大手の自動車メーカーの名前を知らない人はいない。ところが、電気系統システムを供給する部品メーカーの名前を知っている人はあまりいない。それら部品メーカーの数は自動車メーカーよりも少ない。アメリカではGMのデルコ・グループ、ドイツではロベルト・ボッシュ、イギリスではルーカスである。
これらの部品メーカーは、その専門技術によってあまりに先行しているために、ほかの企業にとっては挑戦する価値がなくなっている。これらの部品メーカー自体がすでに技術の基準となっている。
専門技術戦略はタイミングが重要である。新しい産業、新しい習慣、新しい市場、新しい動きが生まれる揺籃期にスタートしなければならない。(p285)
日本の場合は、自動車メーカーの「ケイレツ」化の歴史があるので、ドラッカーは専門技術戦略の事例として取り上げてくれなかったのかもしれません。
それでも自動車の電装品の開発・製造技術に特化して発展してきた大企業がありますから、類似した事業環境にはあると思います。ただ、ニッチというには大きすぎる気もします。
上記ではメーカーの事例を抽出しましたが、本文中では製造業以外の事例も紹介されており、「製造業に限定されることはない」と述べられています。
製造業、非製造業にかかわらず、他の追随を許さない特定の分野で突出している技術・ノウハウを持ち、磨き続け進化させ続けているということが、この専門技術戦略の成功条件になっています。
ただし、技術が優れているというだけではなく、時代に即していなければなりません。それが上記でいう「タイミング」です。タイミングが合わなければ、いくら技術があっても芽が出ることはありません。
Everybody knows the major automobile nameplates. But few people know the names of the companies that supply the electrical and lighting systems for these cars, and yet there are far fewer such systems than there are automobile nameplates: in the United States, the Delco group of GM; in Germany, Robert Bosch; in Great Britain, Lucas; and so on.
Such specialized skills put these companies so far ahead in their field that it was hardly worth anybody’s while to try to challenge them. They had become the “standard.”
Timing is of the essence in establishing a specialty skill niche. It has to be done at the very beginning of a new industry, a new custom, a new market, a new trend.
2014/5/17