望遠撮影

望遠撮影・超望遠ズーム

顕微鏡撮影などのマクロ撮影の対極にあるのが望遠撮影です。マクロ撮影では小さい撮影対象とレンズ間の距離は短く、レンズと撮像素子までの距離を変化させて拡大率を変えます。

これに対して望遠撮影は撮影対象とレンズ間の距離が非常に大きく、撮像はほぼレンズの焦点となる平面に固定されます。

被写体はレンズによって焦点面に逆さまに投影されるので被写体の大きさと投影画像の比は、被写体とレンズ間距離とレンズの焦点距離の比に等しくなります。

このため望遠レンズの拡大率を上げるためにはレンズの焦点距離を長くする以外になく、このことが残念ながら現在の望遠レンズを長大で扱いにくいものにしています。

今日カメラの機能は広角や標準レンズの分野では携帯内蔵のカメラの性能が、もはやガラパゴス化し始めているデジタル一眼レフなどよりも性能面でもコストの面でも大きく凌駕し始めていますが、こと望遠撮影に関する限りまだ大型カメラのアドバンテージがあります。

近い将来全く新しい原理による望遠レンズが開発され、携帯に組み込まれてデジカメを駆逐する日が来ると見られますが、それまでは我が日本のカメラメーカーも何とかやって行けそうです。

左よりEOS KissX1-CANON 100-400mm OM-D EM5MK2-LEICA 100-400mm EOS KissX-TAMRON 100-300mm LUMIX G6-LUMIX 100-300mm

カメラの撮像センサーとカメラおよびレンズの関係は、カメラの撮像センサーのサイズが大きいほど通常はレンズも大きくなり一般にカメラ筐体も大きくなります。

大きな撮像センサーでは画面の隅々までシャープな画像を結ばせるためにレンズに求められる要求が厳しくなって高価なものになりがちですから、素子の小さいマイクロフォーサーズ機はサイズやコストの点で有利になります。

写真上はCANONのAPS-C機 ( センサー : 24X17mm ) とPANAのMICRO FOUR THIRDS機 ( センサー : 17X23mm ) の比較で、上写真中央より左側がCANONとPANAの400mmズーム。右側がTAMRONとPANAの300mmズームです。写真で見ても大きさの差は明白ですが、手持ちした際の重量はマイクロフォーサーズ機の方が圧倒的に軽量で取り回しが楽です。

LEICA 100-400mmとLUMIX 100-300mmの比較。望遠100mmの差でかなりレンズ長が増える


私がマイクロフォーサーズ機を好む大きな理由の一つは、撮像センサーの小さいマイクロフォーサーズ機は望遠レンズも小さくて済み持ち運びの負担が軽減されるからです。

無論小ささからくる欠点もあります。センサーが小さいぶん暗所ノイズが多く撮影範囲も狭くなりがちです。ことに星のように無限遠の点光源を撮影する場合など、星の明るさはF値でなくレンズ前玉の面積によって集光力が決まってしまいますから、同じF値であっても大口径のフルサイズ機とレンズの小さいマイクロフォーサーズ機では集光力が大きく異なり同じ星夜を写してもマイクロフォーサーズ機では大きく見劣りします。

上はLEICA 100-400mm 200mmにて10秒露出下はOLYMPUS 40-150mm F2.8 150mmにて10秒露出したオリオン大星雲。どちらもカメラはOM D-EM1 mark2  600mm天体望遠鏡でガイド。OLYMPUSのレンズのほうがF値が明るいので解像感も上がるような気がする。

暗い星まで写し込もうとする星夜の撮影には、長時間シャッターを切ろうとすると星の動きに合わせてカメラを追尾させる必要があるため、カメラを天体望遠鏡に同架して露出時間内の星の動きを望遠鏡でトレースして撮影画像がブレないようにすることが必要です。

暗い星まで写し込むにはカメラのレンズもできるだけ明るく前玉の大きいものを使用して集光力を上げる必要があり、この点マイクロフォーサースは不利になります。上はVixenのED80Sfに同架したOLYMPUS 40-150 f2.8とOM-D EM1-Mark2の組み合わせです。できればフルサイズの300mmf2.8クラスのレンズを使いたいものですがLEICAの200mmf2.8が最大なのは残念なところです。

上写真はOLYMPUS 40-150mm F2.8 150mmにて10秒露出したプレアディス。600mm天体望遠鏡でガイド。星夜の撮影にはもう少しレンズ口径が欲しいところだ

しかしこれらの特殊な撮影条件にこだわらなければ、写真は機材よりも環境条件や被写体に対するシャッターチャンスによってその真価が問われますから、日常的にカメラを持ち歩く者にとっては機動性に富むコンパクト・軽量機が一番で少々画質が悪くとも記録写真の大きな妨げにはなりません。


このため最近ではAPS-C機を持ち歩いて撮影することはほとんどなくなってしまいました。昨今国内カメラメーカーの凋落から、各メーカーとも性能・価格競争を諦め値段高くて利益率の良い、フルサイズ機の販売ばかりやっていますけど、この調子では早晩カメラそのものがすべて携帯に置き換わってしまう日も遠くないような気がします。マイクロフォーサーズ機の望遠レンズでは、LEICAの名を冠したLEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mmは楽に手持ち撮影がこなせるサイズながらその描写力は強力で私の所持する望遠中では最強です。

ただコンパクトという点では400mmの長さはかなりきついので気楽に持ち歩けないのが今一つ残念な点です。  LEICA 100-400mm の望遠側で撮影した写真を下に掲げておきます。

LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm F4.0-6.3による撮影例。カメラはOLYMPUS EM5 MK2とEM1-MK2による