アルゴイレレス・アーカイブ

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 アルゴイレレス(麗:Argoireress 紋:怒神使者 多:Argoirerst)は、太球世界に現れる巨大生物の総称である。アルゴイレレスはルザーユ教における怒りの神、アルゴイル(Argoir)の使者という意味で、生物学者ガーデンにより提案された。

アルゴイレレスの能力・特徴・生態

 アルゴイレレスは前述の通り、太球に棲む生物である。しかし、その能力は普通の生物とは一線を画しており、その結果、人類社会に多大な被害を与え続けている。この節では、アルゴイレレスの並外れた能力や特徴を解説する。

外見

 アルゴイレレスの体長は、個体によって変動するが、おおむね10~500メートル程度である。地球で世界一大きい生物と言われるシロナガスクジラであっても、25m程度であることからも、その大きさが窺えるであろう。通常、これほどまでに大きい生物は、自重によって潰れて死に至る(シロナガスクジラが水中で生きるのも、浮力を得て潰れないようにするためである)。しかし、アルゴイレレスは大きさの割には体重がかなり軽いし、骨や皮膚(外骨格としてはたらく)が丈夫であることにより、死ぬことはほとんどない。

 アルゴイレレスの80%は100メートル以下の身長である。

 アルゴイレレスはおおむね四足歩行と遊泳を行う。外見は熊と狼を組み合わせ、さらに角を加えたような独特の形状である。水中で暮らす種は、ひれのような構造を持っていることがある。前脚よりも、後脚の方が筋肉が発達しており、太い。大半のアルゴイレレスはときおり二足歩行も行う。常に二足歩行を行うアルゴイレレスも7%程度の割合で存在する(ほぼ全てが陸上生活を行う種)。稀に尻尾を持っている個体もあり、その長さは1~100メートル程度である。皮膚は赤黒く、所々に妊娠線のような見た目をした裂け目のような構造が見られる。

 声帯にあたる構造は確認されているが、体系的な言語を発したことはなく、鳴き声を放つ。この鳴き声はアルゴイレレス同士でのコミュニケーションや敵に対する威嚇などに用いられるとみられている。鳴き声は最大で140デシベルに達し、近距離で聞くと聴覚障害を引き起こしかねないほどの大きさである。

皮膚

 皮膚はアルゴイレレスの表面のほぼ全てを覆い尽くしている組織である。身体の防護と呼吸の二つの役割が主である。皮膚は外から、死んだ細胞で構成される角質層、皮膚細胞が幾重にも積み重なった表皮層、著しい再生能力を持つ真皮層の3層で構成され、病原菌や有害物質、その他危険な物体が体内に入ることを防ぐ。

 前述の通り、アルゴイレレスの皮膚は赤黒い。裂け目のような構造からは赤色の組織が確認できる。夜間になると皮膚は緑色に発光するが、これは皮膚に含まれる緑色蛍光タンパク質によるものと考えられる。老いた個体は発光しないか、光が弱くなる。長時間暗い空間に置いておくと、同様に光の強さが落ちる。

 皮膚は他の生物と比べて著しく強く、およそ生物としてはあり得ないほどの強靱さと、その強度に見合わない柔軟さを持つ。刃物は刺さらず折れ、拳銃や機関銃の銃撃は弾かれる。戦車砲の砲撃ほどの威力になると、ようやくダメージを与えられるようになるが、これは人間にとってのかすり傷程度の損傷とみられており、有効打を与えるには艦砲射撃やミサイルなどが必要となる。近年では更に強い皮膚を持つ個体も出現しており、高い装甲貫通力を持つ地中貫通爆弾の使用が必要となる場合もある。過去に出現したアルゴイレレスのAR-40"ハルストジジネス"はあまりにも強固な皮膚を備えていたため、核兵器を用いて殺害することとなった。

 皮膚の強靱さは、皮膚に多く含まれる金属元素と炭素、その他有機物が、好熱菌の構成物質に類似した未解明の物質を形成しているためと考えられている。皮膚は-60℃~900℃ほどの温度に耐えることができる。このことから、皮膚のタンパク質は相当強いイオン結合を保っているとみられる。強塩基にも強く、飽和水酸化ナトリウム水溶液を浴びても表層しか溶けない。強酸にはあまり強くなく、硫酸攻撃によって表皮が半分ほど溶ける。厚さについてであるが、一般的なアルゴイレレス(体長100m)では、掌の皮膚が最も厚く26cm、平均すると厚さは8cm程度である。掌の皮膚は装甲として働き、電磁加速砲の砲撃を弾くこともある。

 皮膚は再生能力にも優れており、拳銃で追う程度の傷であれば1時間程度で完全に回復する。出血するほどのけがを負ったとしても、1~2日で治癒される。これは、著しい再生能力を持つ真皮細胞が、皮膚が傷つくとすぐに増殖して皮膚を覆うためである。

 皮膚は体を護る役割だけではなく、呼吸をする役割もある。皮膚の表面には多くの気孔があり、肺呼吸を行っている。「皮膚で肺呼吸とは、誤字ではないか」と思うかもしれないが、アルゴイレレスの肺は皮膚の直下に存在するため、この記述は正しい。肺の詳細については後述する。

骨格

 アルゴイレレスは骨によってその体を支えている。骨は、主に炭素でできた軽くて強靱な繊維部分(共有結合が3つづつ繫がった構造とされる)と鉄などの金属が互いに結びついた特殊な構造でできているとみられ、それゆえ、軽いにもかかわらず強固である。腕や脚などの重要な部分では、複数の骨が螺旋状にまとまり、あたかも一つの骨であるような振る舞いをする。このような骨は螺旋骨(バンペルコーツ, bampelkooq)と呼ばれる。

 骨折はアルゴイレレスでも発生する。主な骨折原因は人間による砲撃やミサイル射撃である。骨折は5日程度の短期間で治癒する。脚の骨を折ると動きが鈍るので、大きなアルゴイレレスに対しては脚を攻撃し、人口密集地への侵入を防ぐ策をとることが多い。

