イノベーションは富を創造する能力を資源に与える。それどころかイノベーションが資源を創造する。
人が利用の方法を見つけ経済的な価値を与えないかぎり、何ものも資源とはなりえない。地表にしみ出る原油やアルミの原料であるボーキサイトが資源となったのは一世紀少々前のことである。それまでは単に知力を損なう厄介物にすぎなかった。
購買力もまた企業家のイノベーションによって創造される。
19世紀の初め、アメリカの農民には事実上購買力がなかった。そのため収穫機を買えなかった。そのとき、サイラス・マコーミックが割賦販売を考えついた。これによって農民は、過去からの蓄えではなく、未来の稼ぎから収穫機を購入できるようになった。突然、農機具購入のための購買力という資源が生まれた。
初等教育の普及をもたらしたものも、教師の育成、教育学の進歩ではなく、17世紀半ばチェコの偉大な教育改革者ヨハン・アモス・コメニウスによる教科書の発明だった。教科書がなければ、いかに優れた教師であっても一度に一人か二人の生徒しか教えられない。教科書があれば、平凡な教師でも一度に30人から35人の生徒を教えることができる。
多様な知識や技術を有する人たちをともに働かせる知識としてのマネジメントもまた、今世紀最大のイノベーションだった。それは、全く新しい社会である組織社会を生み出した。(p8)
原油、アルミニウム、割賦販売、教科書、マネジメントという本書の最初に挙げられている例は、企業単位というより国レベル世界レベルの資源を作り出すというというのですから、かなり規模の大きいイノベーションです。
マネジメントについては少しわかりづらいと思います。マネジメントが始まる前は、個人経営の事業だったり、企業であっても一人の経営者と多数のマニュアルワーカー(肉体労働者)という形態の組織がほぼ全部を占めている社会だったとしています。
知識や技術が高度化し専門化していくに従って、多数の人の能力を集結してチームで成果を上げられるようになった組織が際立った成果を上げるようになり、それを体系化したマネジメントが急速に社会に広まっていった現象をイノベーションだとしたものです。
2014/2/18