知識によるイノベーションでは、いまにもイノベーションが起こりそうでありながら何も起こらないという期間が長期にわたって続く。そして突然爆発が起こる。数年にわたる解放期が始まり、興奮と乱立が見られ脚光が当てられる。5年後には整理期が始まりわずかだけが生き残る。
このことは二つの意味をもつ。
第一に、科学や技術によるイノベーションを行おうとする者にとっては、時間が敵だということである。新規参入が可能な解放期は短い。チャンスは二度とない。
第二に、知識によるイノベーションの解放期が混み合ってきたために、イノベーションを行う者の生き残りの確率が小さくなったことである。解放期における新規参入者の数は今後増える一方となる。(p136)
このセクションでも多数の事例を紹介して、知識によるイノベーションには共通するパターンがあることを示しています。
1850年代から1890年代までの電機メーカーの勃興、1910年頃からの自動車産業の興亡、1870年頃からの銀行の設立ブームと1890年頃の銀行の集約化などです。
コンピュータ産業はドラッカーの言う「解放期(window)」が二度あった例として紹介されています。最初の解放期は1949~1955年頃、二度目は1970年代末に起こっているとしています。
短い解放期に参入できなければそのイノベーションに乗ることはできないうえ、通信の発達により参入者の数が増えていくので整理期に入って生き残る確率は下がり続ける、というリスクを覚悟しなければならないということです。
For a long time, there is awareness of an innovation about to happen—but it does not happen. Then suddenly there is a near-explosion, followed by a few short years of tremendous excitement, tremendous startup activity, tremendous publicity. Five years later comes a “shakeout,” which few survive.
1. First, science-based and technology-based innovators alike find time working against them. Here there is only a short time—the “window”—during which entry is possible at all. Here innovators do not get a second chance; they have to be right the first time.
2. Because the “window” is much more crowded, any one knowledge-based innovator has far less chance of survival. The number of entrants during the “window” period is likely to be much larger.
2014/4/3