ベンチャーの企業家が、金に無頓着であることはあまりない。きわめて貪欲である。彼らは利益を重視する。だがそれは間違っている。利益は結果としてもたらされるものであって最初に考えるべきものではない。利益よりもキャッシュ、資本、管理のほうが大事である。
常に一年先を見て、どれだけの資金がいつ頃、何のために必要になるかを知っておかなければならない。ベンチャーの本質からして、機会が最も大きくなるとき資金繰りは最も苦しくなるからである。
1年の余裕があれば手当は可能である。だが、切迫した状況のもとで資金を調達することは、事業がうまくいっているときでも困難である。法外なコストがかかる。
成功しているベンチャーは自らの資本構造を超えて成長する。これまた経験則によれば、売上を40%から50%伸ばすごとにそれまでの資本構造では間に合わなくなる。資本構造を変えなければならない。(p229)
ベンチャーに必要なマネジメントの視点の二つ目「財務上の見通しをもつこと」についての解説です。
利益は財務会計上の収支なので、キャッシュが動いていなくとも黒字にすることは可能です。簡単な例で言えば、掛けで仕入れて掛けで売るなら、支払いや入金がなくとも利益を出すことができます。しかし、資金は利益の動きとは別に日々の支払いや新たな設備投資に備えて準備しておかなければ、たちまち事業が行き詰まってしまいます。
したがって、1年先までの資金繰り計画を立てておけ、しかも「債務は想定より二か月早く決済しなければならず、債権は二か月遅く決済される」くらい悲観的に考えて作るべきだとしているのです。
資本構造については、バランスシートの右側にある負債の部、純資産の部のことを指しているのでしょう。それは、事業運営に必要な資金をどこから調達しているのかを示しているからです。事業スタート時はオーナーが拠出した自己資金が多くの割合を占めますが、成長に伴い売上債権と金融機関からの借入が増加し、さらに成長するなら、株式公開で資本金が増加していくというような、おおざっぱな計画を考えておき、それに向けての準備をしておかなければなりません。
いずれも、その時が来てから考えるのでは遅いというアドバイスだと思います。
Entrepreneurs starting new ventures are rarely unmindful of money; on the contrary, they tend to be greedy. They therefore focus on profits. But this is the wrong focus for a new venture, or rather, it comes last rather than first. Cash flow, capital, and controls come much earlier.
A growing new venture should know twelve months ahead of time how much cash it will need, when, and for what purposes. For the new venture, almost by definition, is under cash pressure when the opportunities are greatest.
With a year’s lead time, it is almost always possible to finance cash needs. But even if a new venture is doing well, raising cash in a hurry and in a “crisis” is never easy and always prohibitively expensive.
The successful new venture will also outgrow its capital structure. A rule of thumb with a good deal of empirical evidence to support it says that a new venture outgrows its capital base with every increase in sales (or billings) of the order of 40 to 50 percent. After such growth, a new venture also needs a new and different capital structure, as a rule.
2014/5/1