鈴鹿川・花崗岩類

深成岩・花崗岩類

上写真は鈴鹿川・亀山大橋下流の転石・加太花崗閃緑岩。青灰色のカリ長石を含んだ石で安濃川水系にも見つかる

地質図Navi 20万分の1地質図幅 名古屋 (第2版) より

深成岩類の鉱物組成比率による命名規則・QAPF図    Q : 石英(Quartz)   A : アルカリ長石(Alkali feldspar     P : 斜長石(Plagioclase)    F : 準長石(Feldspathoid) 

上の地質図にある様に鈴鹿山系の花崗岩類は主に竜ヶ岳から那須原山・油日岳まで鈴鹿山脈の主稜線を形成する鈴鹿花崗岩G5と、加太盆地の周囲に広がった加太花崗閃緑岩G3に分かれます。下の写真の石の幾つかは有色鉱物比率の多い加太花崗閃緑岩でしょうか。また加太盆地の南部では古紀地殻の砂岩類と花崗岩類の接触部分もみられます。

石英と斜長石に黒雲母の斑晶が目立つ鈴鹿花崗岩。真ん中は優黒鉱物をほとんど含まないアプライト質

花崗岩の形成年代は共に中生代後期白亜紀。8000~6600万年も以前で日本列島もまだ存在せず地殻の一部が南中国大陸の一部として大洋に面した大陸東縁にあった頃で地上は恐竜類全盛期の話です。同時代の花崗岩は中国大陸の東沿海部に2000km程も連続して存在しており、大陸の東縁は花崗岩マグマが噴出する巨大火山の時代でもあったようです。

花崗岩と古紀変成岩との接触境界に近いとみられるミグマタイトの文鎮。変成岩( 黒雲母片岩 )が花崗岩マグマによって部分溶解して混ざりあったもの

鈴鹿花崗岩は御在所山から釈迦ヶ岳にかけての辺りが固結時の中心部に当たる様子で粒径の大きい石英とピンク色のカリ長石の斑状結晶が良く観察されますが、南部の鈴鹿川周辺では黒雲母と白色の斜長石・カリ長石が目立ちます。

上は鈴鹿花崗岩の固結中心部とみられる朝明川上流部の花崗岩転石。南部の鈴鹿川のものと比べて斑晶は大きくピンク色をしたカリ長石がよく目立つ

朝明川転石の花崗岩オブジェ。石の面白さは鈴鹿山脈南部・鈴鹿川の白・黒斑の花崗岩よりは釈迦ヶ岳周辺の石が色合いもよく斑晶も大きくて良い

これらの鈴鹿花崗岩は琵琶湖東部地域に分布する湖東流紋岩類を産んだ巨大火山のカルデラ深部に蓄えられたマグマが固結し、近江盆地から琵琶湖を取り巻くように分布する一連の火成岩帯の一部と見られています。

鈴鹿川・忍山大橋の転石・鈴鹿花崗岩。有色鉱物は殆どが黒雲母。無職鉱物は石英と白色の斜長石・カリ長石

中には細粒石英主体のアプライト質のものから、石英・長石が大きく成長したペグマタイト質のものも見られますが、鈴鹿山脈中部のようにピンクのカリ長石はあまり見つかりません。

鈴鹿川・忍山大橋の転石・鈴鹿花崗岩で有色鉱物比率の低いもの。結晶粒度は場所によって変化が多い

鈴鹿山脈南端の油日岳・那須ヶ原山・高畑山・三子山の南麓以南には鈴鹿花崗岩よりも斜長石の多い加太花崗閃緑岩が広がります。鈴鹿花崗岩との違いは無色鉱物(石英・アルカリ長石・斜長石)比率の違いで定義されているため見た目での区別は難しいものがあります。

上は鈴鹿花崗岩と区別がつかない加太花崗閃緑岩。有色鉱物中に角閃石を多く含む(写真では判別困難)が、場所によっては角閃石を含まない岩相もあるから地質図の源岩位置で区別する以外素人には判別が難しい

上は鈴鹿川・忍山大橋の転石 加太花崗閃緑岩の薄片写真。無色鉱物の多くは斜長石 一部に石英。右側のオープンニコルで茶色く見える有色鉱物は全て黒雲母

花崗岩と古紀変成岩とのミグマタイトの文鎮。変成岩( 黒雲母片岩 )が加太花崗閃緑岩マグマによって部分溶解して混ざりあったもの。褐色部は柘榴石が酸化してサビとなったもの

花崗岩や閃緑岩は全体に均質で転石も変化に乏しいため、持ち帰って楽しむにはミグマタイトのような混在岩のほうが模様にも大きな変化が生じるので削ったり磨いたりする面白味も倍加します。

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