研究テーマとして,「生物多様性の変動機構の解明と保全」を掲げています.すなわち,長い年月をかけて培われてきた生物多様性の現状を把握し,また今日に至る過程・あるいは将来的に向けての生物多様性の変動(進化,種分化,絶滅など)に注目し,そして今ある生物多様性を将来に引き継ぐための保全活動に取り組んでいます.これら目標を達成するために,「フィールドからDNAまで」をモットーに,現地調査(フィールド)において生物や周辺環境の現状を知ると共に,遺伝子解析(DNA)を用いて目では見えない生物の履歴や健全性を探る活動を展開しています.
研究フィールドとして,最近は富山県を主な舞台にしています.富山県は,標高3000m級の立山連峰から,水深1000mを越す富山湾まで,決して広くはない範囲に,高低差4000mを有する多彩な地形や自然を有しています.また,日本列島のほぼ中央部に位置するため,南北両方に由来する生物の出会いの場でもあります.このような,富山県は,豊かな生物の多様性を育んでいます.そのため,富山県は日本の縮図と捉えることができ,恰好の研究フィールドといえます.
研究対象生物として,富山の自然を象徴する生物に注目しています.たとえば,高山帯のライチョウやチョウ類,中山間地のイノシシ,ニホンジカあるいはキツネなどの中型哺乳類,湧水生態系のスナヤツメ隠蔽種群(北方種および南方種)やタテヤママリモ,田園生態系の魚類(イタセンパラおよび在来タナゴ類など)やプランクトン類,そしてヒキガエル類やサンショウウオ類などを研究対象としています.また最近では,環境DNAを用いた生物相評価にも取り組んでいます.詳細については,研究トピックス等をご覧ください.さらにその中でも「今」注目し、取り組んでいるテーマについては、最近の注目テーマをご覧ください。
補足1:かつては,「泥さらいからDNAまで」をモットーとしていました.当時は,川底の砂泥の中に潜るヤツメウナギを対象としていたため,河川でヤツメウナギを採集する様子を模して「泥さらい」と言っていましたが,最近では研究対象生物が多角化したために,「フィールドから,,,」と銘打っています.
補足2:「DNAからフィールドまで」というように,スケールの小さいものから大きいものへ,との表記ではありません.その理由として,このモットーでは,単に研究対象の「大きさ」を示しているのではなく,研究がフィールドで始まり,それを深めるためにDNAを用いる,という研究姿勢や研究の流れを表しているためです.
補足3:現在の主な研究フィールドは、上記の通り富山県です。ただし、テーマ次第では、他の地域の生物や環境を対象とした研究も行っています。同様に、対象生物も多岐にわたっており、今後も新たな生物を対象とした研究を展開していきます。
(2022年2月20日更新)