ジャム

ロシアの小説を読んでいますと、よくジャムの記述が登場します。トルストイの「アンナ・カレーニナ」には貴族の下働きの女と、その家の新妻がいちごややまもものジヤムを作る際に水を加えて煮詰めるか、水を加えずに煮詰めるかで意見がわれる場面が出てきますし、煮立ったシロップをさじでかき混ぜる短い描写では、艶のあるジャムシロップの固まった皿を舐めてみたくさえなります。私は学生時代にロシア小説を愛読しましたので、サモワールでたてたお茶を木苺やすぐりや苔桃のジャムといっしょに飲む異国の食文化の光景に、ある種のあこがれを覚えたものです。

ヨーロッパ起源のジャムの歴史はとても古く、砂糖の代わりに蜂蜜を使って作っていたそうですが近代に入っても蜂蜜や砂糖は一般庶民には高級品で簡単には手に入りませんでしたから、専ら社会の頂点に位置する貴族階級や一部中産階級の日常生活で使われていたようです。特にロシアではサモワールでお茶をたてると、お茶に混ぜて楽しんだりジャムを舐めながらお茶を飲むのが日常的な習慣となって、19世紀の末にはある程度下層の人々にとってもジャムや砂糖が日常的な食品となったようです。

サモワールで飲むお茶 ( 河出書房 世界文学全集 ドストエーフスキイ「カラマーゾフの兄弟」挿絵より )

冬の寒さがことに厳しいロシアにあっては、サモワールで熱いお茶を沸かして飲むことは、アルコール濃度の高いウォツカ等の飲酒と同様に、体を温めて凍える寒さから身を守る上でも効果的ですから、広く一般にも広まったのでしょう。19世紀末にロシアの作家チェホフは未だ春の訪れを見ないシベリア街道を馬車で横断してモスクワからサハリンまでの大旅行を行いますが、街道沿いの駅逓や農家などか旅人のために無償でサモワールに茶を立てて振る舞ってくれることに感激して妹マリアに宛てた私信の中で「このお茶こそ真の慈善です」と述べています。

高価な砂糖やジャムは旅人が持参ていたようですが、厳寒の地を旅するにあっては、街道沿いの農家が振る舞ってくれる一杯のお茶が冷え凍えた旅人の心を解きほぐし人心地を呼び戻してくれたことは容易に想像できます。熱いお茶に添えて甘い砂糖やジャムを口にすれば、更に先に進もうとの意欲が湧こうというものでしょう。ロシアのお茶とジャムの食文化はこのような環境が産んだともいえます。

日本にジャムがもたらされたのは明治維新以降で当時の日本を席巻したヨーロッパ文明とともに、食文化の一つとしてジャム作りがもたらされました。最も南蛮との貿易が盛んであった安土桃山時代には、多数の南蛮人が堺や大阪を訪れていましたから、当然彼らは日本にも保存性に優れたパンやジャムを持ち込んでいたと思われますが、ふんだんに砂糖を必要とするジャム作りは国内に伝わらなかったようです。またジャムの材料となるラズベリーやイチゴも日本では馴染みのない果物であったことも一因かもしれません。

現在では様々な国の様々な種類のジャムも簡単に手に入って手軽にに味わうことができます

明治の文豪夏目漱石は胃弱でありましたが大の甘党で、ジャムを一瓶まるごと舐めてしまうこともあったようです。当時のジャムは未だ大変高価で庶民が手軽に食べられるものではありませんでしたが、明治34年に新宿中村屋の相馬夫妻が帝大正門前の中村屋を700円で買い取ってパン屋を引き継いだ頃は、新しもの好きの都市の大学生やインテリの間には、除々にパンやジャムの食文化が広まりつつあったと思えます。

この前年の明治33年より既にジャムパンはつくられていていましたが、苺のジャムではなく杏のジャムで、苺ジャムが普及しだすのは終戦以降とのことです(Wikpedia -ジャムパンより)私は終戦後の生まれですが、幼児に記憶のあるジャムパンは苺ジャムのことで、当時ジャムとはイチゴのジャム以外記憶になかったと思います。ジャムにマーマレードやピーナツなどの種類が有るのを知ったのは、日本経済が成長期に入った昭和30年後半頃からでしょうか。

