く唸りをあげて何かが接近してきている気配がする。
正体不明の物体に対し最小限の動きだけでかわさんとするのはリスクが高い。反射的にそう判断したケーナは振り向きつつ横に大きくステップするように跳ぶ。
紅蓮に輝く車輪のような輪が闇を裂きながら飛来しケーナが先程まで立っていた空間を貫いた。
高速で回転する松明だ。
瞬間、大気を揺るがすような轟音が鳴り響く。
ケーナが砂上に着地すると同時、眩い閃光が前方より唸りをあげ迫って来る。破神剣。
栗色の髪の少女は咄嗟にかわさんと身を捻る。
凶に輝く光は、ケーナを逃さず、その脇腹へと喰らいついた。
小柄な少女の身を包む薄茶色の革鎧がひしゃげ、急所を守るように内側に張られた薄手の霊鋼片が歪む。凶悪な衝撃がケーナの腹部より貫通してきて臓腑を抜けて肺に達し衝撃に息が詰まった。激痛が脇腹から湧きあがるように広がってゆく。
光は一発だけではなかった。
さらに連続して眩く凶悪な光が飛来する。一撃の衝撃に小柄な少女はよろめきつつも直撃のみは避けんと今度は左腕のガントレットを翳した。
巨大な鉄塊を叩きつけられたような衝撃。左腕に痺れるような鈍痛が走る。
轟音がさらに連続して鳴り響いている。闇の中に光が瞬いている。ズデンカと覆面男が破神剣を撃ち合っていた。覆面男は地霊の腕に脚を縛められ、その中心より四クビト(およそ2メートル)を超えて移動する事を封じられている。
黒長衣の男も同様の状態にあったが、しかし彼は己を縛めていた地霊の腕を引き千切って駆け出した。
ケーナもまた黒長衣の男へ向かい機先を制すべく駆ける。
黒長衣の男は砂を蹴りつつ身を前傾に右手に曲刀を構える。月光を受け反りの深い刃が冷たく輝いた。
<<よくも欺いてくれたな! 楽に死ねると思うな!>>
男から怒りが込められた念話が届く。ケーナは微笑した。
<<悪いんだけどこっちも護衛対象は守らないといけないからねー>>
軽い調子で答えつつ安物の細身剣を右手に踏み込む。
剣の間合いに入る直前、前傾姿勢で駆ける男の身がさらに地に倒れ込まんばかりに低く沈み込んだ。
同時、振り下ろされた手から曲刀が手放され、ケーナの顔面目掛けて迫り来る。投擲。
さすがに予想外であった攻撃に驚愕を覚えた紫瞳の少女はつぶらな目を見開き、咄嗟に身を捻りつつ頭部を反らす。
回転する剣が唸りをあげ空間を貫き、ケーナの頬を掠めながら闇を貫いてゆく。
辛くも一撃をかわしたケーナだったが、その時には既に黒長衣の男が至近距離まで入り込んできていた。
地と水平に這うような態勢、伸びあがりざま男が腕を振るう。その手には月光に煌く鋭い短刃がいつの間にかリバースグリップで握られていた。
刃が閃光のごとく走り少女の上半身を覆う革鎧と脚を守る革長靴の間、黒いレギンスに包まれた太腿の位置を薙ぎ払う。
冷たい鋼が黒に喰い込むかに見えた瞬間、ケーナの姿が掻き消えた。
刃が何も無い空間を突き抜ける。少し離れた位置の砂が吹き散らされ、栗色の長髪と茜色のミニスカートの裾を靡かせる少女が姿を現した。縮地だ。刹那の間に瞬間移動したが如く後方に大きくバックステップして間合いを外したケーナは、着地して膝を曲げ力を溜めると、撓んだバネが反作用で勢い良く伸びあがるように、再び前方へと飛び出した。
風巻く唸りと共に迫り霊光を纏わせた細身の剣を男へと向かい振り下ろす。
長身の男が逆手に掲げた短刀と、小柄な少女が振り下ろしした細身剣が激突、その見た目から当然のように導き出される結果とは真逆の結果が巻き起こる。
黒長衣の男が力負けしたようにたたらを踏んで後退し、少女は霊気を細身の剣に収束させ研ぎ澄ますと、さらに破壊力を増した一閃を男の脚を狙い放つ。
崩撃からの力溜めの一撃が、男の腿に炸裂し、ケーナの手に予想とは異なる硬い感触が伝わった。
黒長衣の下に金属――鉄片かあるいは鎖輪のようなもの――が仕込まれている。
ケーナは一度後方にステップして間合いを広げると、背後から体当たりするように突撃してきていた気配――黒頭巾女へと振り向きざま細剣を一閃し、その右の膝頭へと霊鋼の刃を炸裂させた。
膝を砕かれた女がケーナとすれ違いざまにバランスを崩し、砂漠にうつ伏せに転倒してゆく。
黒長衣の男が裂帛の気合と共に踏み込み短刀を鋭く振り上げ、振り下ろす。弧を描く刃が、体を捌きかわさんとしたケーナの右の太腿を掠めてレギンスと肉を斬り裂き、喉元を狙って振り下ろされた刃が、少女が痛みを堪えつつ後方に大きくステップした事により空を斬る。
