2:黒雲母2

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花崗岩類のマイカ・黒雲母は錆びる

サンプルE 安濃川上流我賀浦川・加太花崗閃緑岩で角閃石を含まないkfのエリアのものです。岩質は次のFの斑状の石に近いようです。有色鉱物は黒雲母主体で角閃石は殆ど見られません。白色鉱物の一部が鉄錆色をしており面白いのでサンプルとしました。


先にカリ長石の鉄分が酸化して長石に色がつくことを書きましたが、この石の場合、風化によって黒雲母(鉄雲母)の鉄分が錆出て白色鉱物に着色したものです。よく見ると長石よりは石英に対して選択的に赤錆色が染み付いています。黒雲母の比率が高い石では普通に見られる現象で露頭の岩全体が赤く錆色に染まります。


サンプルE 鉄雲母の鉄分が雨水によって錆び周辺の白色鉱物を錆色に染める。石英のほうがよく色づくようです。


サンプルE 石の表面は雨水によって酸化し錆色に変わるが、水が浸透しにくい石の内部までは錆びない。

サンプルF 同じく我賀浦川上流の加太花崗閃緑岩の転石で大きく成長した自形の長石斑晶と優勢な黒雲母が特徴です。加太花崗閃緑岩には斑状相kpとして区別されたものがあります。kp相はkf相やkh相中に脈状に割り込んで分布していますが、この石はkp相ではなく岩脈G・珪長質岩脈と記載された地域ものです。


地質図幅 津西部の岩脈Gの岩石記載は次のようなものです「斑状黒雲母花崗岩 (GSJ R61403,場所:芸濃町我賀浦川上流) 斑晶:石英は他形で径 1 – 4 mm,斜長石は長径 2-4mmであるが,結晶の周囲の境界部では石基の鉱物により切られる.カリ長石は他形で径 4-6 mm.黒雲母は自形 - 半自形で軸色はY=Z=褐色である.石基:径 0.1-0.4 mm の他形,粒状の石英とカリ長石よりなる. 副成分鉱物:ジルコン・燐灰石・不透明鉱物」


サンプルFの源岩でGエリアで岩脈状に分布する巨晶長石斑晶を含む花崗閃緑岩。林道山側露頭ではホルンフェルスと接する

上の記載を見るとサンプルFとはかなり異なります。Fは長石の巨大な斑晶を含み完晶質で石基はありません。Fの採取地点は地質図中にGと記されたエリアで我賀浦川が西に屈曲する地点です。川の岩盤露頭及び林道脇の露頭でFと同種の石が岩脈状に砂質岩のホルンフェルスに貫入していますからGエリアの石に間違いありませんが地質図幅記載の岩脈サンプルとは異なったもののようです。

サンプルF 黒雲母と定向配列する大きな長石斑晶が特徴的な我賀浦川の加太花崗岩。有色鉱物の量からみると閃緑岩~斑糲岩に近い

この石が分布する岩脈Gは、サンプル採集した辺りでは中粒~粗粒の黒雲母花崗閃緑岩相で部分的に大きく成長した長石斑晶が見られるものです。一部の斑晶は長軸方向に定向配列する傾向があり、大きいものでは4~5cmあります。有色鉱物は黒雲母主体で角閃石も所々に見受けられますが眼視での識別は難かしいものです。岩種は有色鉱物の多さからみて部分的には塩基性岩とみてもよいほどです。


サンプルF 上2枚の写真はどちらも中央部に角閃石の結晶があるのですが周囲の黒雲母と区別できますか


サンプルF 上2枚は有色鉱物ほぼ全てが黒雲母ばかりです。黒雲母の鏡のような平滑面は角閃石には見られません

この石についても薄片を作ってみました。巨晶部分は大きすぎて入れていませんが、同種とみられる長石が多数サンプル中に存在します


サンプルF 上左は薄片を反射光、右は透過光で写したもので、白色鉱物でも透明感の高い石英は反射光で暗く透過光で明るくなります。不純物が多く変質もしやすい長石は光の透過率が低く、逆に光を反射するので反射光で明・透過光で暗となります。研磨面と薄片を見比べると鉄分の錆が石英部分を選択的に着色している様子が分かります。

サンプルF 以下6枚の偏光顕微鏡写真は最初がPPL、後がXPL。視野は約6mm✕4mmです


これらの写真から、この石は斜長石・石英・黒雲母が主体で僅かに角閃石を含むことが分かります。岩種はトーナル岩でしょうか。私にはカリ長石は認識できず斜長石はこの写真の範囲でも自形の粗粒結晶が幾つもありますから、岩にみられる大きな斑晶も斜長石と見て間違いないと思います。

石英は長石より干渉が大きくこの薄片ではXPLで僅かに黄色く色づいて写ります。黒雲母は皆新鮮で、薄緑~褐色の多色性を示し軸色は殆ど不透明鉱物と見紛うほどに暗いものもあります。最後の4枚の写真には緑ぽい軸色の角閃石が下側に写っていますが、黒雲母に比べると角閃石はどれも虫食い状態で変質が進んでいます。

サンプルG 同じく安濃川上流部我賀浦川・加太花崗閃緑岩の転石です。全体に色が黒く異質な深成岩です。見た目は斑糲岩のような感じを受けるのですが、よく見てみると白色鉱物の粒間に存在する黒雲母が石全体の色調を決めている様子で透明度の高い石英が多いため、内部の黒雲母の色が石英を透して表面まで透けているのではないかと思われます。

サンプルG 黒い表面の割には透明感がある石で、石英と黒雲母の多さが普通の花崗岩や閃緑岩にはない色調を出している様子。上の写真では白雲母を含んでいるように見えるが白雲母は存在しない


サンプルG 上の写真でも石英結晶の部分が黒く沈んだ色調で石全体のトーンを決めている。長石は白色だが透明度が低いため内部の黒雲母の色をあまり反映しない。


サンプルG 上左は薄片を反射光、右は透過光で写したもので、白色鉱物でも透明感の高い石英(反射光で暗・透過光で明)の比率が高く50%以上ありそうな様子が見て取れる。

サンプルG 以下2枚の偏光顕微鏡写真は共にXPLで視野は約10mm✕6.7mmです


サンプルG 以下4枚の偏光顕微鏡写真は最初がPPL、後がXPL。視野は約6mm✕4mmです


長石の多くは斜長石ですが正長石や微斜長石も有る様子です。面白いのは石の表情は全く違うのに偏光顕微鏡でみるとサンプルCの黒雲母花崗閃緑岩とあまり変わらないことです。GとCの相違が主に石英の比率だけで含まれる鉱物に大きな違いはないため当然といえば当然のことですが、斑糲岩風の外観からはなかなか想像できないことでした。

次のページでは白雲母を含む石について幾つか取り上げてみます。

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