 骨同士は普通の生物と同じく軟骨や関節で繫がっている。関節は脱臼を防ぐために二重構造となっている。

筋肉

 筋肉は、アルゴイレレスの体や内臓を動かすはたらきを持つ。筋肉の構造は人間のそれと類似しているが、極めて太い。心筋や骨格筋は横紋筋でありながら高めの持続力を持つ特殊な繊維で構成されている。平滑筋は内臓筋のみに存在する。骨格筋と内臓は螺旋状に絡まった構造の腱(螺旋腱)で繫がれている。筋肉には、また、体温を作る働きもある。アルゴイレレスの平均体温は人間よりもかなり高く、51~60℃程度である。

 骨格筋が持続力を持つのは、筋肉にミトコンドリアのようなATP生成器官が大量に存在しているためであるが、これだけでは筋肉の要求するエネルギーを全てまかなうことはできないと考えられている。しかし、残りのエネルギーはどのようにして供給されているのかは未だ解明されておらず、いくつかの仮説が提唱されるにとどまっている。

 骨格筋は、さらに、瞬発力に優れるが持続力に欠ける速筋と、瞬発力はないが継続して安定して力を出せる遅筋に分類される。アルゴイレレスの遅筋は大量のミオグロビンが含まれているため真っ赤である。速筋はヘモシアニンにかなり類似したタンパク質が多く、青っぽく見える。アルゴイレレスの筋肉は人間と比べて熱に強く、遅筋は72℃以上の、速筋は249℃以上の熱に10秒以上曝されると機能を失う。

 筋肉の多さは個体によって異なる。AB-01"ムスクルス"のように筋骨隆々の個体もいれば、AC-00"ヒュモコ"のように筋肉がほとんどなく、運動性に欠ける個体もいる。なお、アルゴイレレスでも、人間のように訓練をすれば筋肉が発達することが判明している。

血液

 アルゴイレレスの血液はその性質によって動脈血と静脈血に分けられ、どちらも赤色である。血液のpHは約5.4で、弱酸性である。血液は人間のそれと同じく、栄養や酸素を運んだり、体温を保ったりする機能を備えている。アルゴイレレスの血液の機能は以下の通り。

 血液には神経毒のテトロドトキシンが入っており、ほとんどの生物にとって猛毒である。kg当たりの半数致死量は1.67gであり、成人男性では100g程度の摂取で死亡する。血噴種(学名 brodibus skrampoas)といわれるアルゴイレレスはこの毒性を利用して他の生物を殺す。アルゴイレレス自身はテトロドトキシンに耐性がある。このテトロドトキシンは、8割以上が食物の摂取による。そのため、陸上で生活するアルゴイレレスは、血液の毒性が弱い(ほかの毒を持つ種もいる)。

 血液は以下の成分により構成される。

 血圧は最低でも数十気圧はあると推測されているが、皮膚が分厚いために正確な計測はできていない。静脈については、血液を送り出すポンプ状の構造があることがわかっている。

臓器

 異常な大きさであるとはいえ、アルゴイレレスは生物であるから、当然臓器を持つ。全ての臓器は高度な自己再生能力を持つ。ただし、脳は例外。

脳(神経)

 脳はアルゴイレレスの神経系の中枢である。アルゴイレレスは脳を3つ持つ。一つは頭部にある主脳(raizlaen)であり、こちらでアルゴイレレスの大部分を司っている。思考能力などの高度な能力の大部分はこの主脳に帰属している。主脳は、厚さが20cmにも達する分厚い頭蓋骨で覆われているため、破壊は難しい。もう二つの脳は腹部にある副脳(anvafeitlaen)である。副脳は主脳の補助を行う。人間の中脳、小脳のような働きがあると考えられているが、いかんせん未解明な部分が多い。

 現在は、副脳が傷ついてもアルゴイレレスは問題なく活動できるが、主脳を破壊されると、たとえ副脳が無事でも一気に衰弱するため、やはり主脳に生命維持機能が集まっているとする見方が有力である。

 アルゴイレレスの脳は人間のものより高機能で、特に運動能力に優れる。しかし、理性を司る部分は小さく、知能はイルカ並みと一般には解説される。アルゴイレレスが人間を無差別に襲来するのはこのためであろう。特に知能に優れる種は賢明種(学名:pfontaro argoirerst)と呼ばれる。

 脳に次ぐ中枢神経は脊髄である。脊髄は反射行動などに関わり、それ単体だけでもドブネズミの脳ほどの能力を持つ。脊髄は40の節で構成されており、脳に近い節ほど生命維持の機能を備えている。脊髄は厚さ10cm程度の脊椎で保護されている。特有の反応として、150℃くらいの熱を与えると筋肉を収縮させる反射があり、高熱屈筋反射(高熱反射)と呼ばれる。

 末梢神経系を構成する基本単位は、人間と同じくニューロンである。ニューロンは人間のものよりも大きく、軸索の大きさは最大で3mに達する。イカの巨大軸索が1m程度の長さを持つが、これの3倍の長さである。

心臓

 心臓は循環系の中枢である。個体によって異なるが、アルゴイレレスは2つの心臓を胸部に持つ。心臓が1つだけだと全身に血液を回せないからであろう。心臓の大きさは人一人分~人十人分である。

 心臓の構造は人間と同じく二心房ニ心室で、静脈血と動脈血が混ざることはない。人間と異なり、左心室が肺臓に繫がっており、全身に血液を送り出すのは右心室の役割である。

 心拍数は16回/分程度で、遅い。心臓を動かしているのは心筋だが、心筋はアルゴイレレスの筋肉の中で最も強く、かつ持続性を持つ。心臓は薄い皮膚のような膜(心外膜)で覆われており、心筋やそこに酸素を運ぶ冠状動脈などはこれで保護される。心外膜は小銃弾を通さないくらいの強度を持つ。

 なお、心臓は循環器としてだけではなく、神経系の臓器でもあることが研究で明らかになっている。心臓移植を受けた人間が移植元の人間の記憶を思い出せたり、人格が変わることがあるが、アルゴイレレスでも同じことが起こりうる。

・肺臓

 肺臓は呼吸器である。他の生物の肺(dank)と区別するため、アルゴシュピセス(argoxpisess)ということが多い。

 アルゴイレレスの肺は二種類ある。一つが皮膚の直下に無数に存在する主肺(raizargoxpisess, raizdank)で、主肺内にある大量の肺胞で呼吸を行う。一つの主肺は薄桃色で、3mm~1cmほどの大きさの球体である。アルゴイレレスの皮膚をめくるとこれが大量にあるので、一般の人間は強い嫌悪感を催す。アルゴイレレスの呼吸の約70%が主肺によって行われている。

