武装商人のズデンカ「色々すごく不安だったのですけど、ケーナが護衛依頼を引き受けてくださったので安心しました」
依頼主・武装商人のズデンカ(フェニキシア王国寄りの中立)
概要・商隊の護衛
シナリオタイプ・戦闘
シナリオ難易度・難しい
関連の深いNPC・武装商人の「ズデンカ・ノヴァク」
ステータス上限・無し
シナリオ参加条件・PCが「ケーナ・イリーネ」である事
シナリオ中の確定世界線・以下の実績を獲得している。
ケーナの選択(ズデンカからの依頼を受諾)
光陽歴1205年冬。
12歳程度にしか見えない小柄で童顔な少女傭兵ケーナ・イリーネは、次元回廊を通ってフェニキシア王国のイル・ミスタムル州の州都ウガリィッドを訪れていた。
武装商人ズデンカ・ノヴァクからの護衛依頼を引き受ける為だ。
「今回は本当に有難うございます」
州都にある大衆食堂と宿屋を兼ねている店の、人々の混雑でとても活気に満ちている一階の隅のテーブル席にて、ケーナがズデンカと再会した時、友人である明茶色の長い髪の少女は、嬉しそうな笑顔で開口一番にそのように言ってきた。
再会の挨拶もそこそこにケーナが手紙は読んでくれた? もっと頼ってくれても良いよ、と文句を言えば、ズデンカはバツの悪そうな顔をして、
「読ませていただいたのです。うぅ、御免なさい。私は傭兵としても商人としてもずっとギブ&テイクの世界で生きて来たので、そのあたりの距離感が良くわからなくて……」
と謝って来た。
ズデンカ的には友人なのに水臭い、という概念も理解はできるが、友人が相手だからこそ、相手に見返りが薄い事を友人だという事を理由に強く頼むのは気がひけるらしい。
「ただ、ケーナがそうおっしゃってくれる事は凄く嬉しいです。もし次があったら今度からは遠慮抜きで頼らせていただきますねっ」
と嬉しそうな笑顔で言ったのだった。
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「――それで……嫌なことが起きそうな予感がしたんだけど、不味い事になってるの?」
来てくれた御礼も兼ねたズデンカの奢りという事で運ばれて来た飲み物と料理に口をつけつつケーナが問いかけると、明茶の髪の娘は頷き、表情を真剣なものへと変化させ、
<<フェニキシアの軍事機密に含まれるので、この事は他言無用でお願いするのですけども……>>
と念話で伝えてきた。
どうやら余人に聞かれては支障が出る話であるらしい。こういう時に祈士同士だと念話が使えるので便利である。
<<輸送隊が次々に消息を絶っているんです>>
曰く、現在戦争中のフェニキシア王国は、一旦国境の城塞都市ベールハッダァードに食料らの軍需物資を集積し、まとめられた物資は一つの巨大な輸送隊によってさらに前線へと送り込まれている。
集積された大量の物資を運ぶ事に加え、ベールハッダァードより先はフェニキシア人にとって不慣れな地となる為、軍は警護を厚くしている。
ベールハッダァードからガルシャ内の前線を往来している大輸送隊が輸送に失敗した事は現在までのところない。
しかし、ベールハッダァードに集積される前の段階。
フェニキシア国内のあちこちからベールハッダァードへと、小規模ながら多数の輸送隊によって軍需物資が運ばれているが、これらの小輸送隊が消息を絶つという事件が頻発している。
現在フェニキシア王国内では王家に対する叛乱が相次いでいる。
その叛乱軍が輸送隊を襲撃しているのだという話だった。
多数ある小規模な輸送隊のうちの一つが潰されても全体に与える悪影響は小さい。
だがそれが二つ三つ四つと数が増えて来ると話は変わってくる。
決して無視できない損害が出始めているらしい。
ただの農民達が相手なら『偏向波紋障壁(エスクード・ディフレクター)』を纏う祈士は無敵である。
しかし叛乱軍の側にもかなりの数の祈士が存在している事が確認されていた。
祈士に対抗できるのは祈士だけである。
フェニキシア王家が各輸送隊を守る為には、それぞれの輸送隊へと護衛の祈士達を手厚く派遣する必要があった。
しかし、王家が輸送隊の警護を厚くしようとしても、食料らの軍需物資は国内のあちこちから集めなければならない。
つまり、多方面に数が多い。
あちらこちらへと対応しようとすれば、必然、防衛戦力は広く薄く分散する形となる。
故に輸送隊のすべてに十分な数の護衛をつける事は、帝国軍と敵地で戦っている現在のフェニキシア王家には到底不可能な事だった。