私の幼児期には未だ一部食品の配給制さえ残っており、家でも高価な砂糖の代わりに代用甘味料のサッカリンなどという怪しげな添加物まで使っていた時代ですから、当時に砂糖をふんだんに使ってジャムを煮込むなど、庶民の生活感覚からは程遠いものでありました。最も私がまだ幼児期に父親がどこからかもらってきた箱詰めクッキーには、クッキーの上に苺ジャムや杏ジャム・オレンジマーマレードジャム等が乗っかっていて、世の中にはこんなに美味しいものがあるのだと子供ながらに驚き感動した覚えがありますから、あるいは当時も一部の裕福階級の人たちは色んな種類のジャムを日常的に口にしていたのでしょう。

時が流れて1964年の東京オリンピックの頃辺りから、遅まきながら私の暮らしていた三重の地方都市でも、テレビや新聞・雑誌を通じて様々な情報が日常生活に溢れる情報化の時代を迎えつつありました。タキイや大和農園など関西の種苗会社からは毎年季刊の園芸雑誌が送られてきて、それまで身近に見られなかった海外の花木や果樹が簡単に手に入る時代になったのです。私は様々な園芸誌によって漿果をつける色んな花木や果樹を知り、何時かはこれ等の木々を植えて漿果を収穫しジャムを作って見たいものだと思いました。

ラズベリー・ブルーベリー・ユスラウメ・ジューンベリー・・・漿果の多くがジャムにできる

あれからいつしか何十年もの時が過ぎ去り、今では毎年季節に応じて六種類程のジャムができる様になりましたが、最初のうちは収穫に合わせて四季折々の味覚を持ったジャム作りが楽しくて、色んな本で知識を仕入れて作り方を微妙に変えてみたり材料を混ぜ合わせてみたり工夫してみたのですが、年とともに果木も大きくなり漿果の収穫もどんどん増えて、とても一家で処理できる量を超えてしまうにいたりました。

最近ではジャムづくりも毎年嫌でも巡ってくる決まった作業のようになってしまい、昔の様な新鮮さが失われてしまったのはすこし悲しいことです。季節ごとに作るジャムの種類はつぎのようなものです。まず1~2月には八朔が実るので八朔ジャム。4~5月には金柑が熟れるので金柑ジャム。5月は苺ジャム。6~7月は梅桃(ユスラウメ)と木苺(ラズベリー)のジャム。7~8月はブルーベリージャム。10月は紅玉の林檎ジャムと続きます。

リンゴジャムで楽しむ紅茶。紅玉の甘酸っぱさがジャムの甘みを引き立てて紅茶にとてもよく合います

リンゴだけは何度試みても私の家では満足に収穫できなかったので、紅玉が出回る頃にかみさんが市内の青果問屋で買ってきます。それ以外は全て自家製です。梅桃は1キロ未満・木苺は数キロの収穫ですが、他はみな10キロ以上も取れるのでジャムにするのはごく一部です。時には梅・グミ・桑・無花果・花梨等をジャムにすることもあります。

なかでも力を入れたのがブルーベリーの栽培で、もう15年間、品種は20種類以上を育てました。土壌の酸度を上げないと上手く育たない厄介な木で、土壌を成分未調整のカナディアンピートモスに置き換えて育てますが、毎年硫安で酸度を補い、適時硫黄粉末を散布して酸度を確保してやらないと枯らしてしまいます。

摘んだすぐのブルーベリーは表面が白っぽく粉をまぶしたような実が結構あるけれど、少し置くとどれも黒っぽく変わる

品種によって熟れる時期や味覚や実の性質、土壌との相性が異なり同じような栽培法を続けていても、気候や土壌との馴染みが悪いのか多くの苗が5~10年程で枯れました。今でも庭の一隅に残っているのは10株程で、そのうちの5株は2m以上の丈に育って毎年何キロも実をつけます。

