異邦人たち


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異邦人たち

先日テレビで、近年増加する外来生物の特集番組を見ました。この手の番組に常套的な誇張した演出が施されていて、素直に見ていると、そのうちに増加する一途の海外からの危険生物たちにこの国がのみこまれてしまいそうな印象を受けるのです。

此処で云う「外来生物」とは、一般に日本生態学会が定めた日本の外来種の中でも特に生態系や人間活動への影響が大きい生物のリスト「日本の侵略的外来種ワースト100」に上がる外来生物を指すようですが、これとは別に外来生物法で規定される「特定外来生物」・「未判定外来生物」や「生態系被害防止外来種」(旧・要注意外来生物)を指す場合もあるようです。

環境省の外来生物法(「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(平成16年法律第78号))に関するHPによると「特定外来生物」とは、外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものの中から指定されます。また特定外来生物は、生きているものに限られ、個体だけではなく、卵、種子、器官なども含まれます。

また「未判定外来生物」とは、「特定外来生物」に生態が似ているため、生態系等に被害を及ぼす可能性がある生物のことで、大まかに言えば「特定外来生物」に指定された種と在来種を除いて、その同属の種のほとんどが、この「未判定外来生物」に指定されているとのことです。

環境省HPの特定外来生物等一覧(最終更新:平成28年10月1日) には、哺乳類(25種類)鳥類(5種類)爬虫類(21種類)両生類(15種類)魚類(24種類)クモ・サソリ類(7種類)甲殻類(5種類)昆虫類(9種類)昆虫類(9種類)軟体動物等(5種類)軟体動物等(5種類)計130種類の特定外来生物と未判定外来生物が上がっています。

また「生態系被害防止外来種」とは、侵略性が高く、我が国の生態系、人の生命・身体、農林水産業に被害を及ぼす又はそのおそれのある外来種で外来生物法に基づく規制の対象となる特定外来生物・未判定外来生物に加えて、同法の規制対象以外の外来種も幅広く選定、国外由来の外来種だけでなく、国内由来の外来種(他地域からの侵入種)も対象となっています。

環境省 「外来種被害防止行動計画」パンフレットより

いずれにせよ、外来生物に対する今日的な考え方は、基本的に任意の地域の生態系は時間的に安定した定常的な状態であって、そこに外部から新たな種が流入した場合、これはその地域の生態系にとって異分子であり極力排除しなければならないとの、保守的で閉鎖的な自然観に基づいて組み立てられています。

これは私には、現代社会の私有財産制による土地所有とそれに基づいた土地管理を思わせます。本来我々が生活する大地は永久不変のものではなく、地球史の長期的な視野でみた場合、地球の活動よって常に変化し成長消滅するものです。長期的には大陸移動によって、短期的にも風雨による絶えざる表土や河川の侵食、火山活動による地形変化、巨大地震による大規模な地殻変動等にで絶えずその姿を変化させてゆくものです。

ところが土地の私有制は、土地境界を勝手に変えてしまう、この様な自然の流れによる土地の変化を容認せず、土地に何らかの変化が生ずる度に、災害が発生したとして多額の金をかけて変化したところをもとに戻し災害復旧を行います。地表はアスファルトやコンクリートで覆い固めて土壌の流出や地形変化を防いでいます。すなわち土地の変化は人間の合意によってなされたもの以外は、すべて不正であり悪であるとの認識です。

外来生物に対する考え方もこれと同じで、既存の生態系に変化を及ぼしたり、人の健康や人の経済活動に危害を加えるものは、全て悪であるとの認識です。現実の世界では、自然環境は人間の営利活動によって絶えざる変化を被っており、その生態系も人間によって日々造り替えられていますから、生態系への影響や改変の元凶は人間なのですが、その元凶たる人間活動については強いて問題とせず専ら外来生物のみが槍玉に挙げられます。

たしかに、これまで見かけなかった外来生物によって人が健康被害を被ったり、農作物に被害を受ければ当然のこととしてこれを駆除し国内から排除しようとするのは健全な対応に思われます。しかしまた人間が異常な速さで自然環境を破壊し造り替えているのも事実で、この結果生じた生態系の空位は、早急に何らかの生物群集で埋められる必要が有ります。

