野草の撮影について

野草の撮影について

野外での植物撮影は、風や手振れの影響で被写体がぶれるのを抑えるため、なるべく明るいレンズを用いて、ISO感度も画質を損なわない範囲で上げ、シャッター速度を可能な限り早くすることです。

この結果、被写界深度が浅くなり対象全体にフォーカスを合わせづらくなりますが、部分的なぼかしは対象をくっきり浮き立たせる技法と割り切ってまずはブレを抑えることに努めます。このような配慮は、風があり、光の乏しい日陰などの撮影で威力を発揮します。

逆に被写界深度の深い携帯のようなカメラで撮影する場合には、広範囲に焦点が合うその特徴を最大限に生かして、近距離から遠距離迄くっきりと描写することによって効果が出る対象や構図を選んで撮影します。

上の写真はそれぞれ広角レンズで近距離から遠距離迄フォーカスを与えて奥行きを表現したものです。これに対して下の写真は望遠で猫にフォーカスを据えて撮影したものです。

レンズの使い方で遠近の表現に差が出ることが分かります。広角レンズを用いるとどうしても被写体が小さくなりますから、大きく写すには接写が必要となり、小さい野草を捉えた私の写真ではあまり広角レンズを用いることがないのですが、使い方次第でとても素晴らしい効果が出せるのでそこまでの腕がないのが残念に思います。

早春の山野に咲く野草の撮影は、私にとって登山シーズンの再開と共に訪れる大きな楽しみの一つだ

野草の撮影で大切なことはなるべく花の近くに近寄らず遠くから撮影することです。生活力の強い平地の草花は別ですが、山地上部に生える高山性の植物は生息環境が限られていて、周囲の地面を踏み固められ土壌環境が変化すると衰えてしまうのが常で、幾つかの高地の花園が登山者の立ち入りによって消滅しています。

花の真上に屈みこんで携帯で接写している方が多いのですが、決して好ましいことではありません。花が咲く環境を保つためには、長焦点のマクロや望遠レンズを携帯してなるべく近接撮影を避け遠くから撮影するよう心掛けることが必要だと思われます。