アドホック傭兵・北面の神将殺しゲオルジオ「さぁ勝負の時間だ」
アドホック傭兵・コンドッティエーレ・ヴァレスタイン「――! ゲオルジオを止めろ! お前ならやれる!! そうすりゃフェニキシアは弱兵だ! まだ持ち直せるッ!!」
依頼主・ボスキ公ルカ(ヴェルギナ・ノヴァ帝国)
概要・全軍の勝敗を分ける一騎討ち
シナリオタイプ・戦闘
シナリオ難易度・非常に難しい
主な敵NPC・北面の神将殺し「ゲオルジオ」
関りが深い敵NPC・フェニキシア女王「ベルエーシュ」、グブラ伯「ジザベル」
関りが深い味方NPC・ボスキ公爵「ルカ」、コンドッティエーレ「ヴァレスタイン」
ステータス上限・攻撃&防御150
シナリオ参加条件・無し
光陽歴1205年の初夏の某日の事だ。
アヴリオン共和国に本拠を置く祈装傭兵組織アドホックにて、ヴェルギナ・ノヴァ帝国からの参戦要請の依頼が出ているのを知った貴方は、この依頼を引き受ける事にした。
アヴリオンから次元回廊を渡り、帝国南東部に位置する森の城塞都市ボスキ・デル・ソルへと向かう。
ボスキ市にて傭兵として公爵軍に加わった貴方は、同じくアドホックから派遣された熟練の傭兵隊長『コンドッティエーレ』と呼ばれる男が指揮する傭兵隊へと配属される事となった。
公爵軍の兵舎と都市近郊の森で彼等と共に数日、訓練を行っていると、至急の出撃命令が発せられた。
なんでも、フェニキシア王国の女王ベルエーシュが軍を起こして帝国へと迫って来ているらしい。
ボスキ公爵ルカ・オノグリアはこれをガラエキア山脈で迎撃するつもりなのだそうだ。
「陸のフェニキシア兵は弱い。これといった名将もいねぇ。今回は稼ぎ時だぜお前ら」
出発前、枯草色の金髪を持つ長身の傭兵が、獰猛な笑みを浮かべ粗野な口調で言った。
彼が『コンドッティエーレ』肉厚の大剣使いヴェンツェル・ヴァレスタインである。
一兵としても強者だと言われていたが、それよりも指揮能力の高さに定評がある傭兵だった。
名高い傭兵隊長の言葉に「ちげぇねぇ」と屈強な――けれど汚らしい恰好をした――中年傭兵が言葉を返す。
「フェニキシア側の軍団長は即位したばかりの女王なんだろ?」
その疑問に対しまた海賊のような恰好の別の女傭兵が頷いて、
「ああ、十五になったばかりの小娘だって話だよ。実際の指揮は他の将が執るんだろうけど、その将もパッとしないんじゃ軍がまとまる訳がない。楽勝だね」
口々に言う傭兵の男女に対しヴァレスタインがまとめる。
「まぁビビルよりゃマシだが、油断はするなよお前ら。奢りこそが死神だ」
「わかってらぁなコンドッティエーレ。何年この稼業やってると思ってる」
「戦場じゃ何が起こるかわからねぇ。相手が兎だろうが全力で狩るさ」
ベテラン揃いらしき傭兵達は獰猛に笑った。
貴方を含めた傭兵隊は意気高く迅速に準備を整え、同じく素早く準備を整えたボスキ公軍と共に城塞都市ボスキ・デル・ソルより出撃し、ガラエキア山脈を目指したのだった。
●
ガラエキア山脈は荒涼たる岩山である。