例えば採土のために削り取られた山肌は、早急に植物群で覆わなければ雨の度に土石が流れ出し表土を失ってしまいます。私の学生時代は高度経済成長の華やかな頃で、その後の田中角栄列島改造論へと繋がる時期でしたが、都市部・郊外問わず国土の至る所で「開発」が行われ、表土剥き出しの開発予定地や造成地が方々に出現しました。

突如として日本全土に出現したこの新たな環境に対して最も素早く適合したのは北米原産の帰化植物セイタカアワダチソウ(侵略的外来種ワースト100)で、瞬く間に日本全土に広がり、秋には至る所で黄色い花の群集をつくって花が大量の花粉をもつことから、花粉アレルギーの脅威が叫ばれ、当時のテレビや新聞・雑誌を盛んに賑わわしました。

荒れ地に真っ先に入り込むセイタカアワダチソウの群落も土地が肥えてくると次世代の植物群落に取って代わられる

当時のマスコミの論調は、勿論この分布拡大の早い異国からの侵入者をいかにして駆除するかといった話題で埋まり、セイタカアワダチソウは常に悪玉でありましたが、そんな中で唯一、当時三重大学教授(植物学者)の矢頭献一先生がNHK教育テレビで語った話が強く印象に残っています。

矢頭先生によると「セイタカアワダチソウは表土を失った荒れ地に真っ先に入り込むパイオニア植物で、全国至る所に繁茂したのは全国至る所に荒れ地が出現したからに過ぎない。繁茂が最高潮に達しその土地の植物質が豊かになってくるに連れ、彼らの根は自己中毒に陥って徐々に衰えて行き、次の世代の植物群落がそれに取って代わるようになる。彼らは生態系が荒れ地を取り込み、植物豊かな土地へと変えてゆく最初の過程を担う役割を持った植物だ」とのことでした。

世の風潮とは対立する論旨をNHKで語ることのかっこよさ、それを語りうる学者の素晴らしさは、当時学生であった私に学問というものの奥行きの深さを見せつけ、物事を判断するには一方向から見るのではなく、常にその反対側の視点からも見なければならないことを学びました。また矢頭先生の娘さんが中学時代私の同級であったこともなっかしい思い出でした。先生の指摘通り、セイタカアワダチソウの群落も徐々に勢力を弱め、今や秋の野原に黄色の彩りを添える雑草の一つに落ち着いた感があります。

自然は本来流動的なもので、それを取り巻く外的条件に対応して巧みに姿かたちを変化させるものです。地球史の中では、地球環境の激変に伴って過去に何度も種の大量絶滅が起こり、その度ごとに絶滅によって生じた生態系の空位には、新たな環境とその位置に進化適応した新たな生物群が大量に出現して今日に至っています。

自然界にあっては、たとえそれが人間によってもたらされた外来種であろうとも、住み着いた環境に適応して子孫を残しうるならば、それは自然における一つの自己選択であり、入り込んだ新たな種が在来種を淘汰して絶滅に追い込もうとも、そこに人間が介在すべきではないのかもしれません。

屋久島や八丈島など大海に隔てられ外部から陸上生物の侵入しにくい環境にあっては、その島の生態系が独自の進化発達を遂げ他には見られない貴重な固有種を生むことが多くあります。その様な特異な環境に人間が進出すると、人が持ち込んだ外来生物が急速に在来の生態系に食い込んで既存の生物を絶滅に追いやるケースや人間自体が狩猟や開拓によって在来生物を絶滅に追い込むケースが生じます。

人間によって過去数世紀の間に絶滅に追いやられた種はモア・ドードー・フクロオオカミ・シマワラビー・リョコウバト・ニホンオオカミ等数多く、絶滅してもあまり人目につかず観察記載のなかった動植物をも含めれば、その数は更に増えるものと思います。また近年では中国に生息していた揚子江イルカも2007年に絶滅が宣言されています。

自然界における種の多様性は極めて大切なことで、一つの種が滅んでしまえば、少なくとも現在の科学ではその種を再現できませんから、絶滅が危惧される種を保護することはとても重要です。しかし多彩な種を維持してきた自然環境をどんどん破壊して至る所でさまざまな生物種を大量絶滅に追い込みながら、外来種の侵入にともなう在来種の絶滅を心配するのは、人間の身勝手な思い上がりにも思えます。

