紋令語

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紋令文字による「紋令語」。

概説

 紋令語(紋:紋令語(mian-dau-zyö:), もんりょうご, ミアンダウご) は主に紋令大陸の中央~北部で話されている言語である。紋令語族に属する。孤立語。母語話者は約12億3000万人であり、世界人口の14%に及ぶ。第二言語としても1億人が話しているとされる。国際連合の公用語の一つである。

 特徴は、表語文字の紋字(もんじ, mian-dhou, 紋令文字ともいう)を用いて表すことである。紋字は太球における実質唯一の表語文字であり、漢字に引けを取らない造字力と文字数を誇る。また、音素の多さも特徴として挙げられるだろう。紋令語は声調を持たないため、文字の違いを発音だけで区別する必要がある。それゆえ、単母音だけで14個(二重母音を含めるとその3倍以上の数になる)、子音は38個もあり、発音するのはかなり難しく、ネイティブスピーカーでも言い間違えることがある。学習者にとって、紋令語を学ぶ上で最も障壁となるのは発音である。

 なお、紋字のほかにも、外来語を表記したり、紋字の読みを表したりする際に、表音文字(アルファベット)の聲字とよばれる文字を用いることがある。

 一方で、文法は簡素である。文章は特別な場合を除いて OVS 語順で表記される。時制は現在と非現在の2つであり、また、孤立語であるから、語形の変化は全くない。よって、書くだけならば、1か月程度学べば基本的な文法は習得できる。会話をしたければ、少なくとも3年は訓練しなければならない。

 紋令語を漢字に転写する際は、北灘方言を除いて繁体字を用いる。紋字は簡略化を行っていないためである。

 ここでは、紋令語の標準として定められている慧京変種を紹介する。方言は取り扱っていない。

表記体系

紋字

 紋令語は、基本的に紋字(紋令文字)という表語文字を用いて記述される。紋字は前玄暦1500年ごろから使われ続けている、世界でも非常に古い文字体系であり、紋令大帝國や燐嚴連邦、北灘や東侯王國や上裁民國といった地域において紋字文化圏を形成している。地球の漢字にあたる文字である。文字数は普段使われない文字を含めて9万を超える。現在、紋令大帝國政府は日常生活に必要な紋字2555字を「日常用紋字」として指定している。

 次は紋字の大まかな歴史を述べる。紋字の起源は、紋令伝承によると、伝説上の王朝である泰の王、鄭坐(ていざ)が、見た物を文字にしようと提案し、それが紋字になったとされるが、これは飽くまで伝承に過ぎない。実際は、漢字と同じく呪術のためか、あるいは王侯貴族が自己の権威を誇示するために開発されたと考えられている。以下で、紋字の字体の歴史を解説する。

 最初の紋字は刻字というもので、板や粘土板に刻んで書いた文字である。これは未だ絵文字らしい雰囲気をたもっている。丸くてかわいらしい形をしている文字が多い。

 次に現れたのが板字であり、刻字を改変したものである。大半の文字は簡単になっているが、かえって複雑になった文字もある。陶器や板などに描かれた。

 文爵の時代になってから現れた字体が爵体と呼ばれるものである。爵体は筆で書かれる。丸みを帯びて、横長であることが特徴。

 爵体の次に普及した字体が弓書である。弓書は少し横長に書かれるのが特徴で、波打っているような書き方をする。爵体からさらに簡略化されており、大半は現在の字体と似ている。

 現代に用いられている字体は、堅書というものである。堅書は弓書を正方形に近くして、さらに角張らせた書体であり、漢字の楷書体にあたる。堅書を少し崩したのが、流書である。流書をさらに崩した書体は崩体と呼ばれ、流れるように文字全体をつなげて書く。崩体の中でも特に大胆に崩しているものを、大崩という。

 また、現代の印刷書体として、明朝体に似た飾体やゴシック体に似た均太体などがある。流書や崩体のフォントもある。


 紋字の造字方法は6つある。

 一つ目が象形であり、物体の形をかたどる造字法である。

 二つ目が指事であり、抽象的な概念を図形の位置関係で表す造字法である。

 三つ目は創成であり、指事で表しがたい物事を表すために適当な形を当てはめる造字法である。紋字の中でも少ない。

 四つ目は会意であり、文字同士を合わせて新たな意味の字を作る造字法である。紋字の中でも多い造字法。

 五つ目は形声であり、文字内のいずれかの部分でその字の読みを表す造字法である。画数の多い紋字に多い傾向がある。大半は会意形声文字である。

 六つ目は融合であり、単に文字同士をくっつけるのではなく、文字の一部一部を組み合わせて作る造字法である。会意にも形声にもなる。それぞれ、会意と形声に含む派閥もある。

それぞれの造字法でできた紋字の例。

右から、象形(字義:魚)、指事(字義:9)、創成(字義:である、だ、です)、会意(字義:曇り、「太陽の下に雲がある」という意味)、形声(字義:錫、「金偏に 氣(発音を表す。意味はない)」)。

聲字

 は、紋字の読みを表すためのアルファベットである。日本語の仮名、韓国語のハングル、中国語の拼音や注音記号にあたる。音紋ともいう。近世初期に、当時の皇帝である盤賢帝の命令を受けた学者らによって作られた人工文字である。

 字は子音字38文字と母音字14字の基礎字から成る。拗音や二重母音は、二文字を組み合わせた合成文字で表記される。一音節を一字で表現するのが原則である。

 字は学校教育や幼児教育で頻用される。また、紋令語を学ぶ外国人のためのテキストでもふりがなのように用いられる。国内でわざと紋字を字で書くことは、特別な意図がない限りはしない。