品種はウッダードが実の大きさ・収量・味覚・土地や気候との相性どれをとっても一番優れていて7月中旬から8月中旬頃まで2~3キロほどは収穫します。次がティフブルー、まん丸で白っぽい感じの実は、さほど大きくありませんが見た目も上品で味もよく摘んでいても楽しくなります。実も多くつき、結実期もウッダードより長いのですが土地や気候との相性が今ひとつなのか、ウッダードやガーデンブルー・ホームベルのようには土や気候に馴染みにくく我が家では人の背丈を超える株にはなかなか育ちません。

最も成長が良いのはガーデンブルーで、この木は他の種のようなブッシュではなく、かなり太い幹と人の背丈を軽く超える高さの木になります。今あるものは一株に6cm以上の幹が2本でていて、他品種が2~3cmの幹が沢山寄り集まってブッシュ状の株となるのと比べても木と呼ぶべきでしょう。実は大きめで収量もありますが、結実して色付いて摘まずに居ると実が弾けてしまいます。ことに雨に合うと直ぐに実が弾けてしまうので色付けば手早く摘む必要が有ります。

ブルーベリーは品種が違うと実の形・サイズ・味覚・収穫期が違います。黒い実は受粉用の多花種です

ホームベルは土地や気候によく合うようで、あまり土壌管理をやかましくしなくとも大きく育って2m以上の株になります。実は小さめですが沢山つくので収量は上がります。味も悪くありませんが、ウッダードなどに比べると実の中に種や萼のザラツキが感じられものが結構有ります。これはガーデンブルーの小粒も同様で実の上品さはウッダードやティフブルーには及びません。

摘んだ実をそのまま食べると、品種による味や食感の違いがわかりますが、ジャムにするとどれも皆似たような味になるため、品種を分けてジャムにすることはやらずに皆一緒にして1~2キロずつジャムにして自家用に保存したり周りに配ったりします。瓶詰めにする際、瓶を十分蒸気煮沸しておけば、開栓しなければ1年間は十分に保存できます。ただしロシア風に紅茶と一緒に食べるにはジャムの色がきついようで専らヨーグルトに付け合わせて食べるようにしています。

紅茶との彩りが良いのは苺ジャムや金柑ジャム・林檎ジャムなどで、私は林檎ジャムの甘酸っぱいあっさりした上品な味との組み合わせがいちばん好きです。苺もシロップをしっかり煮詰めたものはとても良くお茶に合いますけれど、煮詰める際に少しでも油断して気を抜くと焦げ付かせて情けない目に合うので、程々のとろみがつくあたりで止めています。

金柑など多数の種を果肉から分離するのは大変手数がかかるけれどそれだけにジャムが出来ると嬉しいものです

金柑ジャムにする我が家の金柑は、実が落ちる始める5月末~6月まで置いておくのが最も甘くて果汁も多く皮の苦味も薄くなります。ジャムもこの頃に作ると甘さと酸っぱさが上手くバランスしてとても美味しいものが出来ます。ところが熟れた金柑はヒヨドリの大好物で、甘くなる4月の頃から連日実を突きに来るので、ついつい焦って一月近く早くからもいでしまったりするので、甘みよりも酸味と苦味の勝ったマーマレードにしてしまうことが多いです。

ただ金柑は漿果の割に大きな種がたくさんありますから、種を除くのが厄介です。この手間を考えるとずっと楽な八朔や夏蜜柑をジャムにするほうが賢明なのかもしれませんが、金柑の細かい皮はまた独特の味が出るので捨てがたく、5月が来ると毎年面倒だなあと思いつつもジャムにしてしまいます。