思い返せば私の子供時代から今日に至るまでの間にも、様々な外来生物の危機が叫ばれ、新聞やテレビを賑わわしたものです。アメリカザリガニ、ウシガエル、アメリカシロヒトリ、セイタカアワダチソウ、マツノザイセンチュウ、ヌートリア、スクミリンゴガイ、オオクチバス、ブルーギル、ミドリガメ、イネミズゾウムシ等が浮かびますが、そこで取り上げられた生物の殆どは、何らかの形で人間の生産活動に被害を及ぼすか人間に健康被害を及ぼすもので、ウシガエルやミドリガメの様に取り立てて人間の生活に直接的な被害はないけれど、生態系で競合する日本の在来種にとって脅威になるといったケースはよほど数が増えない限り話題になることも少なかったようです。

この様な問題が発生する要因の一つは、外来生物の持ち込みに対して外来生物法と略称される法規制が有るのみで、ここで指定された特定外来生物等から外れたものについては規制の範囲外だし、規制対象生物であっても特例的な手続きによって持ち込めたり、既に持ち込まれた生物に対してその後の処置を監視する仕組みや組織もなく、当事者の自主規制に任されている現状が上げられます。

ミドリガメ・スクミリンゴガイ・アメリカシロヒトリ・ラミーカミキリ・・明治以降海外から様々な外来種が入り込む

外来種が国内に来る過程は食用・観賞用・愛玩用・毛皮等の目的で商品として大量に持ち込まれる場合が多く、一旦持ち込まれた動植物がいつしか当事者の手元をはなれ国内に広く拡散して様々な問題を引き起こすまで、一般の人々の目には止まらないことがほとんどです。アメリカザリガニ、ウシガエル、スクミリンゴガイ、オオクチバス、ブルーギル、チュウゴクサンショウウオ、ミドリガメ、ヌートリア、アライグマなどの動物は、大抵このような商業的目的で国内に大量に持ち込まれたものが放流されたり逃げ出したり、あるいは採算が取れずに放棄され、野外に拡散して国内の生態系の中に入り込んで一定の地位を得たものです。

また海外から観賞用・愛玩用に持ち込まれた花木やペットなど営利目的で流入する外来種以外に、輸入された食品や建材などに付着したり混入して偶発的に国内に持ち込まれる生物も多数存在します。現在家の周りで普通に見れるセイヨウタンポポ・オオアレチノギク・ヒメムカシヨモギ・ヒメジョオン・ハルジオン・アメリカセンダングサ・セイタカアワダチソウ・ベニバナボロギク・ダンドボロギク・ブタクサ・キキョウソウ・ヒメオドリコソウ・マツヨイグサ・オオマツヨイグサ・ムラサキカタバミ・シロツメクサ・コゴメツメクサ・ニセアカシア・オランダミミナグサ・オオイヌノフグリ・ニワゼキショウ・ボタンウキクサなどは明治以降に日本に入り込んで定着した帰化植物ですが、そのうちの多くはこのような形で日本にもたらされて広まったといわれます。

近世以降海外との交流が盛んになると様々な異国の植物が国内に渡来し定着した

ただし国内に存在しない生物種を国内に持ち込んでもそのまま国内で生存できるとは限りません。まず彼らの生存に適した気候・温度・湿度が必要だし、食料となる生物種の存在、適切な天敵の存在、すみかの確保等の条件が満たされて初めて、新たな生態系の食物連鎖のピラミッドのなかに一定の地位を得る事ができるのであって、これらの要件が満たされずに定着出来ないケースも多いはずです。

逆に考えれば、色んなハードルをクリアして国内に繁殖環境を見出し得た外来種は、自然に選ばれ受け入れられた生物であり祝福すべきなのかもしれません。ただしその結果、人に健康被害を与え、農作物等に経済的被害を及ぼすことになれは、当然人から手ひどい攻撃を受け「侵略的外来種」等のレッテルを張られるのも致し方ないものでしょう。

しかし、これらの生物が、云われたほどに私達の生活に被害を与えているのか疑問に思うこともあります。例えば緊急対策外来種のアメリカザリガニ(旧・要注意外来生物)など1927年食用ガエル(ウシガエル)の餌に輸入されたそうですが国内に広まるのは早く、父親の話では津市で始めて見たのは太平洋戦争前だが既に私の子供の頃にはどこでも普通に見られる存在でした。

