アイディアによるイノベーションは、ほかのあらゆる種類のイノベーションを全部合わせたよりも多い。10の特許のうち七つか八つはこの種のものである。
この種のイノベーションによる特許のうち、開発費や特許関連費に見合うだけ稼いでいるものは100に一つもない。使った費用を上回る金を稼ぐものは500に一つである。
「イノベーションに成功する者は発明し続ける。何でも試す。そのうちに成功する」という。しかし続けていればやがて成功するという考えは、ラスベガスのスロットマシーンで儲けるには、レバーを引き続ければ良いというのに似ている。
企業家たる者は、いかに諸々の成功物語に心惹かれようとも、単なるアイディアによるイノベーションに手を付けるべきではない。(p151)
これまでイノベーションの7つの機会についてみてきました。①予期せぬ成功と失敗、②ギャップの存在、③ニーズの存在、④産業構造の変化、⑤人口構造の変化、⑥認識の変化、⑦新しい知識です。
しかしこれらすべてを合わせたものよりも、アイディアによるイノベーションは世の中にたくさんあると、ドラッカーは分析しています。
アイディアによるイノベーションとして、スプレー式のエアゾール缶、万能スパナ、ジッパー、ボールペン、など、「発明」というようなものが挙げられています。
この種のイノベーションは、成功する確率はあまりにも低いためリスクが高すぎるし、そもそも成功と失敗を予測することもできないので、企業が自らの事業として手を付けるべきではないとしたものです。
ただ、ドラッカーはアイディアによるイノベーションを全否定しているわけではなく、社会には必要だと考えていたようです。それは次のセクションで述べられています。
Innovations based on a bright idea probably outnumber all other categories taken together. Seven or eight out of every ten patents belong here, for example.
No more than one out of every hundred patents for an innovation of this kind earns enough to pay back development costs and patent fees. A far smaller proportion, perhaps as low as one in five hundred, makes any money above its out-of-pocket costs.
“Successful inventors,” an old adage says, “keep on inventing. They play the odds. If they try often enough, they will succeed.”
This belief that you’ll win if only you keep on trying out bright ideas is, however, no more rational than the popular fallacy that to win the jackpot at Las Vegas one only has to keep on pulling the lever.
The entrepreneur is therefore well advised to forgo innovations based on bright ideas, however enticing the success stories.
2014/4/6