藤江遼(東大)
エスペラントは異母語話者間のコミュニケーションの達成と,母語話者と第二言語話者の間の不公平な状況の解消を目指し「誰の母語にもなるべきではない」という言語の中立性を理想に掲げた人工言語である.しかし言語の普及に伴いエスペラント母語話者が現れ,これが母語話者と第二言語話者の間に不平等を生み出し中立性を破壊すると危惧されている.本研究では,言語の中立性を維持しつつ普及させることの可能性を進化ゲームの枠組みに基づき検証する.3言語(6種)のバイリンガル系について,言語シェアの時間発展をレプリケータ方程式で記述し解析を行った.特に,中立性維持と普及の条件について,言語習得コストと母語話者-第二言語話者間の利得差に注目して調べた結果を報告する.