イノベーションと企業家精神は才能やひらめきなど神秘的なものとして議論されることが多いが、本書はそれらを体系化することができ、しかも体系化すべき課題すなわち体系的な仕事としてとらえた。
本書はイノベーション、企業家精神、企業家戦略の三つに分けて論ずる。
イノベーションの部では、イノベーションを目的意識に基づいて行うべき一つの体系的な仕事として提示する。また、イノベーションの機会をどこで、いかに見出すべきかを明らかにする。その後、現実の事業として発展させていく際に行うべきことと、行ってはならないことについて述べる。
企業家精神の部では、イノベーションの担い手たる組織に焦点を合わせる。既存の企業、公的機関、ベンチャービジネスにおける企業家精神を扱う。これらの組織が成功するための原理と方法は何か、いかに人を組織し、配置すべきか、その場合の障害、陥穽(かんせい)、誤解はなにか、さらには企業家の役割と意思決定について述べる。
企業家戦略の部では、現実の市場において、いかにイノベーションを成功させるかについて述べる。
「企業の目的は顧客の創造である。したがって企業は二つの、ただ二つだけの企業家的な機能をもつ。それがマーケティングとイノベーションである。」とは、ドラッカーの大著「マネジメント」の言葉です。(上巻p74)
二つの企業家的機能のうちの一つであるイノベーションについてまとめた物が本書です。
イノベーションというと、発明、発見などによって技術革新が起き社会に大きなインパクトを与えるような印象がありますが、そればかりではありません。
「エスキモーに対して食料の凍結防止用として冷蔵庫を売る(「現代の経営」p50)」ように既存の製品に新しい用途を加えることもイノベーションだと言っています。
そして、それらは思いつきで行うことではなく、事業の中で仕事として行うべきものとして論じられています。
2014/2/14