それはズデンカの商隊に対しても同様のようで、
<<一応、ベルエーシュ様は護衛を手配してくれたのですが……うちみたいな小さな商隊に貴重な祈士を何人も派遣するというのは戦時下の今だと女王陛下といえども難しいらしくて……>>
一応派遣はされているが人数が足りないらしい。
足りない分は自分達で補う必要があった。
<<そこで、ケーナに来て貰えたら心強いなぁと思って>>
ズデンカはケーナを指名して護衛依頼を出したらしい。
<<ほとんど一般民の筈の叛乱軍に多数の祈士が存在しているのは、ヴェルギナ・ノヴァ帝国軍が叛乱を支援しているからだっていうのが専らの噂ですけど……それだとちょっと不自然な気がするんですよね……それに同じ輸送任務を請け負った同業者達との連絡が次々に取れなくなっているんです、彼等だって歴戦の武装商人ですから、護衛を増やしていた筈なのに……>>
身近なところでもかなりやられてしまっているらしい。
<<なので、色々すごく不安だったのですけど、ケーナが護衛依頼を引き受けてくださったので安心しました>>
ズデンカはケーナの実力に関して強く信頼しているらしく、ほっとしたような笑顔を浮かべたのだった。
●
叛乱軍に加勢しフェニキシアの輸送隊への襲撃を繰り返している『彼等』としてもその数が多い訳では決してなかった。
むしろ、全輸送隊の護衛祈士の人数と『彼等』の人数を見比べたら『彼等』の方が圧倒的に少ないと言って良いだろう。
ゼフリール島の『彼等』の戦力が『彼等』の国家が保有する強大な軍事力と比べて少ないのには理由があった。
まず第一に『彼等』の本国は遠く遠く離れた場所にあるという事である。
距離の制約は厳しい。
第二に『彼等』の本国は大陸でもまだまだ激闘を繰り広げていたので、ゼフリール島へと注げる戦力には限りがあったという事。
第三に協力者であるアヴリオンの連中が、完全に市の権力を握っている訳ではない、という事だった。
協力者達はアヴリオン共和国の権力を二分している『市長』とやらにバレないように動く必要があるとかで『彼等』への支援はアヴリオン共和国が本来もっている力からするなら、とても控えめなものだった。
それらの理由の為ゼフリール島における現在の『彼等』の兵力はとても少ない。
第一と第二の理由は仕方がないとして、第三の理由に対して『彼等』にはかなりの不満があった。
『市長』とやらを駆逐してアヴリオン市を掌握するのが、お前達の役目ではないのかと。父祖の為に子は役目を果たせと。
しかし、控えめではあっても、アヴリオン共和国からの支援が有るのと無いのとでは大違いではあった為『彼等』はそれを受け容れざるをえなかった。
さて、そんな総戦力で劣勢にある『彼等』だったが、現在までのところ、それでもフェニキシアの小輸送隊を襲撃するという任務に関して次々に成功をおさめていた。
成功の主な理由は、戦力で勝っていた為である。
総戦力では劣っていたが、局地的な戦力では勝る事ができていた。
その理由は、彼等が『襲う側』であった為である。
フェニキシア側が多数の輸送隊へと祈士を分散して広く護衛につけなければならないのに対し『彼等』の側は全戦力を一ヶ所に集中して投入する事が可能だった。
5対10では勝てなくとも、5対2ならば無傷で勝利する事が可能である。
5対2を5回繰り返せば、10の敵を撃破できる。
彼等がしていたのはそういう事だった。
敵側を分散させ、一方の自分側は戦力を集中させ、敵側を各個撃破してゆく。
敵側の守りを集中させない為には、王家に不満を持つフェニキシアの民衆達が役に立った。
<<一つにまとまらねばいずれ我等の奴隷と成り果てる運命というのに、よう争うのぅ>>
<<愚かと嗤う事はできんな。我等こそカアンがまとめてくだされねば、永遠に同族同士、隣国同士で殺し合っておったろうよ>>
<<我等は幸運であった>>
<<この島は不運であった>>
<<故に我らは栄え>>
<<この島は滅ぶ>>
<<勝った気になるのはまだはやい。滅びの運命を動かさせぬ為に、この島を統一させてはならぬ>>
<<故にフェニキシアとやらの邪魔をするという訳か>>
<<左様、故にこそのこの後方の輜重隊潰しよ>>
<<遥々とキンネディスの大海原を渡り、人の世の果ての魔境、光終わる地ゼフリールくんだりまで来ておきながら、やっているのは実につまらん仕事よ。身を偽り雑魚を奇襲し囲んで鏖殺しゆくだけ。何の誉もない。死して骨も拾われぬ>>