梅桃も小さな実の多くが硬い種で果肉は半分以下。分離するのは面倒です。しかしジャムにするとコクの有る素敵な味になります

この手の手間は、実が小さく中に硬い種を持った梅桃やジューンベリーについても言えます。果肉を分離するために軽くミクサーにかけて、その後で目の粗い金網で種を濾しますが、果肉だけ綺麗に濾し取るのは難しいものです。種と果肉の剥離を良くするため少し火にかけてみたり色々考えましたが結局は手で撹拌し力を加えて無理やり種から果肉を引き剥がす以外に気の利いたやり方は見つかりませんでした。

梅桃でいく瓶もジャムを作るのは、摘む手間も作る手間も結構掛かるのでなかなか大変です。またそのままでは煮詰めてもうまく固まらないので凝固剤としてペクチンやゼラチンを加えて適度に固めます。出来上がりはラズベリージャムよりはやや色が濃く、酸味の効いた味わいのあるジャムになります。

しかしジャム作りにあまり手間をかけたくないときは、摘んだ実をそのまま火にかけて砂糖を混ぜ合わせ煮詰めれば出来てしまうブルーベリーやラズベリージャムが手軽です。ラズベリージャムなどヨーロッパの子供向けのお話にでも好んで登場してくる様な手近で家庭的な印象ですが、確かに真っ赤に熟れたラズベリーの可愛い実は小人や妖精の世界によく似合っています。

ラズベリーの小粒で艶やかな赤には、苺とはまた違う魅力があります

日本にもラズベリーの仲間の木苺は沢山種類がありますが、洋種のラズベリー程の大きさと甘さを持った種は存在しないようです。この辺りでよく見かけるのは、白いきれいな花をつけるモミジイチゴとピンクの花が可愛いナワシロイチゴでしょうか。冬に実をつける冬苺もありますが、西向きの日当たりの良くない場所に生えるので苺としての印象はいまひとつです。

4月初めには開花するモミジイチゴ。漿果は黄色で味は甘味よりは水っぽい感じがする

ナワシロイチゴは6月始めに花が咲く。名前のように私の子供の頃は田植えも6月だったのだ。赤い実は味の良いジャムになるが実が小さいので集めるのが大変です

しかしこれら野生の木苺が近くに自生していたとしても、ジャム作りに使うためには最低でも300~400g欲しいですから、一度にそれだけの量集められる自生地はなかなか見つかりませんし、たとえあったとしても我が国では人里近くにある山野はまず皆個人の私有地です。勝手に他人様の土地に生えるものを取ってしまえばこれはいやでも窃盗に当たりますから、ここは素直に栽培種に頼るのが賢明です。

栽培種のラズベリーも沢山の品種があってどれが良いのか迷うところですが、何種類か育ててみると、品種によって全く収量がちがうし種(たね)の具合も違っていることがわかります。私はこれまでにサマーフェスティバル・サンタナ・インディアンサマー・マリージェーン等を育てましたが、インディアンサマーが最も土地に合って収量が多いと感じました。

2株あると初夏の結実期には1キロ以上とれますし、晩秋にも実が少し小さくなりますがそこそこの収量が有ります。ただし枝には結構細かい棘があります。また樹性も多少匍匐性があるため、放っておくと枝が地面に這って広がってしまいますから管理に注意が必要です。実が熟すと直ぐに赤黒くなって落ちてしまうので、収穫期には毎日熟したものだけを摘んで冷凍保存しておきます。

ラズベリージャムはその彩りも味覚もレアチーズケーキに良く合います。どこのお家でも自家製の素材で作るお菓子は最高でしょう

適量貯まれば必要量取り出してジャムにします。品種によっては種が多くてジャムにした時、ざらついて気になりますがインディアンサマーの場合、私はあまり気にならないので種やその他不要部分(小さい実では成長不良の部分があったりする)も特に裏ごしすることもせずそのまま煮詰めています。

どのジャムでもそうだと思いますが、糖分を控えるため砂糖の分量を1/2以下に抑えていると余程煮込まないと砂糖の粘度が上がらずになかなか凝固しません。柑橘系の凝固成分が多い素材であれば良いのですがラズベリーやユスラウメ等は簡単には固まらないので、短時間で手軽にとろみを与えるため、ペクチンなどの凝固剤を加えて固めるのが賢明です。最後はレモン汁で味覚の調整を行いますが、ベリー系はある程度多い目の量を加えるほうがスッキリと爽やかな味に仕上がります。

