鈴鹿川・付加体、石灰質岩

付加体・石灰質岩・石灰質岩起源変成岩

この辺りの鈴鹿川でも僅かですが石灰質の転石が見つかります。鈴鹿山脈の北部・霊仙山から藤原岳にかけての一帯には石炭紀から三畳紀にかけて海中で栄えた珊瑚や紡錘虫が石化した赤坂石灰岩が大量に付加していますが、その一部が南部の野登山や綿貫山周辺部や、地質図の記載はありませんが加太川上流部の不動の滝の周囲にも点在しています。

地質図にTg記載された付加体・混在岩中にも石灰質岩が存在する訳で、肝腎橋や忍山大橋周辺の転石は加太川最上流部から流下して来たもののようです。石灰岩は水に溶けやすいので中流部まで下ってくると水流に侵食されて小石になってしまい上流水系での分布が僅かな場合にはます見つかりません。

しかし混在岩の場合、石灰質の部分は溶解してしまって転石の表面がいびつになりますが熱変成を受けてスカルン化していると方解石以外は硬質の鉱物に変わるので残るようです。

上の様に石灰質岩の混成岩は石灰質部分が溶解して虫食い状になる。

この種の石の一般的な岩相は砂泥質の黒色部と石灰質の部分が不規則ながら層状に配列しており、石灰質部は熱水反応を受けてスカルン化した部分の鉄分が酸化してサビで茶色く変質しています。石を切断していると時にきつい硫化物臭がしますから、或いは硫化鉱物が酸化しているのかもしれません。

スカルン化した部分は主に灰鉄輝石の様で酸化した部分を削り取ってやると暗綠の鉱物色が現れます。石の境界部分を削りだして薄片化して偏光を調べると更にはっきりします。

上はスカルン部と砂泥質岩の境界部分を切り出して薄片にしたもの。酸化した部分は削り込むと透明鉱物の層に変化する

上は透明鉱物のバンド部分のクロスニコルとオープンニコルの写真。鮮やかな偏光色を出しているのは灰鉄輝石でしょう。下は有色部分のクロスニコルとオープンニコルの写真。主に微細な黒雲母と石英、長石の微晶の様。黒雲母はオープンニコルで薄茶色に写る

鉄分の多い輝石は酸化しやすいようで、近隣の安濃川では稀にスカルン起源と見られる輝石岩を見つけることがありますが、周囲は全体が鉄錆色で覆われ、割ってみて中を見るまで暗緑色の輝石塊であるとは想像できません。

下の石は鈴鹿川・勧進橋上流の転石です。割ってみると色の薄い輝石バンドの周囲が虫食い状に酸化して錆色に変わっています。酸化の酷い部分は内部まで空洞になっていたりしますから部分的に硫化物が存在して酸化しているように思えます。

緑色の輝石ベルトは腐食が進むと虫食い状の穴が幾つも出来る。こんな部分は切断時に硫黄臭もする

この種の石の見かけは虫食い状に錆が広がり決して美しいと言えるものでは有りませんが、削って磨いてやると漆黒の基質に輝石の緑色と錆の褐色の帯がアクセントとして入り、見栄えの良い石に変わってくれる面白さがあります。このような変化は他の石でも同じように起きることで、その意外性が石を磨く楽しみの一つでもあります。