 字は、また、外来語や外国人の人名の表記にも用いられる。なお、外来語は紋字で当て字して表すこともある。

 聲字のラテン文字転写は、本ページ末の「音韻」の表記に従う。

文法

 紋令語は孤立語である。

 語順はOVSである。紋令語では、格が語順で表されるため、語順は重要である。なお、以下の例文では、漢字転写した紋字が新字体と違っている場合のみ、新字体に直した文を後ろに挙げている。

例:紋令語學我。(私は紋令語を学ぶ。) 新字体:紋令語学我。逐語訳:学ぶ ‐ 紋令語を - 私は。

補足:強調する時は格を表す専用の文字を用いることがある。これらの転写は、当て字を用いる。以下を参照。

・が:哦 ・に:轜 ・を:淤

補足例:武語學我。(私が、レーゲン語を学ぶ。) 

 時制は現在と非現在である。時制によって語形は変化しない。デフォルトは現在である。

例:甘柔食汝。(あなたはケーキを食べる。) 逐語訳: ケーキを - 食べる - あなたは。 

 未来を表すには、動詞の後ろに「」をつけ、過去を表すには、動詞の後ろに「」をつける。

例:甘柔食予我。(私はケーキを食べる予定だ。) 逐語訳:ケーキを - 食べる - 予定である - 私は。 

 品詞は名詞・形容詞・副詞・動詞・前置詞・連詞・助詞・間投詞である。紋令語では一つの紋字に2つ以上の品詞がわりあてられる場合が多い。その字が何の品詞なのかは、文脈で判断する。

 は能動態・受動態・中動態の3つである。ただし、口語では中動態は能動態で表されることもある。

 受動態は動詞の後ろに「」や「」を置いて表す。動作主は「」や「」などで表す。動作主を表さない場合もある。

例:食被甘柔以我。(ケーキは私によって食べられる。) 逐語訳:食べ(る) - られる - ケーキは - によって - 私(に)。 

例2:被紋令語内全世。(紋令語は世界中で話されている。) 逐語訳:話(す) - られる - 紋令語は - の中で - 全ての - 世界(で)。

 中動態は動詞の後ろに「」を置いて表す。

 例:了己我依試驗手點數。(私はテストの点数が良かったので自分自身をほめた。) 新字体:我讃己了依試験手点数。逐語訳:ほめる - した - 自分自身を - 私は - によって - 試験の - 点数(に)。

書き下し文

 紋令語の文章は書き下して読むことができる。漢文と同じような要領である。書き下す際には新字体を使ってよい。書き下しには日本語をもとにした文法を用いる。

 例えば、先程の例文を書き下すと以下のようになる。


例:紋令語學。 我は紋令語を学ぶ。

例2:甘柔食汝。 汝は甘柔を食う。

例3:甘柔食予我。 我は甘を予(かね)て食う。

例4:食被甘柔以我。 甘柔は我を以て食われる。

例5:話被紋令語内全世。 紋令語は全世の内で話される。

例6:了己我依試驗手點數。 我は試験の手点数に依って己を讃えた。

音韻

 紋令語は、中国語やベトナム語のような声調を持っていない代わりに、音素が非常に多い。紋令語は開音節言語である。なお、紋令語は昔は声調言語だったが、近世までに衰退し、その過程で各々の声調を持つ各々の母音が異なる音となった。紋令語の母音が非常に多いのは、このためである。

母音

  紋令語の母音は単母音だけで14個ある。ここではその表記(声字のラテン文字転写)と発音を紹介する。

・a : /a/ ・â : /æ/ ・ä : /ɑ/

・i : /i/ ・ɪ : /ɪ/ ・î  :  /ɨ /

・u : /u/ ・ü : /ɯ/ ・û : /y/

・e : /e/ ・ë : /ɛ/

・o : /o/ ・ô : /ø/ ・ö : /ɔ/

 曖昧母音の/ə/は、語尾において時折現れ、特に早口で喋る時に多くなる。

 短母音と長母音は区別されないが、母音が単母音のみである場合、たいてい長母音になる。二重母音は極めて多い。計算上、3 × 11 × 4 + 2 × 12 = 156通りの二重母音ができるが、実際はそれより少なく、15個程度。二重母音以外の重母音は存在しない。

子音

 紋令語の子音は38個ある。紋令語には重子音は存在せず、また、子音の連続もない。一部の子音は拗音となる。

・s : /s/ ・z : /z/ ・sh : /ʂ/ ・zh : /ʐ/

・p : /p/ ・ph:/pʰ/ ・b : /b/ ・f : /f/ ・v : /v/

・t : /t/ ・th:/tʰ/ ・d: /d/ ・k : /k/ ・kh:/kʰ/ g : /g/

・x : /ʃ/ ・j : /ʒ/ ・c : /t͡ʃ / ・ch:/t͡ʃ ʰ/ ・dj : /d͡ʒ / 

・fh : /ɸ/ ・vh : /β/ ・pf : /p̪͡f / ・q : /t͡s /

・l : /l/ ・gl : /ʎ/ ・r : /ɽ/ ・rr : /r/ ・rh : /ʀ/

・sfh : /θ/ ・zvh : /ð/ 

・m : /m/ ・n : /n/ ・ng : /ŋ/ 

※ n と ng はネイティブでも聞き分けられないことがある。

・h : /h/ ・kk : /q/ ・y : /j/ ・w : /w/