1.1 目的を決めましょう

 人工言語を作るとなったとき、まず目的が重要です。人工言語の軸は目的にあるからです。


 あなたは何のために人工言語を作りたいのでしょうか?

 創作物のリアリティを上げるためでしょうか。人々の第二言語を作るためでしょうか。言語そのものを作りたいからでしょうか。はたまた、言語が思考に与える影響を実証したいからでしょうか。

 目的は様々あると思いますが、芸術目的実用目的のどちらかが大半であると思います。前者は「創作物のリアリティを上げる」「言語そのものを創る」に該当します。後者は「人々の第二言語を作る」などが該当します。なお、上の例で挙げた「言語が思考に与える影響を実証する」というのは研究目的といえるでしょう。


 先に実用目的の場合から述べます。実用目的の人工言語は、現実の言語を用いて作成すべきでしょう。語彙は既存の言語のものを借ります。文法は、覚えやすいように可能な限り簡素にします。発音は、多くの言語に存在する音を中心に組み立てます。

 なぜならば、このような工夫を凝らさない限り、人々に言語を実用してもらうのは難しいと言わざるを得ないからです。現に、世界で最も使われている人工言語はエスペラント(Esperanto)で、100万人以上の話者がいますが、エスペラントはヨーロッパの言語の様々な要素を組み合わせて作られた簡単な(悪い意味ではありませんよ)言語です。

 例えば、エスペラントで「こんにちは。」は "Saluton." (サルートン) といいます。これはラテン語が由来です。このように、ヨーロッパの言語を話している人々には単語が覚えやすくなっています。

 また、全ての名詞は o (オ) で、形容詞は a (ア) で終わる、といったように文法も規則的で覚えやすいです。開音節(母音か「ン」で単語が終わること)で、音素も多くの言語に存在する a, i, u, e, o, s, t, p, k, t などを採用しており、発音も簡単です。

 私は実用目的の人工言語を作っていないので、これ以上実用目的の人工言語について解説するのはやめておきたいと思います。あしからず。

 

 次に、芸術目的の場合ですが、こちらは好きに作ればいいのです。発音も語彙も文法も自由です。

 自分ですら把握できないほど難しい文法と発音と語彙を兼ね備えた鬼のような言語を作ってもいいし、綺麗な発音を目的とした言語を作ってもいいし、英語の不規則性を取り除いた言語を作ってもいいし、日本語の発音だけを規則的に変えた簡単な言語でもいいのです。


 しかし、現実問題として自分も運用できないような複雑怪奇な言語を作るというのは難関です。それにチャレンジするのは素晴らしいことです。素晴らしいことなのですが、しかし、創作というものは、創り続けられるというのが重要であると思います。

 目的が何であれ、人工言語は創り続けることができるのが大切です。ここからは、そのような持続可能な言語の作り方を紹介していこうと思います(そうでない言語の作り方についても、いつか書きたいですが……)。

 すなわち、発音、語彙、文法が複雑すぎない言語のことです。