所々に細々と草木が生えているが、大部分は赤茶けた土と岩が剥き出しになっている。
山裾の道は広めだったが、奥へゆく進むほどに道は細く険しくなってゆき、始めは四列縦隊だった隊列もやがては一列の縦隊となってしまった。
それでも貴方達ボスキ公軍は非常に素早い速度で行軍した。
総司令であるボスキ公爵は敵軍よりも速くに山脈内の要衝となる地点を抑えたいようで、まさに強行軍たる凄まじい速度で進撃した。
それでも一人の脱落者も出なかったのは、傭兵隊とボスキ公正規軍、双方共に良く訓練された兵達である事を示していた。また下士官達の指揮能力も一定水準以上にあると見て良いだろう。
そんな行軍の甲斐あってか、ボスキ公軍は女王軍がやってくるよりも随分と前に山脈内で重要地点となる狭隘の道、及び、その周辺の高所を抑える事に成功した。
祈士達に疲労は溜まっていたが、稼いだ時間により一日ゆっくりと休息する時間が取れた。
その為、女王軍がやってくる頃には兵達は万全といえる状態にまで回復していた。
「……おかしくねぇか?」
斜面の上で組んだ隊列の中、コンドッティエーレが眼下より真っ直ぐに迫って来ている女王軍を眺め眉を顰めた。
「あぁ? 何がだ大将?」
「お前ら、このままの態勢でぶちあたるなら絶対に俺達が勝つとは思わねぇか?」
「まぁそうだな」
「油断は禁物だが、さすがにこれは負けねぇな」
周囲のベテラン傭兵達もまた頷く。
「だよな。誰が見てもそう思う。じゃあ、なんでフェニキシアの連中は真っ直ぐに死にに来てるんだ? あいつら、猿なのか? いや、猿だって逃げるだろうよ。連中は猿以下の脳みそしか持ってないのか?」
コンドッティエーレが疑問を呈すると、ベテラン傭兵達は顔色を変えた。
「確かに……妙だな」
「不味いぜ。正規軍の連中は?」
「気づいてねぇな。隊列に締まりがねぇ」
「言っといた方が良いんじゃねぇか」
「だが、何をどう注意すんだよ?」
「わからねぇ」
「嫌な予感がしますので注意してください、どっから何が来るのかはわかりませんが、ってか」
「それじゃ正規軍は傭兵の言う事なんざ信じねぇだろ、臆病者と笑われるのがオチだ」
ざわつく傭兵達に対して金髪の傭兵隊長は厳しい面差しで告げた。
「正規軍は諦めろ、もう遅い。俺達だけで警戒しろ。お前ら、ここは死地になったと思え。どっから何が来ても対応出来るように気を張っとけ。絶対に一筋縄じゃおわら――」
その言葉が終わるよりも前に、背後より百の稲妻が炸裂したような爆音が轟いて、ボスキの兵達が吹き飛んだ。
●
<<なんだっ?!>>
<<後ろ! 上だッ!! 攻撃されてるッ!!>>
帝国軍が陣取っている高所よりもさらに上となる高所から破神剣が雨あられと降り注がれていた。
<<連中、どっから湧いて出てきやがったッ?!>>
隊を分けて密かに回り込んで来たのなら、ボスキ公軍の斥候が決して見落とさない筈だった。
だが、どういう訳か、フェニキシア兵達はその目を掻い潜って、突如として帝国軍の後背の高所へと出現していた。
そして一斉に破神剣を撃ち降ろし閃光の雨をボスキ公軍の背中へと降り注がせている。