 もう一つの肺は心臓の左右に一対の副肺(anvafeitargoxpisess, anvafeitdank)である。副肺は白色で、人一、二人分ほどの大きさである。副肺での呼吸は口から直接取り入れた空気を用いて行われる。水中ではエラ呼吸を行うが、効率は低下する。

 この二つの肺によって、アルゴイレレスは生きるのに必要なエネルギーを得ている。

・同化臓(アルフィンヴェンターネフテス)

 同化臓(alfinventaaneftes)は、炭酸同化を行う臓器である。副肺にへばりつくようにして存在している。同化臓の内部は植物の葉緑体と同じ構造をしており、副肺から送られる二酸化炭素でエネルギー源となる有機物を合成する。合成のためのエネルギーは、主に呼吸で得られるATPでまかなわれている。同化臓は、呼吸で発生する老廃物である二酸化炭素を、有効活用するための臓器である。

・胃腸

 アルゴイレレスの胃と腸は機能が似ているので、ここではひとくくりにして扱う。アルゴイレレスは生物であるから、当然食事を行う。体内に入った食物はこの胃腸で消化吸収される。胃腸は胃と前腸、後腸の3つの部位に分けられる。なお、アルゴイレレスは雑食生物である。食べられるものの範囲は広く、ヒトが食べられる野菜や肉類はもちろんのこと、毒を持つフグやキノコ類、ひいては樹木すらも食べることができる。

 胃は強酸と消化酵素を含む胃酸によって食物を殺菌、分解するはたらきを持つ。胃酸中の酸の割合は塩酸:硝酸:その他=10:1:1くらいであり、消化酵素はペプシンとアネフテセルト(炭水化物を消化)の2つである。蠕動運動によって食物を押し潰す役割もある。アルゴイレレスの歯は咬み合わせが悪く、食物を嚙みくだくには不充分であるから、胃で食物を細かくするのである。胃では糖分とタンパク質の大部分が消化される。反芻は行わない。

 前腸は腸液によって胃で分解しきれなかったセルロースなどの炭水化物や、脂やタンパク質などを消化し、吸収する。水分の吸収もここで行われる。海水中では、余計な塩分は吸収されずに後腸に送られる。腸液は人間にとって有害な神経毒であるバトラコトキシンを少量含む。前腸の周りには膵臓がへばりついており、消化に必要な酵素を供給している。

 後腸は主に水分の吸収を行う。消化されなかった残りカスは便となって体外へ排出される。消化吸収の能率が良いため、便は少ない。海中で生活するアルゴイレレスの便は、かなり塩分が多い。便には腸液由来の神経毒が含まれているので、生物が摂取すると身体に異常をきたすか、死ぬ。アルゴイレレスはこの性質を利用し、便を罠にして獲物を食らうこともある。

・肝臓

 肝臓は毒物の無毒化や血球の造成・破壊、栄養分の貯蓄や皮膚再生などの多様な機能を持つ臓器であり、前腸の周りに位置する。肝臓は、心外膜と同様の物質で構成される、肝臓膜という膜で覆われている。肝臓はアルゴイレレスの臓器の中でも再生能力が群を抜いて高く、半分を欠損しても5日で元通りになる。肝細胞の核は3個あることが、研究によって明らかになっており、これが再生能力の高さに寄与しているとみられている。

・液臓(ダイナーネフテス)

 液臓(えきぞう, dainaaneftes)はアルゴイレレス特有の臓器であり、そしてアルゴイレレスを人類の脅威とならしめている最大の要因でもある。液臓は上腹部の大部分を占める臓器であり、阿液(あえき)(アルゴダイン、argodain)とよばれる液体を、液臓から伸びるホース状の器官(阿管)から猛烈な勢いで噴き出すはたらきを持つ。これは獲物を殺害するために用いられると思われるが、それにしては明らかに不相応なほど威力が高く、強いものであれば家を木っ端微塵にするほどの威力を持つ。阿液の噴射は阿液噴射(argodainxprintkenx)と呼ばれる。

 阿液はpH8を示す弱塩基性の液体であり、少し粘性がある。主な構成成分は水(66%)、老廃物(28%)、血漿(3%)、アンモニア(0.1%)である。人間にとって害になる成分はあまり入っていないが、アンモニアが入っているため臭く、しかもまずい。口にした人によると、「生き物から抜き取ってきた体液に尿をたっぷり加えたような、生臭いタイプのまずさ」とのこと。どうやら、阿液はアルゴイレレスの尿にあたるようである。

 阿液噴射の威力は、被害状況からGスケール(ガラヴィルムスケール)という区分により6段階に分けられる。

 阿液噴射はアルゴイレレスが水源にいるときに頻発する。そのため、アルゴイレレスを撃退する際にはまず陸上に留めおくことが優先される。なぜ生物がここまで高い水圧を作り出すことができるのかは判明していない。一種の機械的構造を体内に持っているという説もある。また、上記の性質から、アルゴイレレスは皮膚から給水できるのではないかという説が有力である。

 前述の通り、阿液噴射はアルゴイレレスの放尿にあたるとされるが、アルゴイレレスは、高い知能によって、これを単なる排泄と攻撃との用途で使い分けている。具体的には、G1、G2の阿液噴射は排泄であり、G3以上は攻撃に用いられる阿液であるとされる。このように推察できる理由は、G3以上の阿液噴射の威力が高いため、また、G2以下の阿液には多くの老廃物が含まれているためである。

 阿液噴射の精度は高く、1km離れたところを走っている自動車に命中させることができるが、上空を飛ぶ飛行機に当てることは難しいようである。

 液臓はそれ自身が膜で護られている上に、骨でも防護されているため、武力によって液臓を傷つけることは難しい。阿管は比較的外傷に弱いので、戦車砲程度の火力で損傷する(個体差あり)。阿管が損傷すると阿液が拡散して吹き出るようになるので、阿液噴射の威力が落ちる。

