分子内相互作用

フロンティア軌道法の適用例(分子内相互作用)

転位反応

Wagner-Meerwein 転位反応

脱離基(ハロゲン,OSO2Ar等)のβ位の炭素に付いたアルキル基が1,2-転位する反応である.C-X結合のLUMOに隣接する単結合R-CのHOMOが位相が合うように相互作用しRが移動する.中間体として三員環の橋架けイオンが提案されている.反応条件としては極性溶媒中で加熱するだけでも転位が進行することがある(加溶媒反応).

関連反応

Phenonium イオン

β位にフェニル基が付いたハライドやトシレートの置換反応を行うとフェニル基が1,2-転位した化合物が得られることがある.Xがアニオンとして離脱しようとすると,電子不足になった炭素に対して隣接位のフェニル基のp-軌道から電子が供給され,安定化する.HOMO-LUMOの相互作用として理解できる.

隣接基の関与による転位

β位にR2N, RSが置換した化合物で転位が認められている.チオン酸エステルがチオール酸エステルに転位するので,アルコールから対応するチオールを合成することができる.

1,2-水素転位

上記の反応と同様に考えることができる.中間体はエチレンのHOMOと水素のLUMOが相互作用した姿である.

環化付加反応

分子内軌道相互作用による反応性,配向性の変化

Trough-space相互作用による反応性上昇

2個の二重結合が接近すると,through-space相互作用によって,単独の場合より活性なFMO軌道が生成する(点線で囲んだ部分).したがって,ノルボルナジエンはノルボルネンより反応性が高い.FMOに注目すると,HOMOは高くなり,LUMOは低下する.下記の反応が起きることが知られている.その際,シクロプロパ環が生成していることに注目してほしい.

カチオンの安定性

Homoallylic系ステロイドにおける置換反応

3位に付いたハロゲン,トシレート等の置換反応を行うと,シクロプロパン環を有する6位置換体が得られる.

空の軌道LUMOに空間的に近い5,6位のHOMOから電子が流れ込むためである.

7-ノルボルネニルカチオンとアニオンの安定性

bicyclo[2.2.1]heptene骨格の7位のカチオンは,cyclohexene環の二重結合と相互作用する.

空の軌道LUMOへ空間的に近いHOMOから電子が流れ込む.アニオンの場合は一方で位相が合わないので安定化しない.

Hyperconjugation(超共役)

電子論ではメチル基があたかも二重結合のような振る舞いをするということで解釈されている現象である.FMO論ではHOMO-LUMO軌道相互作用で説明できる.