津市には大戦前に姿を現し忽ち水路や池に定着した。今では子供達の遊び相手だ。

このアメリカザリガニは、今でも家の田圃の周りにたくさんいて、田の畦に穴を開けて水を逃がすので嫌われるのは確かですが、ザリガニに稲を食われて減収した話はあまり聞いたことが無いし、家の田圃でも過去にザリガニの被害を意識した覚えはありません。むしろ彼らはサギやトビ、ノスリ、狐等にとって貴重な餌となり上位の生物を支えています。

生物多様性センターのHPによるとアメリカザリガニは「絶滅危惧種を含む水生昆虫や魚類を捕食するため、多くの生物に影響を及ぼし、貴重な生物の絶滅の一因となる。貴重な里山の生態系を破壊する」等彼らの悪行を挙げ連ねていますけれど、今や里山の自然環境など農村の生活様式の変化・農業生産様式の変化の煽りをうけてとうの昔に人によって破壊しつくされ、水生昆虫や魚類の住まう水田環境を残す所など日本中探してもあまり見られないはずです。

アメリカザリガニは当初食用ガエル(ウシガエル)の餌として持ち込まれたわけですが、このウシガエルも結局国内では食材として定着せず養殖が放棄された後全国に広まって、アメリカザリガニ同様に戦争直前には津市でも姿を見られました。現在林川原には中ノ川周辺に沢山定着していて方々でウシガエルの名前どおりの鳴き声が聞かれます。

侵略的外来種ワースト100の栄誉に輝くウシガエル。親になると巨大で天敵も少なそうだ

10cm以上にもなるザリガニを餌にするだけあって、大変に大きなカエルで親ともなれはキツネやテンやイタチなど哺乳類でもなければ捕食するのは難しいでしょう。しかも大きい割にはとても用心深く、農業水路にひそんでいるのを覗き込むと、まっさきに隠れます。これに対しトノサマガエルなどもっと小形のカエルは遥かに不用心で覗き込まれてもまず逃げようとはしません。

この様な用心深さは、大型の体型とも相まってサギやノスリ、イタチやキツネと云った天敵に対する防御にもなりトノサマガエル等国内在来種のカエルよりは生存に有利な状況を生んでいると見られます。オタマジャクシは一年間その姿で成長しますので、トノサマガエルやツチガエルのように水田で生活することは出来ず、彼らの生活環境は水の枯れない水路か河川です。

ウシガエルは一年程オタマジャクシで過ごす。この巨大なオタマは冬には水鳥の格好の餌となる

一方在来種のカエルは、春に水の張られた水田に産卵し初夏にカエルとなるのですが、昨今では太古より昭和30年頃まで変わらずに続けられてきた水稲栽培の様式が大きく変化して、まだオタマジャクシの時期に田の中干しにあって干上がってしまったり、土堀の農業水路はみな側溝に変わり、水が切られるとすぐ乾いてしまってオタマジャクシが死んでしまうことも多く、昔に比べてその数は激減しています。

こんな状況にあってウシガエルの存在はカイツブリやダイサギやアオサギあるいはイタチやキツネなどより上位の肉食動物にとって極めて貴重な存在となっているようです。特に彼らのオタマジャクシは冬の期間も大きな姿で川底にひそんでいるため、餌の少ない困難な時期に捕食動物にとっては大変にありがたいものです。

アメリカザリガニについても全く同様のことが言え、環境破壊によって在来種のカエルやイモリがどんどん減ってゆく現在、彼らの存在は多数の鳥類や哺乳類の命をつなぐ真に貴重な存在になっています。彼らに侵略的外来種などのレッテルをはるのも結構ですが、既に国内に定着した彼らが、既存の生態系の中でより上位の生物の生活を支え生態系を維持している事実にも目を向けるべきでしょう。

今日までいろんな外来生物が人間の都合で持ち込まれ、その挙句人間の都合で侵略的外来種などと恐ろしげなレッテルを貼られて駆除の対象にされているのをみると、私達人間と言うのはつくづく愚劣な生き物だと思わざるを得ません。持ち込むにせよ駆除するにせよ、これにはすべて何らかの形で個人の金儲けがかかっており、時として生態学や生物学はこれら狡猾な商売人たちのだしに使われて詳しい事情のよくわからない私達素人はそれに載せられる形で知らず知らずのうちに税金が金儲けに使われてしまうのも現実でしょうか。