 全てのアルゴイレレスが液臓を持っているわけではない。およそ21%のアルゴイレレスは液臓を持たない。ただし、液臓を持たないアルゴイレレスは、その分肉弾戦に強く、挌闘種(学名:anevas bulmundoas)と呼ばれる種に属することが多い。挌闘種は肉体が強靭なため、違う意味で厄介である。

・脾臓

 脾臓は血液に関わるはたらきを持つ臓器である。脾臓は肝臓の逆側に存在する。

 脾臓は血液および血球を造成し、また、古くなった血球を破壊する役割を持つ。人と同じく、骨髄でも血液は作られるが、アルゴイレレスでは脾臓に血液の4割を頼っている。破壊された血球の残骸は大部分が体内で再利用される。

 脾臓にはもう一つのはたらきがある。それは、血液の貯蔵である。ヒトの脾臓は血液を貯蔵する機能があまり発達していないが、アルゴイレレスでは全血液の8%が常に脾臓にある。大量に出血したときや、急激な運動を行った際には、脾臓から血液が放出され、酸素不足を解消する。

・生殖器

 アルゴイレレスは生殖器を持つ。生殖の方法は体外受精に近い体内受精である。アルゴイレレスはメスとオスがあり、生殖器は両性で違うため、別々に解説する。なお、雌雄の判別は外見ではかなり難しく、アルゴイレレスを長年研究している者でなければ分からない。

 アルゴイレレスの男性器は多くの生物と同じく棒状である。長さは個体により異なるが、勃起時で40cm~5m、平常時で20cm~1mほどである。生殖行為を行わないときは体内にしまわれており、外からは見えない。生殖行為を行う際は体外へと出てきて、同時に勃起する。連続した刺激(ほとんどの場合、性的刺激)が加えられると放精し、その後は急速にしぼみ、速やかに体内へ格納される。精液の量は最大100mLにも達する。

 男性器はアルゴイレレスの中でも特に弱く、岩にぶつけた程度で出血する。

 アルゴイレレスの女性器は、男性器を挿入される阿膣(argoireresdieanefdirrat)と、その外部の陰唇、そして内側の子宮より成る。陰唇は、生殖行為時以外は常に膜で覆われている。この膜は拳銃の銃撃に耐える程度の強度を備えており、陰唇を保護する。

 阿膣は男性器を刺激するヒダのような構造が大部分である。このヒダはヒトの皮膚と性質が似ている。阿膣の長さは個体により異なるが、40cm~6m程度である。ヒダは子が体外へ出る前になくなる。

 子宮はアルゴイレレスの胎児が育つ臓器である。アルゴイレレスは胎生に近い卵胎生であり、子は子宮内で数か月過ごしたのちに体外へ放出される。子の数は多くても四匹に満たない。生まれたばかりの子は拳銃で殺害することができるくらいに弱い。

運動能力

 アルゴイレレスの運動能力は高い。もともと体が大きいためでもあるが、歩くだけでも時速12kmほど、走れば時速30kmほどは出る。最も速い記録はKKH-01"ハステルルンゲン"の時速120kmである。アルゴイレレスの骨格筋は持続性の高い横紋筋であるため、5分間ほどは速度を保ったまま走り続けることができる。あまりにも長く走り続けるとアルゴイレレスといえどもさすがに疲れ、酸素不足を起こして途端に動きが遅くなる。

 気候によっても運動能力は変化する。アルゴイレレスにとって最も運動に適している温度は23℃である。-20℃を下回ったり、40℃を超える環境では動きが鈍る。ただし、水分不足に陥ることはないようだ。これらの理由により、アルゴイレレスが最も多く出現するのは温帯地域である。

 尻尾を持つアルゴイレレスは、それを存分に活用して攻撃する。尻尾の速さは最大で時速100kmにも達し、衝突した物体を粉砕する。近づいたものには容赦なく尻尾を当ててくるので、尻尾を振っているアルゴイレレスには近づかないのが原則である。

 アルゴイレレスは跳ぶこともある。跳躍高は最大10メートル。

感覚器

 アルゴイレレスの感覚器は視覚器・聴覚器・触覚器・回転覚器・平衡覚器などがある。

 アルゴイレレスの視覚器は目である。目の構造はヒトと同じ。視力は個体によって異なるが、おおむね3~10である。顔に占める面積の割合は個体差があるが、たいていは矮小である。

 目の表面には爆発などから目を護る瞬膜があり、目が危険にさらされたときに作動する。瞼の皮膚も目を守る役割を持つ。瞼と瞬膜を両方作動させていれば、電磁加速砲の攻撃にも耐えうるほどの強度を発揮する。

色覚は人間のそれと大きく異なっていると推測される。具体的には、UVA~赤外線までを見ることができ、人間よりも多くの色を識別できる。

 眼球はアルゴイレレスの部位の中でも最も美味とされ、30円/g(レートは2020年11月(玄歴1646年7月)現在のもの)という高値で取引される。食べた人によると、「芳醇な白身魚のような味」らしい。

 アルゴイレレスの聴覚器は耳であり、角の傍にある。耳の構造はヒトと類似するが、蝸牛が大きい。聴覚は人間よりも圧倒的に優れており、1km先の人間の叫び声をも聞き取ることができる。耳の外側には耳介のような構造があり、聴覚を補助する。この耳介は、攻撃されたときに耳を護る役割もある。

アルゴイレレスの回転覚器・平衡覚器は同じ器官であり、エフタンヴォーシュ(eftanvoox)あるいは阿斜転耳(あしゃてんじ)と呼ばれる。

 アルゴイレレスは舌だけでなく、歯でも味を感じ取ることができる。舌は筋肉の塊であり、細長く、どちらかというとヘビの舌に近い形をしている。舌の表面には大量の味蕾のような器官があり、ここで味を感じ取る。味蕾は人間のものよりも多くの味を感じ取れ、現在、甘味・苦味・塩味・酸味・旨味・神経毒味・カルシウム味の7つの判別ができることがわかっている。

