安濃川・石灰岩スカルン

これまでは鈴鹿山脈を源流とする河川の転石を取り上げてきましたが、以降は少し南に下って布引山系・青山高原周辺を水系とする河川を見ることにします。

安濃川・笹子川・嘉嶺川・我賀浦川

安濃川は布引山地最北端の錫杖ヶ岳から経ヶ峰の一帯を水系とする二級河川で、その上流部には工業用水の確保と農地灌漑及び水利を建前として1981年より6年ほどの歳月をかけて安濃ダムが造られています。計画的な土建需要を生み出すための工事であり、その後の堆積土砂の撤去等ダム管理にかける多大の経費を鑑みると、自然河川のままで河川管理を続けたほうが現実的であったのではと思わずにはいられません。

ダム建設以前は安濃川上流には美しい河内谷が広がり笹子川・嘉嶺川・我賀浦川等の支流が分流していましたが、現在はダム湖の錫杖湖へと注ぐ河川となっています。これらの河川の転石は基本的には鈴鹿川と同じで、新領家花崗岩類、領家変成岩類が卓越しますが、安濃川上流河川の特徴としてどの支流でもよく探すと先にも述べた赤・白・緑の石灰岩スカルン転石が見つかります。

安濃川の上流部では巨大なスカルン転石が川床に埋まっている。過去の豪雨の際、谷の上部から崩落した大量の土石に混じっていた様だ

三色のスカルン転石は大きなもの以外なかなか見つかりません。有色鉱物は結合が強固で簡単には浸食・破砕されないためのようですが運良く手頃な大きさのものが見つかると形を整えて磨いてやりると美しく輝いてくれます。

上はスカルンの台石。こんな平たい転石はまず見つからない。たぶん鉱物マニアが原岩から割取った砕屑片と思う。

スカルンはその構成鉱物のうちでも方解石が柔らかいので河川を下るとまず失われてしまいますが上流域では方解石だけが分離した転石も見つかります。どれも結晶の粒度が大きいのが特徴で時には数 cmに達する結晶からなる石もあります。

安濃川の方解石・転石は御幣川などに比べると遥かに結晶粒度が大きい。一般に南に下るほど接触変成の程度が強くなる様だ

平行四辺形の方解石結晶が無理やり集合したような転石。粒度が荒く相互の結合が弱いから流下する過程で川床とぶつかってすぐに無くなってしまいそうだ

上の転石は石灰岩が硅灰石の放射状結晶に変わっている。過去には大量の珪灰石の転石がみられる場所があったが幾多の豪雨をへて河相も変わり無くなってしまった。

硅灰石の放射状結晶の集合と見られる石。緑色はたぶん灰鉄輝石、大きいものは角閃石も含んでいそう

方解石は白くてよく目立つので谷の川床にあってもわりと探しやすいのですが、その逆にほぼ有色鉱物ばかりからなるスカルン転石も稀に見つかりますが固くて摩耗しずらいためか数kg以上ある大きな石が多いようです。

有色鉱物はベスブ石と柘榴石が共生している模様だが私には判別できない。粒度は結構大きいからきれいな面を見せる石があるかもしれない