地表に現れた共役断層

国指定天然記念物

4月11日の朝日新聞に, 2016年に起こった熊本地震によって地上に現れた断層を見学できる施設が整備され,公開されるという記事が掲載されていた.  

熊本県益城町が谷川(たにごう)地区で整備していた布田川断層帯の見学施設が完成し, 熊本地震の前震から8年となる14日から公開された.

町内には, 熊本地震で地表に露出し,その後, 国の天然記念物に指定された断層帯が3カ所存在する. このうち谷川地区では, 「共役断層」と呼ばれる交差した二つの断層を見ることができる.

記事には, 垂直にずれた断層と水平方向にずれた断層の写真が掲載されていた(下図). 2センチずれただけで大地震になるというから, 「ずれ」の大きさから, 如何に大きな地震であったが容易に予想できる.

    以下, メモ代わりに行っている「新聞切り抜き」を利用し, 本ブログで紹介させてもらった. 文字が小さく読みにくいので, デジタル版も引用させてもらった(折り畳み文書).

朝日新聞デジタル

自分の田畑に断層が 益城町の語り部・永田さん

森北喜久馬2024年4月11日 10時00分

震度7を2度観測し、270人余りがなくなった熊本地震からまもなく8年。教訓を伝えようと、熊本県益城町の永田忠幸さん(40)は14日、町内で開かれる追悼の集いに登壇する。

    永田さんは、熊本地震の語り部として活動してきた。体験談をよく話すのは、自宅から車で5分ほど離れた堂園地区だ。ここで一家はコメやキャベツを作ってきた。記者が案内してもらうと、永田家の田んぼと隣の麦畑の境となる畦(あぜ)道がクランク状にずれていた。

     このずれたところが、地震を起こした布田川断層帯にあたる。町内の他の2地区とともに、地上に露出した「震災遺構」として2018年、国の天然記念物になった。

     2016年4月14日夜、最初の震度7の揺れで自宅の瓦屋根が落ちた。16日未明の2度目の震度7で、家は大きく傾いた。幸い、一家は余震を警戒して車中泊をしていたので、けがはなかった。

    地震が起きるまで、断層帯が近くにあることを知らなかった。だが、「自分の耕作地に通っていることを伝えて欲しい」と町に頼まれて語り部となった。

その後、気づいたことがある。

 「蛇ケ谷」「龍池山」「龍鼻山」……。近くには、蛇や龍に関わる地名がある。とりわけ、堂園池にまつわる民話には長さ15間(約27メートル)の大蛇が登場する。最初は村人を怖がらせていたが、旅の僧がお経を唱えるとおとなしくなり、大蛇が自ら掘った池を守るようになったという。

 「大昔、大きな揺れがあった時、地震の仕組みが分からない人たちは、地表に現れた断層を見て大蛇や龍のしわざだと考えたのではないだろうか」

 修学旅行で子どもたちが訪ねてくると決まって話すことがある。「『地震のせいで』と後ろ向きに考えるのは、やめよう。『地震のおかげで』たくさんのことが学べ、思いもしなかった人とも出会えたのだから」

    ◇

    14日午後1時半から益城町木山のミナテラスで「追悼の集い 語り継ぐ繋(つな)げる講演会」がある。永田さんのほか、2004年の新潟・中越地震の経験談や、阪神大震災を題材にした浪曲「1995年・冬」などが披露される。入場無料。問い合わせは、「益城だいすきプロジェクト・きままに」の吉村代表(090・3072・7324)。(森北喜久馬)

     ◇

    熊本県益城町が谷川(たにごう)地区で整備していた布田川断層帯の見学施設が完成し、熊本地震の前震から8年となる14日から公開される。

 町内には、熊本地震で地表に露出し、その後、国の天然記念物に指定された断層帯が3カ所ある。このうち谷川地区では、「共役断層」と呼ばれる交差した二つの断層を見ることができる。

    町生涯学習課によると、この断層が露出したのは民家の庭で、町は地震から2カ月後に保存を決定。敷地や建物をまとめて買い取り、見学施設として整備してきた。

    保存工事では、風雨で断層の土砂が崩れないよう特殊な加工を施したうえで、テントの屋根で覆った。さらに、断層の直上にあり、大破した馬小屋と納屋は、壊れたままの姿をとどめるよう補強した。

