プロセス・ギャップは、なかなか見つけられないような代物ではない。消費者が既に感じていることである。眼科の手術医は目の中の筋肉組織にメスを入れるとき、常に不安を感じ、そのことを人に話していた。金物屋の店員は芝生の庭を持つ顧客の不安を知っており、そのことを話していた。
欠けていたものは、それらの声に耳を傾けることであり、真剣に取り上げることだった。製品やサービスの目的は消費者の満足にある。この当然のことを理解していれば、プロセス・ギャップをイノベーションの機会として利用することは容易であり、しかも効果的だった。(p60)
最後のギャップは、プロセス・ギャップです。直訳すると「リズムとか論理の流れの中にある不連続なもの(An internal incongruity within the rhythm or the logic of a process)」という感じでしょうか。
眼科医の例は、手術のプロセス(手順)の中にどの医者も不安に感じる「筋肉組織にメスを入れる」という部分を聞き取って、筋肉組織を溶かす酵素を製品化して成功したアルコン・ラボラトリーズという会社の事例です。
金物屋と芝生の話は、芝生の肥料や殺虫剤はどんどん品質が上がっているのに、それを庭の芝生に散布するときに均等にならないという声を真剣に取り上げて、手押し車を開発したO・M・スコットという会社の事例です。
どちらも、もともとその業界で仕事をしてきた人たちが成し遂げたイノベーションです。
ドラッカーはこのギャップに関してだけ、「決して外部のものが容易に見つけ、理解し、イノベーションの機会として利用できるものではない」としています。
The incongruity within a process, its rhythm or its logic, is not a very subtle matter. Users are always aware of it. Every eye surgeon knew about the discomfort he felt when he had to cut eye muscle—and talked about it. Every hardware-store clerk knew about the frustration of his lawn customers—and talked about it.
What was lacking, however, was someone willing to listen, somebody who took seriously what everybody proclaims: That the purpose of a product or a service is to satisfy the customer. If this axiom is accepted and acted upon, using incongruity as an opportunity for innovation becomes fairly easy—and highly effective.
2014/3/10