それに気づいたボスキ公軍の兵が背後へと盾を向ければ、正面のフェニキシア軍が猛然と加速して迫りそちら側からも破神剣を猛射し始めた。
破神盾は向けている方向からの攻撃に対しては鉄壁の防御力だったが、一度に一方向からの攻撃しか防げない。
奇襲からの完璧な挟撃射撃を受け、大混乱の中、次々に帝国側の兵が撃ち倒されてゆく。
<<――ボスキ公からの命令が来たッ!! 俺達で後ろの敵を排除するぞッ!! ついて来いッ!!>>
コンドッティエーレの念話が傭兵隊の念話領域に響き渡る。
ボスキ公爵はさすがというべきかこの混乱の中でも即座に状況を把握し、対応をヴァレスタインへと念話で指示してきたらしい。
事前の注意喚起により比較的混乱が少ない貴方が所属する傭兵隊の面々は後背の斜面へと向かう。
<<敵は、百はいるか?!>>
<<畜生! 見張りはマジで何やってたんだよ?!>>
<<文句は後だ! 突っ込め!! 前に出れば後ろからの攻撃は届かんッ!!>>
<<オオオオオオオッ!!>>
傭兵達が敗勢を立て直さんと、破神の閃光に撃たれながらもそれを掻い潜って斜面を駆け登ってゆく。
傭兵達の中には破神剣で撃ち返す者もいたが、フェニキシア側は前列に破神盾を使う兵を並べていて無効化されてしまっていた。
やはり接近して仕留める以外に道は無いようだ。
傭兵達が間合いを詰めてゆくと先頭を駆けていた三人の傭兵の首が刎ね飛んだ。
<<ナニィっ?!>>
緑色の外套に身を包んだ青年が長剣を手に駆けていた。
瞬く間に三人の傭兵を斬り倒した茶髪の青年は、風の如く駆けながら長剣を嵐の如くに振るい、さらに次々と傭兵達を斬り倒してゆく。
<<こっ、こいつっ?!>>
<<ゲッゲッゲッゲオだぁああああッ!!>>
<<ゲオだとっ?!>>
<<神将殺しのかッ?!>>
有名な傭兵だった。
北面の神将殺しゲオルジオ。
世界帝国ヴェルギナの皇帝カラノスの下で活躍した北面傭兵団と呼ばれた傭兵団のエースの一人で、かつての異貌の神々との大戦では異神の将軍を討ち取る程の活躍を見せたという。
彼もまた現在はアドホックに所属している傭兵だった筈だが、依頼によっては敵味方に別れる事もあるのがアドホック傭兵の世界である。今回は彼は敵方についたらしい。
このゲオルジオの出現により、傭兵達の突撃の勢いは完全に殺されてしまっていた。
既にゲオルジオの周囲の傭兵達は斬り殺されるか逃走に入ってしまっている。
――敗北する。
その四文字が胸をよぎった時、コンドッティエーレの念話が響いた。
<<――!>>
彼は貴方の名を呼んだ。
<<ゲオルジオを止めろ! お前ならやれる!! そうすりゃフェニキシアは弱兵だ! まだ持ち直せるッ!!>>
彼はまだ諦めていないようだった。
貴方ならゲオルジオに勝てると思っているらしい。
他の傭兵達はゲオルジオの武威の前に完全に腰が引けていた。
命令に従って立ち向かうなら恐らく一騎討ちとなるだろう。
――自分は神将殺しと呼ばれる超一流の傭兵に勝てるのだろうか?