<<そう腐るな。兵站は戦の要ぞ。これも勝利の為、お国の為、父祖の為よ>>
<<父祖の為か>>
<<ああ、国が栄えれば家族も喜ぶ>>
<<噂をすればその輸送隊、また哀れなる獲物が来たぞ>>
<<あわれあわれ、あわれはまたいとおかし、今日も今日とて仕事を果たそうか。各々方、ぬかるなよ>>
<<<<<<<<応>>>>>>>>
そうして『彼等』はアヴリオン共和国からの支援で手に入れたガルシャの大兜を被り、愛用の得物を手にすると、猟犬のごとく動き出したのだった。
●
フェニキシアは島の南部にあり冬でも暖かい。
イル・アシル州には砂漠が多くなってきているが、フェニキシア一の穀倉地帯であるイル・ミスタムル州は緑が豊富な地域が多い。
ケーナ達がその時、通行中だった街道の近辺にも緑が多かった。
土を踏み固められてつくられた街道の左右では瑞々しい緑の草葉が生い茂り、灌木や大小の樹木が林立している。
林を抜ける道だった。
今は天気が良いので問題なかったが、雨が降った日には道は泥濘で大変な事になるのだという。
ガルシャの街道は石畳で整備されていた為それほどの障害はでなかったが、フェニキシアの街道は単に草木を除いて踏み固められただけだった為、とても馬車など使える環境ではない様子だった。
大量の軍需品を背負った荷馬達を紐で繋いで列を成し、商隊員達が手綱を引いて進んでゆく。
ズデンカが先頭に立ち、王家から派遣されてきていた青年の祈士が列の中頃を進み、ケーナは最後尾を守りながら進んでいた。
不意にケーナが嫌な予感を覚えて背後へと視線を向けると、三人の男達が道の左右の灌木の中や陰より飛び出して来るのが見えた。
右手側に二人、左手側に一人だ。
鉄のバケツを逆さまにしたかのような大兜をかぶり、黒い鎧下服と、円と十字が組み合わされた紋様が描かれた黒いサーコートを重ね着している。
――ガルシャ聖堂騎士団。
彼等を連想させる服装だったが、しかし手に持っているのは聖堂騎士達が使っているのをケーナはあまり見かけた事が無い、それぞれ反りの深い曲刀と、大振りの薙刀と、短い曲刀の二刀流だった。
いずれも鞘から抜け放たれ抜き身である。
聖堂騎士達が戦闘の際に念話領域に響かせる祈りの歌も聞こえてはこなかったが、彼等が戦う意志を持っているのは明白であり、その標的がケーナ達にあるのも明白だった。
――敵襲である。
■状況&勝利条件
緑の草葉が生い茂り樹々が林立している林中を抜ける街道を通行中、商隊の前方と中央側面、後方から襲撃を受けました。
襲撃者はガルシャの聖堂騎士風の外套と兜に身を包んだ男達です。
前方から1人、中央側面から1人、後方から3人です。
5人いますがうち2人はズデンカと王家から派遣されてきてる祈士が受け持つのでケーナさんが後方から来た3人を撃退できれば勝利です。
(PL情報・ズデンカと派遣祈士は敵よりも実力で劣っている為、防御主体で戦います。ケーナさんが3人を撃退したら残り2名はそれを見て不利を悟り撤退してゆく、という形となります。なのでもしケーナさんが敗北した場合はズデンカ達だけでは勝てないので、この商隊は全滅します)
なおズデンカと祈士の他にも数名商隊員が存在していますが、彼等は祈士相手には無力ですので戦力とはなりません。
■敵戦力
防具はそれぞれ
黒の『鎧下服(ダブレット)』
黒の『外套(サーコート)』
鉄灰色の『大兜(グレートヘルム)』
で統一されています。
ケーナさんの感知能力(直感)ならば、男達はかなりの手練れでありそうな雰囲気が感じられています。
後方を振り向いたケーナさんの左手側に二刀使い、右手側に曲刀使いと薙刀使いがいます。
距離は既にあと一歩で刀剣の間合いに入る位置まで詰まっています。
――↓PL情報↓――
使用ダイスは1D100。最大行動力2。
■中背の曲刀使い
攻撃力140
防御力90
攻撃レート-5
防御レート-10
最大生命力140
最大精神力130
最大機動力25
●使用猟技
力溜め
●使用スキル
紫電 猛撃
■矮躯の薙刀使い
攻撃力130
防御力100
攻撃レート+20
防御レート-10
最大生命力130
最大精神力130
最大機動力25
●使用猟技
力溜め
●使用スキル
紫電 猛撃
■長身の二刀使い
攻撃力150
防御力80
攻撃レート-20
防御レート-10
最大生命力150
最大精神力130
最大機動力25
●使用猟技
力溜め
●使用スキル
紫電 猛撃