 舌の強度は比較的弱く、機関砲の攻撃で出血しうる。

 アルゴイレレスの歯は骨と同等の物質で構成されているが、さらに硬く、電磁加速砲の砲弾を弾いたこともある。多くのアルゴイレレスでは、歯は口の中に生えており、はたらきによって牙歯(がし)・犬歯・切歯・臼歯の4種類に区分される。牙歯は、食物の咀嚼というよりは攻撃に用いられる。牙歯以外の歯は、食物を嚙みくだくのに用いられる。ただし、大半のアルゴイレレスは歯の嚙み合わせが良くないので、胃で食物を潰し、砕く。

寿命

 アルゴイレレスの寿命は、種にかかわらずおおむね20年ほどである。一般に小さい種ほど長命であるとされるが、アルゴイレレスの研究はまだまだ発展途上であるため、詳しいことは分かっていない。人間によって育てられたアルゴイレレスの寿命は30年に達するが、これが自然界での寿命と同一とは考えがたい。

 アルゴイレレスは国際的な保護対象とはなっていないので、平均寿命が延びることはない。

 死亡した個体は、約5か月で分解されつくし、消失する。体内の有毒物質は、死後1週間程度でなくなるが、この仕組みは明らかでない。

生息地・行動・性格など

 アルゴイレレスはほとんど世界中に生息している。両極付近と砂漠気候などの極めて厳しい気候でなければ、どこにでも生息している。どちらかといえば昼行性であり、夜間は水深の深いところで緩慢に動くことが多い。普段は海を時速15km程度の速さで回遊している。地上に棲むアルゴイレレスは、木やその実などを食べて暮らす。夜間はその場で眠る。脳波を計測したところ、ノンレム睡眠が3割であった。

 性格は獰猛であり、餌となる生物を見つけるとすぐに襲いに掛かる。アルゴイレレスは、死亡したアルゴイレレス(体組織が著しく劣化する)を好んで共食いする。艦船を獲物と見間違えることもあり、年に数度はアルゴイレレスによる船の沈没事故が発生している。いくつかのアルゴイレレスは、生物や物体を好奇心あるいは悪意から破壊する。アルゴイレレスは、また、人間にも強い敵意を向ける。これは、人間が人口密集地を襲うアルゴイレレスを殺害あるいは撃退しているためとみられる。全てのアルゴイレレスがこのような性格をしているわけではなく、おとなしいアルゴイレレスも2割程度いる。特に鎮静種(学名:aktisoas argoirerst)と呼ばれる種は、この傾向が強い。

 詳しくは後述するが、おとなしいアルゴイレレスを捕獲し、生物兵器として戦わせる計画を立てている国家も存在する。

人間との関わり

 アルゴイレレスと人間は、初めて彼らが邂逅した1603年以来、ずっと敵対し続けている。これはひとえにアルゴイレレスが人間を襲撃し、人間社会に多くの損害をもたらしてきたからに他ならない。アルゴイレレスは言葉を話せないため、意思疎通は不可能であるから、今後も敵対関係は続いていくであろう。

アルゴイレレス災害への対策

 アルゴイレレスによって人間社会が崩潰しないように、人類は今までに様々な方策をとってきた。

対アルゴイレレス防御壁

 これはアルゴイレレスが越えられないほど高く、阿液噴射を防げるほど強固な壁である。大きなアルゴレレスがあまり生息していない冷帯気候の地域でよく採用されている。原子炉の炉心溶融を防ぐため、海に面した原子力発電所に設置することもある。

 対アルゴイレレス防御壁が初めて設置されたのは1610年であり、ラシェント軍国のガシャムライツに、総延長10km、高さ30mという形で置かれた。ガシャムライツは軍事都市であり、ラシェント軍国の軍における重要拠点であったためである。

兵器開発

 人類の脅威であるアルゴイレレスに対抗するため、人類は新たな兵器の開発に追われた。

 アルゴイレレスが初めて出現したのは1603年であると書いたが、この頃は資本主義国と社会主義国同士の冷戦が始まってから10年が経過していた。そのため、アルゴイレレスが出現する前から、核兵器を始めとする新兵器の開発は猛烈な勢いで進んでいた。アルゴイレレスの出現は、皮肉にも「人類を保護するための兵器開発」という口実を資本主義国と社会主義国の両方に与えたのである。

 アルゴイレレスの対策のために(あるいは、それを口実として)開発された兵器には、以下のようなものがある。

 核兵器が開発されたのは、第二次世界大戦も終わりに近い1589年のことである。このときの核兵器はA-00"フォンヴァード"というコードネームのついた原子爆弾(出力16キロトン)であり、コルツレンで実験された。核兵器は大戦中に5回実戦で投下され、その威力の大きさのために一度は条約で開発・使用が禁止された。しかし、アルゴイレレスが出現するとこの条約はすぐに破られ(次々と条約を離脱する国家が出て、効力を失った)、再び核兵器開発の競争が始まった。

 多くの国はアルゴイレレス対策を謳っていたが、実情は敵国への牽制であった。競争は過熱し、1612年にレイトガイジェンにより出力10メガトンの湿式水爆"アイニス・ブード"が実験され、翌々年には紋令により出力16メガトンの乾式水爆"煌焔爆(Gaen-Fuo-Bau)"が開発され、水爆は世界中を緊張の渦へと巻き込んでいった。軍拡競争はさらに過熱していき、挙げ句の果てに、ラシェント軍国によって出力60メガトンの多段階水爆"ジャルセンツァス・ドーム"という途方もない威力の水爆も開発されたが、ここで核兵器の開発競争は対人類核兵器開発実験全面禁止条約(麗:Istempaldikirdkeilnnoesqoixolbilzavkenxonertivaforeankenxdeqenulistxiitistdinsisowas, 通称IIDI条約)が1620年に締結されたことで終息を迎えた。

 現在では、各国が戦術核を所持し、いつでもアルゴイレレスを核爆撃できる態勢を整えている。ただし、核兵器を使わなければ殺せないほど強いアルゴイレレスはほとんどいないので、やはり他国への威嚇のための所持ではないかという声もある。

 1640年時点で、レイトガイジェンには、14キロトン級戦術核が約2000発あり、アルゴイレレスが襲来した時には国中で、要請があれば国外でも使用できるようになっている。

