外部の予期せぬ変化をイノベーションの機会として利用し成功するための条件は、その機会が自らの事業の知識と能力に合致していることである。
小売業の能力がないのに書店チェーンなどの大量流通業に乗り出した企業はみな惨敗している。
したがって、外部の予期せぬ変化といえども、既存の能力の新たな展開の機会としてとらえなければならない。自らの事業の性格を変えてはならない。多角化ではなく展開でなければならない。(p44)
書店チェーンの事例とは、テレビが登場して誰もが書籍離れを予測したのに、書籍市場が大幅に伸びたという予期せぬ変化があったという内容です。
この変化について出版社や書店は気づいていたのに放置していました。そこに目を付けたのが、百貨店やスーパーです。彼らが新たな書店チェーンを展開してイノベーションに成功したという内容です。
百貨店やスーパーにとって、書籍は扱ったことのない商品でした。しかし、消費者にものを販売するという小売りに関しては専門家です。彼らに取っては新たな事業に乗り出す「多角化(diversification)」ではなく、商品ラインナップを増やすという「展開(extension)」だったということです。
この事例からドラッカーは上記のように、美味しそうだからといって自分の能力のない分野に突然乗り出すようなことは止めよと警告しているのです。
It is a condition of success in exploiting the unexpected outside event that it must fit the knowledge and expertise of one’s own business.
Companies, even large companies, that went into the new book market or into mass merchandising without the retail expertise have uniformly come to grief.
The unexpected outside event may thus be, above all, an opportunity to apply already existing expertise to a new application, but to an application that does not change the nature of the “business we are in.” It may be extension rather than diversification.
2014/3/5