現実世界での

レーゲン語の歴史

前史

 レーゲン語の始まり以前に、私は人工言語を作っていた。それらは極めて粗雑で、「言語」というのに相応しいかどうかは分からないが、ここでは人工言語と呼ぶ。ひとまず、ここではそれらを紹介する。

・さめえいご

 これは、私が小学生のころ、紙に書いていた RPG(ドラゴンクエストが基)の構想の中にある言語……というか単語群である。「さめ(鮫)」という名が冠されているが、さめえいごに鮫との関わりはない。ただ単に私が当時(今も)鮫を好きだっただけである。また、「えいご(英語)」という名も冠されているが、英語的要素もない。外国語全てを英語だと思っていたのだろうか。

 単語は DOOK YOSHE(ドーク ヨーセ)の二つだけである。これ二つで「土地の広さ」を意味するようだが、どちらが土地でどちらが広さなのかは不明。さめえいごはアプリオリな単語群である。yoose は yors と形を変えられてレーゲン語に「土地」という意味で導入された。繰り返すが、yoose が土地の意味であるかは不明である。

・変形漢字(仮称)

 変形漢字は、環大星(わでかせい)と竜宮星(りゅうぐうせい)という二つの架空の惑星を解説する A4 サイズの紙に書かれている文字である。漢字に余計な線を加えたり、はねを増やしただけの独創性のない文字である。ただし、「地球とは 字がちがいます」と当該の紙には書かれている。


 ここからは、今のレーゲン語の基礎となった言語・文字を紹介する。

・英式文字(第一期)

 これはアルファベットにひねりを加えただけの文字である。Aleglish(読みは恐らく /alégliʃ/ であり、English のもじりだろう)と紙面に書かれているため、架空国家で使用されていることを想定していると思われる。現在は資料がないため、この程度の記述しかできない。

・英式文字(第二期)

 「英式国」という国家で話されている言語の文字という設定の文字。言語は未製作である。これも資料はないが、記憶の限りではアルファベットのパクリではない。

・英式文字(第三期)

  「英式国」という国家で話されている設定の英式語という言語の文字で、僅かながら単語が確認できる。文字は現在のレイトシージェに近いが、今よりも文字数が多いのが特徴。また、日本語の伸ばし棒にあたる文字があった。これはRを左右反転させた文字で、「ヤーム」といった。ヤームは中期レーゲン語の黎明期まで残る。

 この「英式国」は現在の太球の基となる惑星(名前はなし)にあり、今でいうセケシヤムス社会主義国~ベイラスの位置にあった。ここから架空世界の創作も並行して行われるようになった。そういうわけで、世界の創作の方が先で、言語は後から作られたものである。


・英式文字・式語(2018年後半~2019年初期のどこか)

 書きにくいいくつかの文字は変形された。この際には50近い単語が創られ、これらは最初期のレーゲン語に少し形を変えて導入された。文法もわずかに作られたが、数行書いただけで頓挫したらしい。このころは、まだアポステリオリな言葉も多く残っていた。また、架空世界で作られた人工言語、という設定でもあった。これはアルカに大きな影響を受けた結果であろう。

レーゲン語の歴史(2019年6月~)

 レーゲン語がレーゲン語と名付けられたのはホームページを作ることを決意した2020年5月であり、それまでは別の名前で呼ばれていた。よって、ここではそれらを「前レーゲン語」と呼び、製作段階によって初期・中期・後期の三期に分ける。

初期前レーゲン語(2019年6月~9月)

 初期前レーゲン語は全て手作業で製作していたころの前レーゲン語を指す。文字は衛式文字に準じていたが、度重なる変更により少しずつ今のレイトシージェに近づいていく。言語名は「衛式語」だった。

 前述の通り、語彙は英式語からの借用がほとんどだが、独自に作られた単語も多い。例えば、英式語でテレビはxiidといったが、初期レーゲン語には借用されず、中期レーゲン語になって jemforkeistgabenjin という新たな語が創られた。造語方法はこの頃から現在と同じであり、parrfatatleen(快速列車) は parrfat(速い) + atleen(車)、ankeinは an(中に) + kein(行く) = 通過する といった感じである。

 文法は最終的に助動詞まで作られた。現在とは少し文法が違い、代名詞の活用は今よりも不規則だった。繫辞は tis ではなく dee で、これは今のdee(あなた) → Doo に引き継がれた。また、bau(許可の助動詞)は boucam という形だった。また、最初は動詞の活用はなかった。

 このときは、まだレーゲン語は今のセケシヤムスの場所で話されているという設定だった。「レイトガイジェン」という名前はまだ見られないし、言語名はまだ「衛式語」である。

参考:初期レーゲン語後期の衛式文字。タイトルに「英」と「衛」が混ざっているのが見える。最初は「英」だったが、のちに上から無理やり「衛」に変更されたことが窺える。

中期前レーゲン語(2019年9月~2020年2月)

 人工言語を作る際、毎回紙に文法事項や単語を書き連ねるのは面倒である。また、紙が汚損したり、紙を失くしたりすれば一からやり直しになってしまう。字が汚かったり小さいと見栄えが悪いし、そもそも見づらい。このように、「紙に手書きで書く」というのは非効率な手段である。よって、私はレーゲン語をパソコンで作ることにした。これだとバックアップを取ればデータが消えることもないし、字の大きさや綺麗さにばらつきが出ることもない。なにより、速く書ける。そう思ったきっかけは、アルカを作っていたセレン氏のページを見たことである。