 太球世界では、海中から出現するアルゴイレレス対策のため、軍艦の発展が大きい。アルゴイレレスの出現前は、軍艦の発展はほとんど地球と同じであった。簡潔に説明する。

 戦列艦同士の撃ち合いから、少数の強力な砲を備えた軍艦が発達し、そこから、多様な用途に用いられる駆逐艦や、装甲と速度の均衡を取って遠洋航海に耐える能力を持つ巡洋艦、そして重厚な装甲と強力な主砲を備えた戦艦などに分岐した。第二次世界大戦までは、戦艦が最も強いと考えられてきたが、航空機の発達によってその考えは覆された。航空機の汎用性と利便性の前に、戦艦はもはや無用の長物と化した。アルゴイレレスの出現からも、この意見が変わることはなかった。

 しかし、電磁加速砲の出現は、戦艦復活の契機となった。火薬いらずで莫大な初速を得られる電磁加速砲は、航空機を発進させて爆弾を落とすよりも容易な方法であると考えられた(機銃や機関砲では、アルゴイレレスに傷を刻めないので、航空機による攻撃は必然的にロケットか爆弾となる)。

 現代では、ミサイルが最も安全かつ確実な殺害方法であるが、アルゴイレレスの襲来のたび(1630~1640年の平均襲来回数48.7回/年)にミサイルを発射していると費用が馬鹿にならない。よって、太球では未だに戦艦が現役の兵器である。艦砲射撃の費用は、ミサイルに比べると圧倒的に安いためである。

 現代の戦艦は、速度を犠牲にしてとにかく装甲を厚くし、アルゴイレレスの攻撃を防禦する「重戦艦」と、装甲はやや薄めにして、高出力のエンジンを搭載することによって30ノット以上の高速で運用できるようにした「軽戦艦」の二種類に大別される。どちらの戦艦も、ほぼすべての艦が艦砲だけでなくミサイルも搭載している。

 磁力を用いて弾丸を加速させ、撃ち出すという電磁加速砲の構想は、第二次世界大戦中には既に存在していたが、技術不足により実現しなかった。電磁加速砲が再び日の目を見たのは、冷戦後期の1621年のことである。対人類核兵器開発実験全面禁止条約が締結され、核兵器の開発が制限されたため、新たな兵器の存在を国家とその国民が望んだのである。

 それからは、世界中の国々が技術者・科学者を集めて開発に打ち込んだが、最も早く電磁加速砲の実用化に漕ぎつけたのは紋令であった。冷戦終結直前の1624年に開発され、「迅電炮」と名付けられたこの電磁加速砲は、当時の皇帝である然陽榮の計らいで世界中に配備された。加速砲は莫大な電力を要求するため、はじめは大口径の固定砲という形で各国に設置された。冷戦が終結した1630年代に入ると、艦船搭載型の電磁加速砲も登場し始め、アルゴイレレス撃退の一翼を担うこととなった。

 現在、電磁加速砲は世界に普及する段階に入っている。厖大な電力が要求されるので、主に都市の防衛用の固定砲、あるいは艦砲として用いられる。

 レーザー砲と聞くと、SFの世界を思い浮かべる方も多いであろうが、太球世界ではレーザー兵器は既に実用化のめどが立ちつつある。レーザー兵器は、収束・増幅させた光束(レーザー)を対象へ照射し、対象を破壊する兵器である。一発あたりの費用が安いのが特徴である。

 課題は、発射時に発生する熱と、大気の膨張によるレーザー光の屈折である。今後の技術発展が待たれるところである。

 地中貫通爆弾は、地下にある目標を殲滅するための、貫通力の高い爆弾である。英語ではバンカーバスター(bunker buster)という。太球では第二次世界大戦中に、テリエーレの軍事中枢を破壊するために開発された「ヴォルザナンピテス(Voltzannanpites)」という爆弾が地中貫通爆弾のはじまりとされる。

 テロ組織の「ワノモズ」が地下要塞を多く築くと、貫通力のある兵器が求められるようになったが、このヴォルザナンピテスが注目されることとなった。太球で地中貫通爆弾の名目で作られた初めての爆弾は、YAB-22であり、鉄筋コンクリートを5m貫通した。YAB-22は、はじめワノモズの要塞を破壊するために使われていたが、アルゴイレレスの堅く分厚い皮膚を貫くのに役立つであろうと考えられるようになった。その考えは的中し、初めてYAB-22の攻撃を受けたアルゴイレレス"カイロアス"は一発で内側から爆散し死亡した。

 硫酸や硝酸などの強酸が皮膚にかかると、水分が奪われるとともに発熱し、化学火傷を引き起こす。また、水酸化ナトリウムなどの強塩基が皮膚にかかると、タンパク質が加水分解され、化学熱傷を起こす。左様ならば、アルゴイレレスの皮膚でも同様の現象が起きるはずである、と軍は考えた。

 この考えのもと、1628年に、レイトガイジェン空軍によって初めて超酸爆弾が開発された。このときの超酸爆弾は内部に約53Lの濃硫酸(92%)を詰め込んでおり、「硫酸箱(ponzinrazadvat)」と呼ばれた。硫酸箱は1629年3月23日に初めて実戦使用され、AA-99"シャーヘン"の皮膚を溶かしたが、重傷を負うまでには至らなかった。レイトガイジェンは数年間研究を続けた後で超酸爆弾の使用を人道的見地から放棄したが、ラシェント軍国やセケシヤムス社会主義国では今でもしばしば超酸爆弾による攻撃が行われる。現在、ラシェントは9Lのトリフルオロメタンスルホン酸を内蔵したSB-1という超酸爆弾を100発以上所持している。

 超塩基爆弾はアルゴイレレスの皮膚に対してほとんど効果が見られなかったため、現在では使われない。

 これはいわゆる「神の杖」である。神の杖とは、軌道上の人工衛星から金属塊(主にタングステン)を投下し、その運動エネルギーを用いて対象を破壊(殺害)する兵器である。地球ではアメリカ合衆国がこれを検討していたという噂があるが、真相は不明。

 ラシェントやレイトガイジェンなどの国家では、この神の杖を「宙弾計画(sraingolgimpasvaixkenx)」と呼び、何年も実現に向けた検討を重ねたが、最終的には破棄された。理由は以下の通りである。

 まず、精度が悪いという点がある。軍の試算によれば、宙弾の誤差は最大で5kmに達する。これでは、アルゴイレレスに当たらず、金属塊が都市を破壊する可能性を捨てきれない。人類を護るための兵器が人間を殺してしまっては、本末転倒である。