ラズベリーに似た仲間に、ブラックベリーと云う品種が有ります。日本の風土にあっているのかほうっておくと匍匐性の枝をどんどん出して雑草のように四方に広がります。薄桃色の可愛い花をつけラズベリーより少し大きく黒い実をたくさんつけるのでジャムにもなりますが色が黒いのと種の食感が気になるので私は数回しかジャムにしたことはありません。

6月に薄桃色の花をつけるブラックベリー。良く繁ってとても育てやすいが放置していると枝にブドウ虫が入る

成長が早く、日当たりの良い場所に植えておくと、一株でも数年で収穫期の7月中旬以降には何キロも取れるようになります。ただこの時期はブルーベリーも次々と収穫期に入るので今ひとつブラックベリーの収穫にまで身が入らず、近年の我が家ではそのまま完熟してみな地面に落ちてしまいます。

私の個人的な嗜好で今ひとつ人気のないブラックベリー。熟れるに従って暗赤色から黒に変わる。ジャムも濃い暗赤色

わざわざ収穫するために植えているのに実を利用しないとは、考えればブラックベリーの株に申し訳ない気もしますが、そこは花を楽しむ花木と割り切り気にしません。なにせ次から次へとジャムばかり作っていては、なるべく人に配って自家消費を抑えたとしても砂糖のとりすぎは否めず、健康を考えるとジャム作りも程々にとなります。

さてブラックベリーと言うと私など過去の一時期に電子通信関係の職業に身をおいたものとしては、嘗てiPhoneやAndroid端末とともに世界の携帯端末市場の雄であったBlackBerryを思わぬわけには行きません。幅広の筐体に小形のフルキーボードを配したデザインは、入力装置としての使い勝手の良さからヨーロッパを中心に、多くのシェアを確保していたのですが、近年ではiPhoneとAndroidのタッチパネル携帯に押されてか、BlackBerryの自社生産から撤退しOEM生産に切り替えるとの記事を見かけました。

BlackBerry OS搭載携帯 BlackBerry Classic  BlackBerry Webコマーシャルより

何と言っても狭い国内市場の中だけで覇を競っていた日本の国産携帯とは異なり、BlackBerryのOSは過去のある時期にはiOS・Androidとともに世界市場で標準的なOSの一つとして認められていたのですから。もちろん現在でもBlackBerry ClassicはBlackBerry OSを搭載して売られていますが、新製品はAndroidを搭載して売られておりBlackBerryOSが消えるのも時間の問題かもしれません。

競争原理が支配する資本主義社会では製品の一極集中も避けられないものであるとすれば、何時かはiOSとAndroidの覇権争いも終焉して全世界がどちらかのOSに統合される日が来るのでしょうか。はたまたこの2つを凌駕する新たなOSを積む製品がヨーロッパあるいは中国あたりから登場して携帯の世界を席巻して覇者となるのかもしれません。

BlackBerry携帯の話のついでにもう一つBerryの名前を持った電子機器RaspberryPiのことを少し。この可愛い名を持つ装置は、イギリスで開発された1ボードの教育用コンピューターのことで、国内でも<6000円ほどで買えるものです。外付けでキーボード・マウス・モニターを接続しネットに繋げば立派に小型のPCとして通用しますから国内で持っている方も多数いるようです。

ラズパイの起動画面と本体。9×6cmのケースに収まる小ささだが、スマートホンを考えるとまだ大っきいのかも

相似図形が無限に続く数学的神秘世界マンデルブロー集合。20年程前のPCでこれをやるといつまでたっても終わらなかったものだ

このコンピューターはRaspbianOS(Linux)上でパイソン(Python)と呼ぶ高級な汎用プログラム言語を走らせることが出来るので、かく言う私も興味半分に1台買って時折遊んでいるのですが、結構高性能でマンデルブロー集合などの描画プログラムを組んで走らせてみると思いのほか高速に描画するので驚かされます。話がおよそジャムと関係のない無粋な向きに飛んでしまったようですが、このRaspberryPiはラズベリーの名に恥じない小粒ですぐれものだと言いたかったわけです。

