江戸マップ

人文学オープンデータ共同利用センターから江戸マップβ版が公開されている.同センターが推進しているインターネット上の画像を効率的に共有・運用するための国際的な規格であるIIIF(International Image Interoperability Framework)対応の高精細画像を用いた画像公開の利用事例のひとつである.説明文の一部を以下に記した.

 『江戸マップβ版は、国立国会図書館が公開する古地図「江戸切絵図」29枚から8722ヶ所の地名を抽出して地名データベース化するとともに,現代の地図や情報とも統合することで,歴史ビッグデータ歴史GISや江戸都市空間の地理情報基盤を構築に活用します。なおデータ収集にはIIIF Curation Platformを利用しています。 [もっと詳しく..] 』

国立国会図書館が公開する古地図「江戸切絵図」は,国立国会図書館が「錦絵でたのしむ江戸の名所」のタイトルで公開しているプロジェクトである.江戸切絵図(例  本郷湯島地図)から地名(例  湯島天神)をクリックすると広重の錦絵が表示される(詳細は省略).江戸マップβ版は,この江戸切絵図の地名をベースに作られている.

江戸マップβ版使用方法を以下に記した.リンクをクリックすると以下の画面が表示される.

取り敢えず,地名検索に「細川屋敷」,分類選択で「屋敷地」を選択して検索してみた.

検索結果
1件だけヒットする.

[地名=細川,分類=屋敷]の条件で検索すると細川家の屋敷が24件ヒットする.詳細は別稿で説明したい.

地図の表示結果

画像の下に「拡大図表示」,「位置合わせ地図表示」が表示される.適宜クリックする.

拡大表示をクリック

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レイヤーの切り替え表示

江戸切絵図の背景に薄字で最新地図を表示

江戸切絵図レイヤーをOFFにして表示させると

対応する地図範囲をGoogleマップで見ると,以下のとおりである.敷地内に永青文庫と表示されている.注)上屋敷ではない.

ついでに東大赤門を調べてみた.
湯島本郷地図,次いで本郷5丁目を選択.

東大赤門は加賀藩の屋敷であることが分かる.東大赤門が薄い字で大きく書かれている.

表示範囲拡大

対応する現在地図を表示

利用例
江戸時代の各藩の屋敷には,上屋敷,中屋敷,下屋敷などがある上,支藩の屋敷も存在するなど複雑である.肥後細川藩の屋敷について調べていると以下の記載があった.

戸越屋敷は寛文2年(1662),細川分家の熊本新田藩の細川利重が拝領したものだったが.本家の細川綱利の所持していた白金屋敷と交換してし,戸越屋敷は細川本家のものとなった.

このような場合,当時の今昔地図が必須である.

    また,江戸時代の史料を調べていると,参勤交代の際に江戸詰になった家臣の日記,手記に遭遇する.そのような際にこのような地図があるとたいへん役に立つ.現在,β版(試用版)の段階とのことであるが,本格運用に向けての機能強化を期待したい.個人的には,近い将来,AR(拡張現実)やVR(仮想現実)による江戸マップ散歩が実現するのではないかと思っている.

(2024.6.22)