 第二に、発射の際の反動が挙げられる。人工衛星は一定の速度で太球上を回っているため、そこから発射した金属塊もその速度で動くことになるが、ただ単に塊を出すだけでは塊は落下せず、宇宙ゴミに成り果てる。地上に落とすためにはかなりの速度で撃ち出すか、塊を減速させる必要があるが、前者であれば反作用により人工衛星が逆方向へ移動してしまい再発射が不可能となり、後者であれば発射の度に大量の減速材が必要となるため、費用対効果が余りにも見合わない。

 第三に、断熱圧縮による金属塊の融解がある。地上に着弾する前に融解してしまっては、兵器としての活躍は見込めない。

軍事・経済協定

 アルゴイレレスは強大な存在であるため、一国だけではなく国際的な協調が不可欠である。そのため、世界中の国が国際的な枠組みにおいて、経済的・軍事的な協力関係を結んで、アルゴイレレス対策に臨んでいる。以下に代表的なものを挙げる。

・RLVW(Rlaxentt-Loitenq Vanunweshetzink)(ラシェント・ロイテンツ軍事協定)

 1615年に発効した軍事協定。アルゴイレレス対策の国際活動としてはかなり初期のものである。これは、ラシェント軍国とロイテンツ州の国家との協定であり、アルゴイレレスによって当該国家が壊滅的な被害を被った際に、ラシェント軍国が助力するというものである。逆に、強力なアルゴイレレスによりラシェントが被害を被った際は、他国はラシェントを助ける義務もある。

 現在までにラシェントの助力が入ったことは4回しかないが、この協定はロイテンツ州の結束の象徴として大きな役割を果たしている。

・紋北上東麟經濟網(Miandau-Keinyaa-Keique-Xunqoi-Lietoedebaunvesxer)(MKKXLD)(紋北上東麟経済網)(もんほくじょうとうりんけいざいもう)

 1628年に発効した経済協定。紋令大帝國・北灘・上裁民國・東侯王國・麟巖連邦の5国間での自由貿易協定であり、関税引き下げ・金融市場の開放などを定めている。アルゴイレレスからの防衛の義務も定められているため、軍事協定的意味合いもある。近年、上裁が関税引き下げ率の変更を提案している。

・国際連合(jeebralsjembasaxousolaxfinventkenx)

 国際連合(国際統一組織, JOF)は、国際平和・国際的な協調を目的とし、1560年に設立された組織である。国際連合は、加盟国の請願により、加盟国の軍を徴発し、国連軍を組織できる。この国連軍はアルゴイレレスにも適用されるので、国際連合は世界中をアルゴイレレスから守る組織ともいえる。なお、実際にアルゴイレレス殺害のために国連軍が組織された回数は10回である。

参考:国際連合規則第49条「国際連合は、加盟国のいずれか一国以上が、他国あるいは軍事組織による軍事攻撃または有害な生物による攻撃を受けている際に、加盟国のうちの10か国以上の賛成を得て、加盟国の軍事力により構成される、安全保持理事会管轄の国連軍を組織することができる。なお、軍事攻撃を行っている国家が、国際連合の加盟国であった場合は、その国家は安全保持理事会に関与することができない。」

対アルゴイレレス地下シェルター

 1620年代より世界中で建設が開始された施設で、アルゴイレレスが出現した際に市民が避難する地下シェルターである。アルゴイレレス以外の災害にも使えるため、一般には「万能シェルター」とも呼ばれている。もともとは核戦争発生時の避難所としての役割もあったが、現在は専らアルゴイレレス襲来時の避難所として利用されている。ここでは主にレイトガイジェンの地下シェルターについて解説する。

 大きさは場所によって異なり、概ね東京ドーム1~3個分である。1つのシェルターには2万人程度の人々を収容できる。一番大きいシェルターは慧京(紋令大帝国首都)にある慧京第二地下防御壕であり、9万人を収容できるほどの容積を持つ。

 シェルターは4層あり、身体が不自由な人は行き来がしやすいように上の方に収容される。入り口は、大抵のシェルターには3つあり、アルゴイレレスに発見されないようにするため、目立たないように加工されている。トイレは10~20部屋につき一つの共同トイレが設置されている。風呂は存在しないが、共同水道でタオルを濡らすなどして、身体を拭くことは可能である。ずっと体を洗わないと疾病の蔓延にも繫がりうるので、できる限り身体の清浄を行うようにすべきである。

 部屋は小部屋と大部屋があり、3人世帯までは小部屋、それ以上は大部屋に入らされる。小部屋は4畳ほど、大部屋は6畳ほどの広さを確保している。どの部屋にも3日分の食料と水、および電子レンジとポットが備え付けられており、入所者はこれらを自由に利用できる。

 地下にあるため、阿液噴射の影響をほとんど受けず、安全である。過去には阿液噴射がシェルターを貫通し、入所者が死亡することがあったが、これも度重なる天井の強化により心配は不要となっている。

アルゴイレレスの利用

 人間はこれまでに多くの動物や生物を利用してきた。アルゴイレレスもその例外とはならず、身体や体組織、あるいは生体そのものの利用など、さまざまな活用案が提案されてきた。

皮膚の利用

 アルゴイレレスの皮膚は、前述の通り高い硬度と柔軟性を持つ。この性質を利用し、装甲として使ったり、建材として利用する考えはアルゴイレレスの出現時から存在したが、とある難点があった。

 それは、皮膚の劣化の速さである。アルゴイレレスの皮膚は、アルゴイレレスが死ぬと約3日で急速に組織が分解され、硬度も弾力性も大きく低下するのである。この現象は迅速皮膚劣化(farrpatulfukfongolkenx)といい、皮膚を利用する上の大きな課題であった。拳銃弾にすら貫かれ、金槌で叩けば砕け散るような皮膚では、何に利用することもできない。

 しかし、1635年、軍部と化学工場との数百回にわたる実験により、迅速皮膚劣化を解決できる画期的な方法が見つかった。それは、塩素沈着法というものである。塩素沈着法は、皮膚を、pH12以上の強塩基の液(水酸化ナトリウム水溶液が好ましい)に20時間以上漬け、80℃~90℃で熱し続けるというものであり、沈着法を実行すると皮膚の劣化をその時点で止めることができる。ただし、塩素沈着法を用いても皮膚の劣化を完全に止められるわけではなく、20年程度で分解されつくす。