まあ私は過去の仕事や嗜好の関係でベリーから電子機器が出てくるのですが、私の娘などはその手の世界は薬にもしたくない人間ですから、ラズベリーやブラックベリーからは当然美味しいお菓子やケーキのことしか連想しません。お陰で私も毎年パイやケーキやクッキーやら色んなお菓子を作ってもらって食べられるのでありがたい話です。

ベリーの実やジャムをふんだんに使ったお菓子づくりは横で見ていても楽しいものです

何と言ってもお菓子作りは完成すれば即みんなで食べられるため、ジャム作りよりは遥かに楽しみがあります。さらにジャム作りに比べると、素材の組み合わせやその制作過程の変化が無数にあり、同じ材料を使っても毎回色々と工夫して異なったできあがりにすることが出来るので楽しむ範囲が広がります。

ジャム造りの場合も、数種類の素材を組み合わせてミックスジャムにしたり、素材の一部を後から入れて素材の強く食感が残る様にしたり、カルメラソーズなみに煮詰めてみたりとその年で色々と作り方を変えますがお菓子ほどの変化が出せるものではありません。それならもっと色んな素材を取り入れて愉しめば良いのですが、年とともに日々の生活習慣を自然と固定してしまいあまり新しいことに手を出さなくなりました。

ジャムと紅茶で楽しむ軽食。お昼をパンで済ますことの多い私にとってジャムは誠に有難い食材です

柿や花梨など毎年たくさんなるのでジャムにしても良いのですが、花梨は切るだけでも固くてうんざりしますし、私には柿も花梨も手間の割にはジャムにしてそんなに美味しいとも思えず、糖分控えめの意識もあって結局は慣れ親しんだジャムばかり作る生活です。

隣国の中国は世界に冠たる食文化大国で夥しい種類の料理が存在しますが、何故かジャムを使ったお菓子や料理はあまりない様子で、わたしは台湾のパイナップルケーキ鳳梨酥 ( フォンリースー ) くらいしか知りません。蒸したり焼いたり揚げたりする点心は沢山あるようですが西洋のジャムにあたるものは造られなかったのでしょうか。

私も過去には仕事で何度か中国の暮らしを経験しましたが、ジャムが欲しいときは朝食のバイキングで出る苺や杏・オレンジなどの小さなカップジャムをこっそり持ち帰って使っていたので、ジャムについては特に気に留めませんでした。平時の間食や休日の軽食のためスーパーへ良く食品の買い出しに行きましたが、好物のヨーグルトや果物、ドライフルーツなどは色々見てまわつたものですが、ジャムがスーパーでどのように売られていたものかすら覚えがありません。

中国には飲茶の独自の文化があり飲茶館では様々なお茶を味わえます。とても高額なお茶もありますが、日本人が喫茶店でコーヒーや紅茶を飲むような感覚で地元の人達が楽しむ安価なお茶も有ります。私は休日に通訳譲と市内見物に出た折には興味本位で茉莉花茶・菊茶・薔薇茶等の花茶を飲むことがありましたが、中国のお茶は日本茶同様に、もっぱらそのお茶の香りと味わうものでコーヒーや紅茶の様に砂糖やクリームを入れるものではないことを知りました。

花茶を入れると、それまで乾燥して小さかった花がコップや茶碗いっぱいに広がって見ていても面白いものですが、私には茉莉花茶や薔薇茶は砂糖やジャムともよく合いそうに思いました。通訳嬢に薔薇茶の産地を尋ねていたら、過去に西域には薔薇を栽培する国があって薔薇茶や薔薇ジャムを作っていたとのこと。薔薇からジャムが出来るとは初耳で一度味わってみたいものだと思いながら未だに果たせません。