供給者のほとんどが戦略として価格設定をとらえようとしない。価格設定の仕方によって顧客は供給者が生産するものではなく自分たちが買うもの、すなわち一回のひげ剃り、一枚のコピーに対価を払うようになる。
総額として払う額はさして変わらない。支払いの方法を消費者のニーズと事情に合わせれば良い。消費者が実際に買うものに合わせるだけのことである。
供給者のとってのコストではなく、顧客にとっての価値に対し価格を設定すれば良い。(p301)
顧客創造戦略の二つ目は、価格戦略(pricing)です。
ひげ剃りとコピーの話が出てきましたが、本文中ではジレットとゼロックスの事例が紹介されています。
ジレットは、ひげ剃り用の安全かみそりの価格を設定するにあたり、「消費者はひげ剃りという行為に対価を払うのであって、かみそりという物に対して払うのではない」ということを認識し、自社の生産コストとは関係なく、床屋で払うひげ剃りの金額よりもはるかに安いが生産コストは賄えるという価格でかみそりの替え刃を販売しました。かみそり本体は一度買えば長く使えるもので生産コストも高いのですが、単体では採算割れする価格としたものです。
ゼロックスのコピー機も同じように、コピー機自体を売るのではなく、コピーする行為に価格を設定しました。顧客には初期投資を求めないという価格の仕組みにしてイノベーションを起こしたのです。
企業が利益を出して存続するためには、かかる費用を上回る売上を必要としますから、自社の生産コストを元に価格設定するのは分かりやすいです。しかし、顧客は供給者の生産コストを賄うためではなく、その製品を使って受ける便益、そのサービスを受けて実現する便益に対して対価を払っているのだということです。
Most suppliers, including public-service institutions, never think of pricing as a strategy. Yet pricing enables the customer to pay for what he buys—a shave, a copy of a document—rather than for what the supplier makes.
What is being paid in the end is, of course, the same amount. But how it is being paid is structured to the needs and the realities of the consumer. It is structured in accordance with what the consumer actually buys.
And it charges for what represents “value” to the customer rather than what represents “cost” to the supplier.
2014/5/21