一般には、企業家精神には大きなリスクが伴うと信じられている。しかし、企業家精神には大きなリスクが伴わなければならないなどとどうしていえようか。
企業家は、生産性が低く成果の乏しい分野から、生産性が高く成果の大きい分野に資源を動かす。そこには、成功しないかもしれないというリスクはある。しかし多少なりとも成功すれば、その成功はいかなるリスクをも相殺してあまりあるほど大きい。したがって企業家精神は、単なる最適化よりもはるかにリスクが小さいというべきである。
イノベーションが必然であって、大きな利益が必然である分野、すなわちイノベーションの機会が既に存在する分野において、資源の最適化にとどまることほどリスクの大きなことはない。論理的にいって、企業家精神こそ最もリスクが少ない。(p6)
事業の成果は組織の外に価値を提供することによって生み出され、成果を生み出し続ける組織だからこそ社会から存続を認められるという考え方がドラッカーにはあります。
そして、その社会は変化を常態としていることから、その変化に対応することが組織が継続する条件であり、そのために必要なのがイノベーションだということだと思います。
だからこそ最後の段落にあるように、社会の変化に気づかず、従来と同じ仕事をよりよくやろうとしているだけ(資源の最適化)では、いつのまにか社会と適合しない仕事を続けていくことになり、じわじわとリスクが上がっていくことになると警告したのでしょう。
2014/2/17