藤本悠雅(総研大)
間接互恵は人間の大規模な協力を説明するメカニズムである。そこでは個体は評判を用いて相手と協力するかどうかを選択し、他者の評判を更新する。主要な問題は行動を選択するルールと評判を更新するルールがどのように進化するかである。すべての個人が他者の評価を共有するpublic reputationのケースでは、Simple Standing (SS) やStern Judging (SJ) と呼ばれる評価ルールが協力を維持することが知られている。しかし、個々人が独立して他者を評価するprivate assessmentのケースでは、協力が維持されるメカニズムはまだほとんど知られていない。本研究は間接互恵による協力がprivate assessmentでも進化的に安定であることを初めて理論的に示す。具体的には、SSは安定しうるが、SJは決して安定しないことを見出した。これは、SSがその単純さによって対人的な評判の不一致を修正することができるためである。一方、SJは複雑すぎるためエラーの蓄積を避けることができず、協力の崩壊につながる。我々は適度な単純さがprivate assessmentの下で協力を維持する成功の鍵であると結論付けた。この結果は人間の協力の進化に理論的根拠を与えるものである。