分子描画ツールChemtool
M1 Mac-UTM-Ubuntu
M1 Mac-UTM-Ubuntu
以前、Ketcherというブラウザ上で実行可能な分子描画アプリを紹介した。M1 Macでも利用できる貴重な存在である。M1 Macの場合、仮想化ソフトウェアであるUTMを利用すれば、そのアプリ上でUbuntu環境を構築して、豊富なLinuxアプリ群を利用することができる。その中に。Chemtoolという分子構造描画ツールが存在する.
マニュアルの説明
結合は 4 つの異なる角度設定 (30 度間隔の六角形,72 度間隔の 2 つの五角形 (異なる方向),および 45 度の八角形) で描画できる.これらのモードのすべてで中間角度も同様に可能である.この場合はマーカー ポイントを無視する.
簡単な分子を1個描いてみればすぐに習得できるので.以下,実例で説明したい.
次図は初期画面である。
Ubuntuの実行画面(背景 濃赤色)がM1 Macの画面の中に表示されている様子。最下部はMacのDock, UbuntのDockは縦表示。
例1 Oxepineの描画
テンプレートから7員環を選択し、ペーストする。
三段目のtextの欄に酸素Oを記入し,メチレンをクリックするとO原子に変化する.
molファイルで保存し,Avogadroに読み込みMMで構造最適化すると三次元構造が得られる。
作図ファイルの保存
目的に応じた保存や書き出しが可能である.
反応図を保存 (Save) するときは,拡張子として .cht を付ける.
Export機能
Avogadro等と連携したいときは.単分子をmolファイルとしてexportする.
例2 シクロヘキサノール
2段目のメニューの左端の6角形が初期設定されている.これを使って結合を伸ばしていく.水酸基を付けたい炭素原子をクリックすると,時計の文字盤みたいな点群が表れる.水酸基を置きたい方向に沿った点を選択すると結合が描かれる.6角形では,30. 60. 90. 120度の点群が選択可能.
置換基の付け方
三段目のtextの欄にOHを記入し,メチル基をクリックする.MeがOHに変化する.
複製
複製する場合は、選択した後、EditのCopyを使用する、Pasteはないがブルー体の選択部分を引っ張ると複製することができる。選択を解除するには、空白を選択する。OHを別の官能基に変える場合は上書きを二度繰り返す。
反応式と3次元構造の描画例(Diels-Alder反応)
生成物の立体構造は右図の通りであるが,二次元による表示はこの程度は可能.
シクロペンタエンおよび無水マレイン産は平面構造なので、描きやすいが生成物はエンド、エキソを区別する必要があるため立体的な描写が必要である。
Chemtoolで描いた擬似的な三次元構造はAvogadroで三次元構造に変換できるか?
Chemtoolのmolファイルは二次元であり、Avogadroで読み込んだ後も二次元構造であるが、Builderで水素を付加し、力場計算を行うと三次元構造に変化する。
ChemtoolのmolファイルをAvogadroで読み込み
水素を付加した構造
分子力場で最適化
環化付加体の描画と分子力場計算構造
上段メニューの各マークの説明(英文和訳)は以下の「折りたたみ文書」を見てほしい。
Chemtoolメニュー(オブジェクトの選択。移動、回転、反転、拡大縮小)の説明 折りたたみ文書
マークは線画、揃え、文字種、結合種、色、結合トグル、選択、移動、回転、最適化で構成されている。
「マーク」ボタンを使用すると、描画中のオブジェクトを「ゴムバンド」状の長方形で囲むことで簡単に選択できます。長方形の外側にある原子を選択範囲に追加する必要がある場合は、Ctrlキーを押しながら別のゴムバンドを描画してください。
選択されたオブジェクトは青色でハイライト表示され、すぐに操作できるようになります。
移動:左マウスボタンを押したまま、マウスでフラグメントを目的の位置までドラッグします。Ctrlキーを押すと水平方向のみの移動が可能になり、Shiftキーを押すと垂直方向のみの移動が可能になります。
注:個々の原子または結合のみを移動したい場合は、「移動」モードで選択してドラッグするだけで、事前にマークする必要はありません。
回転:マウスを水平方向に動かすと、マウスボタンを押したときに選択した回転軸を中心にスムーズに回転します。Ctrlキーを押すと、現在の描画モードの角度間隔に従って段階的に回転します。
フラグメントをその中心を通る水平面または垂直面を基準に反転(ミラーリング)するには、該当するメニューボタンをクリックします。
コピー:[コピー]メニューボタンをクリックすると、選択したフラグメントの正確なコピーが元のフラグメントからわずかにずらして作成されます。マークは自動的に新しいコピーに転送されます。
サイズ変更:マウスを水平方向に動かすと、マークされたフラグメントのサイズが滑らかに拡大または縮小されます。
削除:マークされたフラグメントを削除するには、ハイライト表示された後、マウスの3番目(通常は右)ボタンをクリックします。
最適化:[バケツとほうき]アイコンをクリックすると、重なり合った(重複した)結合とラベルを図面から削除し、ほぼ水平または垂直な結合をまっすぐにする機能が実行されます。
括弧とフレーム:括弧ボタンをクリックすると、括弧とさまざまなボックスを選択できるポップアップメニューが表示されます。選択した項目は、ユーザーが描画したマーカーボックスによって決定されたサイズと位置に描画されます。
ChemtoolとKetcherとの比較
結論としてKetcherの方が使いやすい。
Chemtoolでは、平面構造の場合は問題ないが、環化付加体の様な複雑な化合物の場合は慣れるのに苦労した。
Ketcherでは、原子、結合を選択すれば、該当部位が緑色に変化しマウス、矢印キーで細かく移動させることができる。
Avogadrでmolファイルを読み込んだ後、水素を付加してMMで構造最適化すれば目的の構造体が得られ、修正の必要がない。
ついでに
OSRAの場合は以下のような構造を描き、molファイルで保存、次いでAvogadroのMMで処理すれば目的の三次元構造が得られる。
ChemDrawに慣れた方には,Chemtoolのメニューは分かり難いかもしれないが、慣れれば問題ない。ブラウザ上で動くKetcherに加えて、動作環境の異なる分子描画アプリとしてインストールしておく価値はあると思っている。なお。Ubuntu上で使用できる分子構造描画ソフトとしてはxdrawchemもあるが、詳細な検討は行なっていない。
M1 Macでは、三種の化学描画アプリが利用可能である。
1)Wineを利用してChemdraw(高価)を起動
2)ブラウザ上でKetcherを起動
3)Ubuntu (UTM)でChemtoolを起動
M1 Mac UTM Ubuntuについて
M1 Macの外付けHDDやSSDにUbuntuをインストールして起動段階で切り替える手法は現段階では利用できない。M1 Macで唯一利用できるLinuxはAsahi Linuxだけである。
参考資料
Using Chemtool 1.6.11
Asahi Linux;Appleシリコン搭載MacでのLinuxカーネルと関連ソフトウェアの移植を目指すプロジェクトおよびコミュニティ、Linuxディストリビューション。開発途上の感あり。
(2026.3.20)