現在身近に繁殖している植物の中には海外起源のものが沢山あり、ことに弥生時代以降大陸との交流によって薬用植物として桃・梅・牡丹・南天・彼岸花・藤袴 等が渡来、現在では国花とさえ見られている菊さえもこの時期に中国から渡ってきたとのことです。私達が主食とする米(水稲)はそれより遥かに古く、紀元前9世紀ころ中国大陸南部あたりから伝えられたそうですが、その原産地や伝搬経路など学者によって諸説あって未だ定説と言えるものはないようです。

日本の花であるはずの菊も元は古代に大陸から渡来した帰化植物。梅なども梅花紋は奈良時代よりあるそうですが、桃同様にその実の薬効のため中国より渡来した帰化植物

古代に中国や朝鮮との交易が始まると、桃・梅・彼岸花・藤袴などが中国大陸より薬用植物としてもたらされた

また稲や麦類の栽培とともに、普段に目にする多くの水田や畑の雑草も同時にもたらされたとのことで、今日日本の農村風景と思われている植物の多くは、その起源を辿ると有史以前に稲や麦の栽培技術とともに渡来した帰化植物だとのことです。

江戸時代に下ると鎖国に入るのですが、オシロイバナやゼニアオイ・マルバアサガオ・レンゲソウなど長崎を経由して清やオランダから流入した植物が幾つもあり、これ等も今では国内に定着して外来種であることを意識させません。

景観保護で農地に植えられているコスモスも明治中期に南米より渡来した帰化植物

さらに鎖国が解かれた明治以降は先にも述べたとおり様々な経路でたくさんの植物が日本に流れ込み帰化しています。シロツメグサ・オオイヌノフグリ・セイヨウタンポポ・ヒメジオン・コスモス・ハルジオン・アメリカセンダングサ・キキョウソウ等普段目にする草花の多くが明治以降の帰化植物で占められているのが現実です。

人間が持ち込んだ生物に目先の都合で侵略的外来種・特定外来生物・生態系被害防止外来種その他のレッテルを張ってその拡散を抑えようとしたところで、その生物が土地の自然に受け入れられ自然の節理に沿って繁殖を始めたら、まず彼らの繁栄を防ぐのは難しく、過去の例を見ても結局は駆除対策に無駄な税金を投じて業者の懐を潤わすだけの結果になりかねません。

このようなことを考えるにつけ、外来生物を巡る現状は誠に奥の深い難しい問題を抱えていると思わざるをえません。最後にごく最近、この地に南アジアから渡ってきた熱帯産昆虫のことを載せておきます。モモブトハムシと呼ぶ全身金属光沢の大層美しい虫で、6~7年前に三重県松坂市で見つかったものですが、現在では私の暮らす芸濃町でも多数の個体が見られるまでになっています。

ごく最近に松坂に渡来したモモブトハムシ。今では林川原でも姿を見られる。

ハムシの仲間ですが、体長2cm程も有る大型種で、甲殻も固くチョツト見にはゾウムシかカミキリムシのような印象を与えます。10個体程見ましたが、全て赤紫(角度によっては緑ががる)の金属光沢を持つ個体のみで、海外産の写真に見られる青や緑の個体は見つかっていません。初見地の松坂からの距離と時間経過を考えると、もうとっくに奈良や滋賀まで分布を広げているのかもしれません。葛を好む様子ですが、あるいは近いうちにこの美しい虫にも何かのレッテルが貼られるのかもしれません。

フジバカマ 古い時代に中国からもたらされた帰化植物であると考えられている

アサガオ(朝顔 )奈良時代末期に遣唐使がその種子を薬として持ち帰ったものが初めとされる 漢名「牽牛子(けんごし)」奈良時代、平安時代には薬用植物扱い。

レンゲソウ (蓮華草)中国原産 江戸時代初期に渡来

マルバアサガオ(丸葉朝顔 )江戸時代に観賞用として渡来

シロツメクサ(白詰草 )1846年 (弘化3年)にオランダ製ガラス製品の包装に緩衝材として渡来。

マツヨイグサ オオマツヨイグサ 原産地は南米 嘉永年間(1848年〜1853年)に日本に観賞用として渡来、昭和30年代に同属のオオマツヨイグサとともに空き地などに大群落を形成した。しかし近年はこれも同属のメマツヨイグサ に押され、姿を見る機会は減った