    展示施設のそばには、駐車場も兼ねる谷川展望広場がある。ここからは、遠く雲仙普賢岳が見通せる。町生涯学習課の森本星史学芸員は「布田川断層帯は、別府から島原半島に至る地溝帯に沿って延びている。火山や地震の活動で今の地形が造られてきたことを感じてほしい」と話している。(森北喜久馬)

熊本地震(2016年4月16日)の本震発生後10日間で,  震源域周辺の電子基準点では最大で2 cm程度の地殻変動が継続して見られたという.  地震後に地殻変動が継続する現象は、大規模な地震の後によく見られる. 熊本県の調査は深さおよそ2.5メートル幅およそ5メートルの溝を掘って行われ過去の調査の形跡が残る断層面が最大で50センチほどずれ動いていたことが確認されたという熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センターの鳥井真之特任准教授は, 地震の前後で同じ場所の断層が動いたことを地下の地層から確認できたのは国内では初めてで, 世界でもアメリカ, ニュージーランドに次いで3例目だと述べている. 

共役断層の写真

文字情報だけでは理解しにくい共役断層が地表に現れた写真が益城町のホームページに掲載されているので引用させてもらった.

第4章 「布田川断層帯」の本質的価値 (益城町ホームページ)

東側から見たV型断層

Google mapの航空写真

「地学」に疎い素人には, 文章だけで「共役断層」を理解するのは難しい. AIチャットの説明と組み合わせてどうにか理解できたと思っている. 図中, 左下の概念図の点線部分が写真の太点線と符合する. 

民家の敷地に「V字型」に現れた地表地震断層(谷川地区)

断層は玄関先にあり, 母屋に平行するように現れた左横ずれ断層(北西−南東方向)は長さ40m, 縦ずれは最大約70cm. さらに, その前方には, これに交差してVの字を書くように表れた右横ずれ断層(北東−南西方向)がある. 長さ35m, 縦ずれ最大40cmとある. 断層の真上にあった納屋は倒壊こそ免れたものの断層の動きに伴って傾いており断層の動きがどのように建物に影響を与えたのかを視覚的に感じることができるという.

付記   共役断層のAIチャットによる説明

ChatGPTでは理解できないので, GoogleのGeminiを利用してみた. 

図版, 引用付きで, かなり詳しく教えてくれた. 

以下に回答を示した. 図版は別ウインドウが開き, 引用元のウエブページが表示される. アニメーションがあれば, 分かり易いと思い探したが見つからなかった.

質問  共役断層について詳しく教えて

AIチャット Gemini の回答

共役断層とは

共役断層とは、地殻に水平方向の同じ圧縮(または引っ張り)力が働いたとき、互いに断層面がほぼ直交し、ずれの向きが逆向きになる断層の組のことを言います。

簡単に言えば、一つの力が働いた時に、互いに90度くらいの角度で2つの断層が同時にできるというイメージです。

共役断層は、主に以下の3種類に分類されます。

共役断層ができるメカニズム

共役断層ができるメカニズムは、まだ完全には解明されていませんが、以下のような説があります。

共役断層の例

共役断層の例としては、以下のようなものがあります。

共役断層と地震

共役断層は、地震発生と密接な関係があります。共役断層のうち、いずれか一方の断層が活動すると、もう一方の断層も活動しやすくなることが知られています。これは、共役断層が互いに応力状態を伝搬しやすいためと考えられています。

実際に、過去の大地震の中には、共役断層が連動して発生したと考えられる例がいくつかあります。例えば、1995年の阪神・淡路大震災では、六甲断層帯と但馬断層帯が連動して地震が発生したと考えられています。

まとめ

共役断層は、地殻変動によって生じる複雑な構造の一つです。共役断層の研究は、地震発生メカニズムの解明や地震防災対策の向上に役立つことが期待されています。

共役断層について、さらに詳しく知りたい場合は、以下の文献などを参考にしてみてください。

何かご不明な点があれば、お気軽にご質問ください。

(2024.4.21)