ケーナは左手に細剣を持ち変えると腰ベルトから下げているメイスを右手で引き抜いた。
相手に装甲があるなら、打撃武器の方が有効だ。
彼方ではズデンカがルツェルンハンマーの間合いギリギリのところで、黒覆面男の周囲を円を描くように機動している。
ケーナが提案した安全優先の作戦通り、攻撃は牽制程度に留め、防御重視で立ち回っているようだ。覆面男へとあまり有効打は与えられていないが、自身へのダメージも最小限に抑えている。
ズデンカの戦況を確認したケーナは重撃祈装を発動させた。
祈刃より身にもたらされる霊力を操作し変質させると赤い血に濡れ始めた腿の痛みを堪えて再び砂を蹴りつけ前方へと矢の如く飛び出す。
一瞬でメイスの間合いへと踏み込むと左下段から逆袈裟に振り上げる。
颶風の如き唸りをあげて鉄塊が空間を薙ぎ払う。黒長衣男は即座に後方に大きく飛んで一撃をかわす。
が、ケーナは直感的に男が防御を諦め回避を選択するであろう事を読んでいた。男の後退にぴたりと合わせ前方へ踏み込むと、男が着地するよりも前に雷光の如くメイスを切り返し、膝頭目がけて振り下ろす。
男が着地すると同時に、鉄塊が男の右膝に炸裂、金属と骨とが砕ける鈍音が鳴り響き、男が態勢を大きく崩す。
ケーナはさらに間髪入れずメイスに霊気を収束させ、その柄頭を男の胸元へと叩き込んだ。
崩撃の衝撃が爆裂し男が吹き飛んでゆく。仰向けに転がる。
ケーナは男を追いかけて踏み込みつつメイスを高々と振り上げる。霊力を極限まで槌頭に収束させ、立ち上がらんともがく男の右肩を目がけ、渾身の力を籠め振り下ろす。
男が咄嗟に逆手に握った短刀を眼前に掲げた。メイスと霊鋼の刃とが激突する。
黒長衣の暗殺者が裂帛の咆吼をあげたが、パワーの差は、覆らなかった。
鈍い音を響かせながら、メイスに強打された短刀が勢いよく押し込まれ、峰が男の右腕に喰い込んだ。刀身は鎖越しに肉にも喰い込み、骨までをも砕いてゆく。
男は必死の形相で短刀を左手に持ち替え、殺気を眼光から迸らせつつ反撃の刺突を繰り出す。
ケーナは右斜め前方へとメイスを振り上げつつ身を捻りながら踏み込んだ。すり抜けるように鮮やかに刺突をかわすと、メイスを落雷の如く袈裟に振り下ろす。
鉄塊が男の左肩に炸裂し、骨が砕ける音が鳴り響く。
男の左腕から力が抜けるのを見て取ったケーナは、左の細剣を手放すと金属籠手に包まれた左手を素早く伸ばした。
短刀の柄を掴み、脚部に霊力を集中させ男の顔面へと前蹴りを放つ。
革のロングブーツの底に顔面を蹴り抜かれた黒長衣の男が吹き飛び、砂上に転がった。
ケーナは左手に残った短刀を回転させて持ち直すと、メイスを腰ベルトに戻し、先程手放した細剣を拾い上げる。
それから覆面男と攻防を繰り広げているズデンカの援護に向かうと、彼女と共に覆面男へと猛攻を加え、これを打ち倒して祈刃を奪い、無力化する事に成功したのだった。
●
戦後、応急手当てを終えた後、
「この後、どうする?」
ケーナは捕縛した暗殺者達の処遇をどうするかズデンカへと問いかけた。
「ダグヌの謁見の申し出手続きに合わせて王都のお役人に引き取っていただきましょう。アーシェラルドには幸い伝手があります」
「わかった」
役人への身柄の引き渡しは面倒そうだったが、ケーナはそれにも付き合う事にした。
ズデンカと商団を守る為なら証言する事は厭わなかった。
「有難うございますケーナ」
「感謝しますだ」
ズデンカとダグヌの二人から笑顔で礼を述べられる。
しかし翌朝、ケーナ達が目を覚ますと暗殺者達は全員事切れていた。
どうやら奥歯に自害用の毒を仕込んでいたらしく、それを用いて自ら命を絶った様子だった。
「すごい忠誠心だね。それとも他の理由なのかな……」
雇い主に対する恐怖や人質をとられている、あるいは暗殺者としての職業意識から来るものなど自害した理由は色々と考えられた。
その後、王都に辿り着きケーナ達は役所へと赴き役人へと訴えた。
ケーナも役人から様々に事情を聞かれたが、起こった一通りの事実を説明するとやがて解放され、ズデンカから危険手当の追加報酬を受け取って、今回の旅の護衛依頼を無事に終えたのだった。
成功度:成功
獲得実績1:ダグヌ少年を助けた
獲得実績2:砂塵の暗殺者達を全滅させた