そんな疑問を抱きつつも貴方はゲオルジオを迎え撃つべく駆けた。
■状況
猛威を振るっている敵の傭兵ゲオルジオを討つ、あるいは撃退する事が目標となります。
他のフェニキシア兵の注意は味方の傭兵が惹きつけるので攻撃はPCへは飛んできません。
ただし、味方の傭兵はゲオルジオとは戦おうとしません。
PCとゲオルジオの一騎討ちとなります。
天候は晴れ、時刻は昼、地形は赤茶けた土の斜面です。
所々に大岩が転がっています。
ゲオルジオは北側、高所となる方向より駆けてきています。彼我の距離は20m程です。
――PL情報――
PCがゲオルジオを破った場合、その後は味方傭兵が奮起し高台のフェニキシア兵を一掃します。
それによりボスキ公軍も態勢を立て直し正面のフェニキシア軍を撃退する事が出来ます。
PCが敗れた場合、傭兵隊は敗走し、ボスキ公軍は挟撃から撃破されます。
――
■敵戦力
●北面の神将殺しゲオルジオ
長剣と革鎧と緑色のマント、手甲と脛当てで武装。予備に短剣を持つ。
『神将殺し』の他にも『暴風』の二つ名を持ち、凄腕として傭兵業界では有名な傭兵。
掻き消えるような高速移動とフェイントからの連撃を得意とする。
○略歴
元北面傭兵団のエース。
かつての大戦では非常に活躍し異神の将軍を討ち取る程の功績をあげました。
しかし皇帝の急死後、権力者達の後継者争いによって功績は報われずに北面傭兵団は解散となってしまい、仲間の一人(ズデンカ・ノヴァク)の故郷であるゼフリール島で仲間達と共に商団を起こしました。
しかし彼等は戦闘の才能はあっても商才は微妙だったのか、その商売もあまり上手くいっておらず、商団の運転資金の補填の為にゲオルジオは再び傭兵として戦っています。
――PL情報――
カラノス帝に雇われていた縁からアテーナニカとも顔見知りでそこそこ好意的ですが、商団の商売上の利害関係とベルエーシュの境遇に同情的な為、現在はフェニキシア王国側について戦っています。
初期状態のPCに総合力では若干劣りますが、それに肉薄する能力を持つ非常に強力な祈士です。
プレイング(動き方)にも容赦が無く殺意が全開ですので(PCを強敵であると見抜くので、一手目から全力で殺しにきます)対応を誤ると敗北する可能性が非常に高い相手です。
―――――――
○ゲオのステータス(PL情報)
攻撃力140
防御力110
攻撃レート-5
防御レート-10
最大生命力500
最大精神力130
最大機動力30(PCと同様に行動後も再移動可能能力持ち)
最大行動力3
使用ダイス1D100
超集中以外の全ての猟技を使用、スキルの【閃光弾】【紫電】【猛撃】を使用する
○ゲオのプレイング(PL情報)
1ラウンド目に、
猟技【アクセラレイター】→スキル【閃光弾】→猟技【縮地】→猟技【虚掛け】→猟技【力溜め】→猟技【力溜め】→【縮地】&攻撃(スキル【紫電】&【猛撃】発動)→【縮地】→攻撃→攻撃→攻撃
をそれが可能な状態の時には使って来る。(合計六回行動力分の猛攻を開幕で一気に叩き込んでくる)
モーション的には、
機動しつつ【閃光弾】を放ち、炸裂した瞬間に【縮地】で真正面から一瞬で間合いを殺して突撃して来て、剣を振り上げる動作でフェイント(【虚掛け】)を入れつつ、一瞬で身を沈めながら斜めに【縮地】で踏み込み、すれ違いざまに【力溜め】×2によるダメージ3倍の下方からの逆袈裟の斬り上げで装甲の無い箇所を狙って来る。
後ろに抜けた後にまた即座に反転して【縮地】で後背、ないし側面めがけて突っ込んできて、振り下ろし、切り上げ、突き降ろしの三連撃を繰り出す。
まだPCが生きている場合はその後のラウンドは【虚掛け】を織り交ぜながら秒間三連撃の多段斬撃を主体に仕留めにかかってくる。
また敗色が濃厚になると【縮地】を連発し、フェニキシア兵が作っている盾の壁の向こうへと逃走しようとする。
一騎討ちで全軍の勝敗が決まる戦場へようこそ、望月誠司です。
最後までお読みくださり誠に有難うございます。
今回のシナリオですが、敵が初期状態のPCに肉薄するくらいに強いです。(生命力がPCよりも結構低いが他はほぼ同等)
敵は初手からスキル全開でPCを殺しにかかってくるので上手く対応しないと普通に負けます。
PL情報を活用するなどして上手くプレイングで有利を作り撃破していただければなと思います。
今回のシナリオはPBWに慣れてない方だとちょっと難しいかもしれません。なのでシナリオ難易度は「非常に難しい」となっております。
「ルナティック」よりは普通に勝てる難易度ですが「難しい」よりも危険です。
ご興味惹かれましたらご発注いただけましたら幸いです。