鈴鹿川・緑色岩

緑色岩・塩基性岩起源変成岩

玄武岩や斑糲岩のように有色鉱物の比率が高い岩石が熱変成を受けると緑色岩と呼ばれる緑がかった石に変化します。鈴鹿山脈北部の谷には古・中生代の海洋底に起源をもつ玄武岩質の付加体が存在し、数億年の時を経て淡い緑ががった緑色岩に変化しています。

上左は鈴鹿山系北部の滋賀県側を流れる神崎川の緑色岩( 玄武岩 )転石。やや青みがかって見える。上右は永源寺ダムに注ぐ佐目子谷の緑色岩・転石。この谷の石は緑色岩か湖東流紋岩類の溶結凝灰岩が殆。

ところが鈴鹿川で見つかる緑色岩の中にはこれら変玄武岩よりも一際緑の濃い蛇紋岩と思われる石が見つかります。蛇紋岩は橄欖岩が加水変質したものですからその源岩はマントルに起源をもつ橄欖岩と云うことになりおよそ鈴鹿や布引の山では考えにくいことですが、そんな石が鈴鹿川に転がっているのも不思議な話です。

鉱物を確認するために勧進橋下で拾った石を薄片にしてみましたが、蛇紋石の網目構造の内部にはまだ僅かに橄欖石の残っている部分があり私の知識では蛇紋岩に間違いなさそうです。鈴鹿山脈南部に蛇紋岩の産地が在ると思えませんから、これらの石は異地性のものだと見られます。

県下に蛇紋岩産地として有名なのは鳥羽の安楽島の先にある菅島で、此処では戦前から建材用に蛇紋岩や橄欖岩の採石を行っています。私の子供の頃は三重県庁周辺で国道23号沿いの舗装工事でも蛇紋岩が路面舗装のアスファルトに混入されており、舗装の現場には10cm以上もある白い繊維状のアスベストを挟んだ綺麗な濃緑色の石を見つけて持ち帰った記憶があります。

上の写真の石はこれら土建材に使われていた石が、道路の崩落などの原因で河川に流れ込み僅かな転石として拾えるのだと解釈しますが、あるいは現地性の石である可能性も残ります。

勧進橋上流の転石薄片。下はそのサンプル写真。蛇紋石の網目のなかにまだ僅かに橄欖石を残存させている。クロスニコルで鮮やかなのは多くが輝石

五万分の一地質図幅 亀山地域の地質・Ⅵ 岩脈  によりますと、前田川上流にはアルカリ玄武岩及びランブロファイアーの記載があります。この記述によると" 暗緑色,緻密,無斑晶質の岩石で,微斑晶として,単斜輝石(新鮮),か んらん石(仮像のみ.蛇紋石・タルク・アクチノ閃石等に変化)を多量に含み,石基は完晶質で,主に 斜長石・単斜輝石・鉄鉱及び緑泥石(変質鉱物)からなる  "とありこの記載は標本にした石と似通っていると思います。

前田川は安楽川の水系に属しその上流の関町の鈴鹿川に転石が流入することはあり得ませんが、或いは鈴鹿川やその支流小野川水系にも、どこかにこの岩脈の貫入があり、そこからの転石が見つかるのかもしれません。

勧進橋上流の緑色岩転石のオブジェ。緑色岩は斑レイ岩や玄武岩の塩基性岩を源岩とするだけに輝石や角閃石類の細粒有色鉱物が多く、磨くと暗緑から黒光りする石になる。部分的に緑の強い部分は輝石以外にも緑簾石や緑泥石が入っている

緑色岩は鈴鹿川では多くありませんが、古生代海洋底の玄武岩を起源とするものが鈴鹿山脈の北中部や西部には付加帯として多く分布していますから滋賀県側の野洲川や愛知川ではたくさん見つかります。緑色岩も変成の程度によって上の写真のように方解石や緑簾石がベルト状に晶出したものもみられます。