 現在では、塩素沈着法を適用した皮膚は、軍艦や固定砲の装甲に用いられる。

・骨の利用

 骨には多くの無機物が含まれており、よい肥料となる。まず、おおまかに切断するために、1000MPa以上の水圧をかけたウォーターカッターを用いる。次に、超高圧力をかけてスクラップにする。最後に、粉砕機にかけて粉末にする。こうすることでアルゴイレレスの骨から肥料を作ることができる。この肥料は高い栄養性を持つ。たいていの場合は、リンと窒素を加えた上で、ほかの肥料と混ぜて卸される。

 骨はその堅さから、建材にも利用される。アルゴイレレスの骨を使った家は高額であり、同じ大きさの家の5倍ほどの値段で売られる。ものによっては、気象庁震度7の地震にも耐える強度を誇る。

食糧としての利用

 アルゴイレレスの体の一部は食べることができる。例えば、眼球、筋肉である。アルゴイレレスの血は猛毒であるため、食べる前にしっかりと血抜きをしなければならないが、味は好評である。ただし、全体的に値段が高く、牛肉の2倍以上の値段がするのは普通である。液臓や腸は悪臭がするので食べられない。

・生体の利用

 軍事利用としては、以下のような計画がある。


 BDとは「彼らを戦わせる」の略で、人類に敵意を持たないアルゴイレレスを訓練し、アルゴイレレス同士で戦闘させる計画である。1639年14月、ジュレーク軍需省大臣により提案された。

 計画は当初機密となっていたが、1644年2月、ヴェクラムダー総統及びユードラス副総統の意向で、BD作戦は国民に公開された。同年8月、BD計画に基づき「サンバルザム作戦」が実行された。これは、レイトガイジェン北西のストライトー(Storaitoo)を襲撃した体長40mの挌闘種(通称:Ze Ertivaforeanvaixes, 「被験者」の意)に対し、体長35mのアルゴイレレス、通称「オウセネス(第一の者の意)」を戦わせる作戦である。作戦は成功し、Ze Ertivaforeanvaixesは阿液噴射によって心臓と液臓を傷つけられ、死亡した。オウセネスは右腕の骨を粉砕骨折する傷害を負ったものの、現在は回復している。

 BD計画については、動物倫理の観点で問題がある。サンバルザム作戦が行われた後は、4つの動物愛護団体から抗議の声明が出された。これに対し、レイトガイジェン政府は「BD計画はアルゴイレレス駆除の被害を軽減するための計画であり、動物倫理への抵触はやむを得ないものであって、今後もアルゴイレレスの負担軽減など方策に努めていく」と返答しており、歩み寄りはしつつも、飽くまでBD計画を中止することはしないという立場を明確にしている。


 SDは「彼らを研究する」の略で、人類に敵意を持たないか、持っていても充分に制圧可能な弱さのアルゴイレレスを国家所有領内に建設された専用収容所に収容し、研究する計画である。アルゴイレレスの生体を研究するために計画された。

 軍需省は、将来、さらに強力なアルゴイレレスが出現することを考え、できる限りの対策を考えなければならないが、そのためには「敵」の生態を知ることが非常に重要であると考えている。アルゴイレレスには死亡すると数日から1週間で性質が大きく変化するという特性があるため、生態研究の為には生きたアルゴイレレスが不可欠である。アルゴイレレスの体組織・細胞・及びそれらを用いて生産された生物などの全ては微生物安全指標レベルAに指定される。これらの漏洩は懲役または使役労働刑となる。

 収容においては、人口密集地より離れた場所に出現した個体を対象とする。アルゴイレレスを民間人の目に曝さないようにするためである。


 上記ふたつのほか、小型のアルゴイレレスを飼うという利用法もある。これは富裕層のみに許される道楽である。体長20mの小型の種を飼う場合、餌代だけで年間約200万円かかる。飼われるアルゴイレレスはほとんどがおとなしい性格の鎮静種である。

歴史

 アルゴイレレスが初めて出現したのは、冷戦初期の玄暦1603年10月33日、午前9時55分のことであった。このアルゴイレレスは体長179mの、海中生活型の噴液種であり、セケシ語で「第一の者」を意味する「ティワジート(Tiwaziit)」と名付けられている。性別はメスであった。

 ティワジートは、セケシヤムス社会主義国の北東に位置する人口12万の港街、カヤソム(Kayasfhom)を襲撃した。ティワジートはアルゴイレレスにしては知能が高く、残忍な性格をしていたとみられている。カヤソム沿岸部の住民はいきなり現れた巨獣に対応できず、遅々として進まなかった警察消防の誘導もあり、G4の阿液噴射と肉体を使った破壊によって死亡していった。現地の治安隊(セケシヤムスの組織。治安維持を行い、武器の所持が許可されている)の持つ催涙スプレーや放水機、小銃などの武器は、ティワジートに対してほぼ効果がなかった(陽動程度であった)。

 セケシヤムス社会主義国タイドム(Tayidom)県県長であったメニト=ショワゼス(Menito=Xowazes)は、カヤソム市長からの報告を受け、対応についての会議を行った。会議は1時間程度行われ、カヤソム近郊のジサウォフコ(Zisawohuko)基地から陸軍一個小隊を派遣することが決定された。この時点では、ティワジートはただの害獣であろうという推測が立てられており、ゆえに現代の知見からするとありえないほど小規模な兵力が派遣されることとなった。

 その結果、午後1時半、派遣された小隊は一人残らず全滅した。ティワジートは街の大通りを進み、阿液を撒き散らしながら街灯や建築物を破壊して西へと進んでいった。午後2時の時点で、約9500人が死亡していた。彼女が西進したのは、大通りの先にある高層建築物群を恐れたか、あるいは興味を示したためと考えられている。彼女が石油の貯蔵庫を半壊させた影響で、午後2時29分に大爆発が発生。カヤソムの沿岸は大規模な火災に襲われた。既に消防は機能を失っていたため、火は燃え広がる一方であった。