 パソコンでとりあえず作り始めたのは、文法である。これは今でもパソコンに「基礎文法」という文書の形で残っている。パソコンで作り始めてから、基礎文法が「レーゲン語基礎文法書」と改稿されて公開されるまでの約5か月間の前レーゲン語を中期前レーゲン語という。

 はじめ、言語名は「式語」だった。「衛」が旧字になっただけである。のちに、英語と混同されることを避けるため、「麗式語」と改められた。のちに、この「麗式語」から「レーゲン語(Leigenlenq)」の名が生まれるのである。

 基礎文法はレーゲン語基礎文法書と同じような形式で書かれた。この時点でも現在の文法との差異はあった。例えば、指示代名詞 sai, sif には指示形容詞がそれぞれ saiwi, faiwi という別の形で用意されていた。また、前表詞の後に文章を置く場合でもコンマは不要だった。固有名詞の属格形は Er'Z という形だった。

 動詞の活用は、継続相が今と違う活用をした。-aks, -ags はそれぞれ -akus, -akes だった。また、今はない習慣相という相もあった。この相は動作を習慣的に行っていることを表すものであり、過去形では「~したものだ」という意味になっていた。疑問代名詞は英語に倣って文頭に置かれていた。

 現在の les にあたるものは関係代名詞であり、物の関係代名詞は les - leson - lesek、人の関係代名詞は rak - rakon(?) - rakek(?) と活用した。前表詞 lesek が les+ekなのはこの名残である。比較には「上級」という級が存在したが、私自身が、上級とはどんな級なのかということを設定できなかったため消滅した。

 語彙は今と概ね差異はないが、dam(終える)が gocam だったり、wen(~とともに)が wep だったり、doo の目的格が dout だったりした。

 現在のレーゲン語の基礎は、この中期レーゲン語期に建てられたといっても過言ではない。

 また、フォントづくりも行った。フォントは"Fontstruct"という、ドットでフォントを作れるサイトで作っていたが、円を書く機能がなかったのでeなどの円が使われている文字を作るのに大変苦労した。この時のフォントは当サイトの「配布・作品集」から閲覧およびダウンロードできる。Fontstruct は2020年の4月ごろまで使っていたが、Fontforge の登場によりお役御免となった。

 衛式字(レイトシージェの名前が決まっていなかった頃の、暫定的名称)

 改訂された麗字。あまりにも書きにくいhが変形された。

後期前レーゲン語(2020年2月~5月)

 基礎文法の製作を途中で放棄し、ネットで公開するためにレーゲン語基礎文法書などの文書およびフォントを作成していた時期の前レーゲン語を後期前レーゲン語という。

 この時期に入ると文法・語彙共に現在とほとんど同一となる。レーゲン語基礎文法書を作る段階で、学習者が不便に思うだろう代名詞の不規則変化を減らすなどして、レーゲン語をより学びやすくなるように工夫した。

 語彙数は大きく増え、サイト公開時には700を突破した。年始には100もなかったのを考えると、すさまじい成長である。

 辞書は当初 The World of Conlang を使っていたが、6月ごろに ZpDIC Onlineへ乗り換えた。

 フォントは Fontforge を使用して作った。昔 Fontforge を使おうとしたら、フォントの作り方がまるで分らなかったため、Fontforge には苦手意識を持っていた(これは私がわざわざ不便な Fontstruct を使い続けた理由でもある)が、あらかじめ作り方を学習したうえで久しぶりに使ってみると、驚くほど簡単にフォントを作ることができた。特に、円を描ける点がありがたかった。

 次に、自作言語を皆に知ってもらおうと、サイトを作ることにした。ここで、やっと、レーゲン語(当時はLeegenlenq)という名前が生まれた。サイトは約2週間で完成したが、検索エンジンに乗るまでに3週間ぐらいかかった。レーゲン語をレゲン語と書かないのは初期に Leegenlenq と書いていたころの名残である。

旧レーゲン語(2020年5月~2021年10月ごろ)

 このころから、レーゲン語を本格運用しはじめた。文法書を揃え、宣伝用のツイッターアカウントを作成した。辞書の語数は時を経るにつれて増えていき、ついには2500を突破した。ここでは、便宜上、旧レーゲン語という。

 しっかりしたレーゲン語としては、二番目に長く運用されていた人工言語である。

 旧レーゲン語は、文法改革によりそのはたらきを終え、多くの要素が新レーゲン語に受け継がれることになった。

新レーゲン語(2021年10月ごろ~現在)

 レーゲン語を作っていくうちに、祖語からの分岐や音韻の変化などの要素を、旧レーゲン語では説明できないことがわかった。そのため、大幅な文法改革を行うことにした。こうしてできたのが現在のレーゲン語である。現在(2022/6)、レーゲン語の中では最も長く運用されている。

 改革の結果、「簡単な言語」との立ち位置は捨てることになってしまったが、響きの良さは変わらず残っている。