ハイテクは、かなり長い間利益を上げることができない。コンピュータ産業は1947年から48年にかけて始まったが、産業全体としてみるかぎり、30年以上も経った80年代初めまで収支が合わなかった。
これと同じことが、コンピュータ前のハイテク、すなわち19世紀初めの鉄道、1880年から1914年にかけての電機と自動車、1920年代のラジオ局にも起こった。
このようなことが起こるのは、調査、技術開発、技術サービスに多額の資金を注ぎ込まなければならないからである。ハイテク企業は、たとえ現状を維持するためであっても、常に速く走らなければならない。もちろんこれもハイテクの魅力である。しかしこのことは、整理期が訪れたとき、ごく短期の嵐を乗り切るのに必要な資金的余裕さえ残していない企業がほとんどであるということを意味する。(p145)
「30年間収支が合わない」という記述がありますが、これはあくまで「産業全体としてみた」場合のことです。
当然IBMなど利益を上げてきた企業もありますが、その陰にはコンピュータ産業に挑戦したものの「整理期(shakeout)」になって撤退した多数の企業があり、それらの損失を合わせて考えると、「産業全体として収支が合わない」という状況だということです。
どんな事業であっても「静止」していたのでは存在意義を失いますから、ある程度「動いて」いなければなりませんが、特にハイテク産業では「より速く走り続ける」ことが求められるため、成長に合わせて資金をどんどん投入しなければなりません。
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)でいう「花形製品」に近いイメージです。しかし、ポートフォリオが花形製品に著しく偏っていると、成長はするけれども資金的には「自転車操業」で、市場成長のスピードが落ちるとたちまち資金不足になってしまいます。できることなら別に「金のなる木」を持っていて、資金に余裕を持たせておくことが企業存続の条件といえます。
High tech is not profitable for a very long time. The world’s computer industry began in 1947–48. Not until the early 1980s, more than thirty years later, did the industry as a whole reach break-even point.
And exactly the same thing happened in every earlier “high-tech” boom—in the railroad booms of the early nineteenth century, in the electrical apparatus and the automobile booms between 1880 and 1914, in the electric appliance and the radio booms of the 1920s, and so on.
One major reason for this is the need to plow more and more money back into research, technical development, and technical services to stay in the race. High tech does indeed have to run faster and faster in order to stand still. This is, of course, part of its fascination. But it also means that when the shakeout comes, very few businesses in the industry have the financial resources to outlast even a short storm.
2014/4/4