前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだために、熊本県内は大雨となり、10日深夜から11日朝にかけて熊本地方と天草・芦北地方に線状降水帯が発生した。そのため、非常に激しい雨が降り続き、土砂崩れや市街地の冠水が相次いだ。
2022年6月に開始された線状降水帯予測の的中率は4回に1回と言われていたが、最近は精度が上がったようだ。
気象庁は一時、玉名市と長洲町、宇城市、八代市、氷川町、天草市、上天草市に大雨特別警報を発表した。
熊本地方気象台によると、11日午前の1時間雨量の最大値は上天草市で114・5ミリ、天草市で110・0ミリ、八代市で92・5ミリといずれも観測史上最大となった。5段階の災害警戒レベルで最も高い「緊急安全確保」が9市町に出された。
一晩中、けたたましいスマホの緊急アラートの連続で眠れなかった。
8月12日、ようやく熊本市水防本部から以下のメールが発出された。
高齢者等避難の解除及び避難場所の閉鎖について
8月12日11時19分に大雨警報が解除されたことに伴い、市内全域に発令されておりました高齢者等避難を解除し、全ての避難者が退所された避難場所から順次閉鎖します。
あわせて、熊本市水防本部「レベル2 情報収集態勢」に移行しました。
8月11日 12:23の時点で、6日の降り始めからの雨量が県内で最も多かったのは甲佐で681.5ミリである。平年の8月1か月に降る雨の量のおよそ3倍の量が、わずか6日間で降ったことになる。
また、12時間の最大雨量は10時00分の時点で玉名市・岱明で404.5mm、山都町で399.0mm、八代市で382.0mmなど多い所で400mm前後に達した。球磨川が氾濫して熊本県人吉市を中心に大きな被害に見舞われた2020年の水害の際に12時間雨量が最も多かった水俣市の415.0mmであるが、今回の大雨はそれに匹敵する水準であった。
この表を見て思い出したのは昭和28年の熊本大水害のことである。その時は阿蘇で750ミリ、熊本で680ミリくらいの雨量であった。上の表からも分かる通り、今回は南阿蘇、阿蘇乙姫ではその半分程度である。随時チェックした白川水系の雨量やライブカメラの様子も異常はなかった。また、五木、山江、一勝地、人吉の雨量が非常に少ないことからも分かる通り、今回の豪雨は熊本県の中北部に集中したことが分かる。局所的な傾向は天草の本渡、牛深でも見ることができる。
記録的な大雨を受けて、熊本県内ではこれまでに10の市と町で災害救助法の適用が決まった。災害救助法が適用されるのは、熊本市、玉名市、玉東町、長洲町、美里町、八代市、宇城市、氷川町、上天草市、天草市である。これらの10の市と町では、今回の災害に伴う避難所設置などの費用を国と県で負担する。
12日夕方のニュースは、次第に明らかになってきている被害の様子を報じていた。今回の大雨の被害は、九州全域に及んだ。
8日(金)には、鹿児島県霧島市に大雨特別警報が発表された。福岡県などでは9日夜から線状降水帯の発生が相次ぎ、宗像市で住宅街にあるのり面が崩れた他、県内各地で冠水などの被害が相次いだ。
熊本県
25日午後3時時点で、住宅への被害は10市11町で。全壊が10棟、半壊が95棟確認されているほか、床上浸水は2348棟、床下浸水は3040棟に上っている。
18日現在、県内の住宅被害は全壊3戸、半壊5戸、一部損壊26戸。浸水被害は床上が1940戸、床下が2165戸の計4105戸で、市町村別では八代市が計1537戸と最も多い。
令和7年8月19日15時00分時点 (PDFファイル:171KB)
熊本市
中央区国分、繁華街の下通、市役所付近、上熊本、杉塘、段山、島崎、千原第高校周辺が冠水した。市役所地下駐車場や地下飲食店が水没。下通りの冠水した場所は、河川の氾濫によるものではなく、周囲より標高が低いために下水の排水能力を超えたことによるものらしい。
追記 9/25
熊本県は25日、先月の記録的な大雨に関する災害対策本部会議を開き、これまでに確認された被害を報告した。それによると、住宅への被害は25日午後3時時点で全壊が22棟、半壊が2360棟、一部損壊が5024棟、床上浸水が1336棟、床下浸水が345棟で、あわせて9087棟にのぼった。
また、農林水産業関連の被害について県が確認を進めた結果、被害額がおよそ861億円で確定したことも報告された。
損害保険会社31社でつくる日本損害保険協会によると、先月の記録的な大雨で浸水などの被害を受けた県内の車両に対する、車両保険の支払いの見込みの台数は、先月29日時点で1万2236台にのぼっている。
1953(昭和28)年の熊本大水害で最も被害の大きかった子飼橋周辺の水位(2025年8月11日午前8時28分50秒の国交省ライブカメラ)
阿蘇地域の雨量が比較的少なかったため、かなり余裕がある。
継続的に実施されてている橋橋脚スパンの拡大、河川改修及び新たに構築された立野ダムの効果かもしれない。
八代市
背後に山が迫る八代市興善寺町には、土砂が水路を越え、道路を埋め尽くす形で流れ込んだ。「道路に1mほどの高さの土砂が積もっており、さらに土砂は周囲の家屋や車を飲み込み、地区に甚大な被害をもたらした。農業用のハウス、車の被害、がけ崩れ、道路被害が顕著。
上天草市
619棟で床上や床下の浸水被害がでている。
甲佐町
土砂崩れが顕著。甲佐町ホームページを参照
今回の豪雨被害の報道で目立つのは、大規模な浸水ではなく比較的水位の低い浸水である。目立つのは車とエアコン室外機の被害である。車の場合、車による避難で水没、土砂崩れに巻き込まれた等とは異なり駐車場の冠水によるバッテリーの損傷が多いとのことである。そのため、バスの減便を余儀なくされるところも生じている。エアコン室外機も低水位浸水である。50センチ程度の冠水で生活に大きな影響が出ることに改めて注目し対策を講じる必要があるようだ。
(2025.8.20)