ヒメジョオン (姫女菀)日本には1865年頃に観葉植物として導入され、明治時代に雑草化

ムラサキカタバミ(紫片喰、紫酢漿草 )南アメリカ原産、江戸時代末期に観賞用として導入

ヒメムカシヨモギ 明治維新のころから鉄道線路に沿って広がった

メマツヨイグサ (雌待宵草) 北アメリカ原産で、日本では明治時代に確認された帰化植物

ニワゼキショウ(庭石菖 )アメリカ 明治時代

ブタクサ(豚草)北アメリカ原産 日本では明治初期に渡来

キキョウソウ 明治中ごろから栽培されていたのが逸出して、戦後各地に拡大

ヒメオドリコソウ(姫踊り子草)ヨーロッパを原産地日本では明治時代中期に帰化した外来種で、主に本州を中心に分布す

コスモス 南米 明治中期に渡来

セイヨウヒルガオ ヨーロッパを原産地 1900年頃に観賞用 1940年代以降分布拡大

セイヨウタンポポ 1904年に北アメリカから北海道の札幌市に導入され、全国に広がった

セイタカアワダチソウ(背高泡立草)明治時代末期に園芸目的で持ち込まれ昭和の初めには既に帰化が知られている」との記述が牧野日本植物図鑑にある

オランダミミナグサ(和蘭耳菜草) ヨーロッパ 1910年代に横浜で確認

アメリカフウロ(亜米利加風露 )北アメリカ原産の帰化植物

アメリカセンダングサ(学名: Bidens frondosa、亜米利加栴檀草)北アメリカ原産。日本では大正時代に確認された帰化植物

ニセアカシア ハリエンジュ(針槐)北アメリカ原産 ヨーロッパや日本など世界各地に移植

ハルジオン (春紫菀) 日本では1920年代に観賞用として持ち込まれた

ダンドボロギク(段戸襤褸菊)北アメリカ原産 1933年に愛知県段戸山で初めて記録

コゴメツメクサ(小米詰草)、キバナツメクサ(黄花詰草)ヨーロッパ - 西アジア原産で、日本では1930年代に確認された帰化植物

オオアレチノギク 南アメリカ原産で、日本では昭和初期からの帰化植物

ボタンウキクサ(牡丹浮草)日本には1920年代に観賞用として沖縄・小笠原に導入関東以西で1990年代から広がり大阪の淀川など、大繁殖が問題

マツバウンラン (松葉海蘭) 北米 1942年京都

オオカナダモ アルゼンチン 1940年代より野生化

ベニバナボロギク(紅花襤褸菊)原産地はアフリカ。日本には1947年北九州

オオバナミズキンバイ (大花水金梅) 南米 北米 2007年兵庫 琵琶湖などで繁殖が問題

ラミーカミキリ インドシナ半島,中国,台湾 国内の最も古い記録は1860~70年代(長崎?).対馬での初記録は1990年代前半

コジュケイ 1915年に東京で飼育していた2つがいが逸走したのが最初で,1919年に東京付近で放鳥され,個体数が増え続けた

ウシガエル 1918年アメリカより

オオクチバス, ブラックバス 1925年.1965年頃から生息水域が増加

アメリカザリガニ 1928年アメリカより

根を食害

アメリカシロヒトリ 北米 終戦直後東京に侵入.1970年代までに各地に拡大

アカミミガメ ミドリガメ(幼体)輸入は1950年代に始まり,野外では1960年代後半からみつかる

ブルーギル 北米東部 1960年

イネミズゾウムシ 北米 国内での初記録は,1976年の愛知県知多半島.1986年には全国に分布拡大 成虫はイネの葉を食害,幼虫はイネの

スクミリンゴガイ 南アメリカ 、原産地外の世界各地に移入、定着食用として1981年に長崎県・和歌山県に渡来

アルゼンチンアリ 南米 1993年頃

(外来生物法 第二条 この法律において「特定外来生物」とは、海外から我が国に導入されることによりその本来の生息地又は生育地の外に存することとなる生物(その生物が交雑することにより生じた生物を含む。以下「外来生物」という。)であって、我が国にその本来の生息地又は生育地を有する生物(以下「在来生物」という。)とその性質が異なることにより生態系等に係る被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがあるものとして政令で定めるものの個体(卵、種子その他政令で定めるものを含み、生きているものに限る。)及びその器官(飼養等に係る規制等のこの法律に基づく生態系等に係る被害を防止するための措置を講ずる必要があるものであって、政令で定めるもの(生きているものに限る。)に限る。)をいう。)