初めての入院
10月24日,39℃超の発熱に襲われ,国立病院に緊急入院した.11月3日退院する前日まで,点滴チューブに繋がれた不自由な生活を強いられた.人生始めての入院のため,すべてが初体験であり,薬物治療の実情を身をもって見聞した.薬を開発する立場にいる後輩の参考になればと思い,ブログとしてまとめてみた.
入院前の検査項目
問診
血液検査
新型コロナ,インフルエンザ感染の有無
CTスキャン
胸部X線検査
超音波エコー(入院後)
細菌の有夢 尿検査 血液
検査結果 CTスキャンの画像から肺炎
新型コロナ感染症ではなかったが,CRP値が12を超えているため,入院を勧められた.2日後のCRP値は8,その後3,次いで1台に低下,抗生剤の効果が確認された.なお,正常値は0.3以下である.11月8日の値は0.54であった.
治療薬 日本薬局方収載の抗生物質を
β-ラクタマーゼ阻害剤配合抗生物質製剤
タゾピペR配合点滴静注用バッグ4.5「ニプロ」
【薬 効 薬 理】
タゾバクタムは、それ自体の抗菌作用は弱いが、β-ラクタ マーゼに対して不可逆的阻害作用を示すので、β-ラクタム 系抗生物質と組み合わせて用いる。 通常、 ピペラシリンと の合剤とする。 ピペラシリンナトリウムは、β-ラクタム系抗生物質に属す るので、 作用機序は細菌の細胞壁を構成するペプチドグリ カンの生合成阻害である。 その結果細胞壁の剛直性が失わ れ、 細菌は破裂・ 死滅する。 広域ペニシリンであり、 抗菌 スペクトルが拡大されている。2)
【有効成分に関する理化学的知見】
1.タゾバクタム
一般名:タゾバクタム(Tazobactam)
略 号:TAZ
化学名:(2S,3S,5R)-3-Methyl-7-oxo-3-(1H-1,2,3-
triazol-1-ylmethyl)-4-thia-1-azabicyclo[3.2.0]
heptane-2-carboxylic acid 4,4-dioxide
分子式:C10H12N4O5S
分子量:300.29
β-ラクタマーゼ阻害剤配合抗生物質製剤
構造式:
結晶構造はCCDCのデータ JAMQUN
二量体,水和物
性 状:・白色~微黄白色の結晶性の粉末である。 ・ジメチルスルホキシド又はN,N-ジメチルホル ムアミドに溶けやすく、 水、 メタノール又は
エタノール(99.5)に溶けにくい。 ・炭酸水素ナトリウム溶液(3→100)に溶ける。
2.ピペラシリン水和物
一般名:ピペラシリン水和物(Piperacillin Hydrate)
略 号:PIPC・H2O
化学名:(2S,5R,6R)-6-{(2R)-2-[(4-Ethyl-2,3-
dioxopiperazine-1-carbonyl)amino]-2- phenylacetylamino}-3,3-dimethyl-7-oxo-4- thia-1-azabicyclo[3.2.0]heptane-2-carboxylic acid monohydrate
分子式:C23H27N5O7S・H2O 分子量:535.57
構造式:
結晶構造はCCDCのデータ PIPCIL
水和物
性 状:・白色の結晶性の粉末である。 ・メタノールに溶けやすく、エタノール(99.5)
又はジメチルスルホキシドにやや溶けやすく、 水に極めて溶けにくい。
入院中は、点滴で十分な水分補給を行い、同時に点滴から抗生物質を投与され,たが, 退院前の一日は検温, 酸素値, 血圧などに於いて異常がないかチェックされた.
整腸剤について
抗生物質の服用により現れる下痢など、腸内細菌叢の異常による諸症状の改善のため宮入菌製剤(ミヤBM錠)を服用した. 注)酪酸菌は芽胞というカプセルのようなものに, 菌の一つ一つが包まれているため, 口から入ったときに胃酸や熱などの影響を受けにくいという特徴があり, 抗生物質にも強い.
医療のIT化
昭和57年(1982)に薬学部に於ける情報処理教育を提案し, 多くの反対意見を押し切ってコンピュータ教育を開始したこともあり, 感慨深く40年後の姿を垣間見ることができた.
健康保険証のマイナンバー化
リストバンドによる患者の識別と薬物投与と検査データの一元管理
発生源入力(医師, 診断結果: 看護師 体温, 血圧. 酸素濃度等の測定結果) , パソコカーㇳの利用
病院薬剤師の訪問 処方箋に基づく服薬指導
かかりつけ病院との連携 手紙とCDデータ添付, オンライン化は未実現
医療保険の入院給付金申請はオンラインで実行
新型コロナウイルスワクチン予約変更はオンラインで実行
ナノカプセルによるDDS革命が望まれる
今年度のノーベル化学賞の候補にノミネートされたナノマシンを利用したナノミ゙セルを利用したら,病巣選択性,親和性が向上し,飲み薬でも治療可能になるのではないかと思った.肺炎の病巣の環境変化が解明できれば可能のはずである. 新しい高分子ナノミセルを用いたDDS研究が薬学部でも進展することを期待したい.
関連ブログ:脳内に薬を届けるナノミセル (高分子ナノミセル, 薬物運搬体, 血液脳関門)
入院中何をしていたか
個室しか空いていないということで,個室を使用した,窓からは,我家の先祖が代々住んだ島﨑地区が一望できた,右手には藤崎台球場があり,金峯山が正面に遠望できた.幸いFree Wi−Fiが利用できたので,テレビを見ることは少なかった.もっぱらスマホを使ってNHKのサイトを見たり,好きな時間にNHKプラスで再放送をを閲覧した.その他の時間は,家内がダイソーで購入してきてくれたナンプレ(数独)の問題を解くことに専念した.今から考えると`ノートパソコンを持ち込むこともできたが,ストレス解放にはならなかっただろう.
改善してほしい点:今回は個室を使用したが,改善してほしい点をいくつか見出した.トイレの操作ボタンやロール紙が座位で左斜め後ろに存在するのは理解できない.点滴チューブを腕に付けた状態での操作は至難の業であった.洗面所のセンサーの感度が悪く,赤外線センサーのためか有色コップでは機能しなかった.
追記
10月24日夕刻入院,11月3日退院,11月8日に外来で血液検査を受けた. その結果, 更に薬物投与の必要がないことが判明し, 以後の管理は掛かり付け病院に移行した.
参考資料
抗生物質の結晶構造はケンブリッジ結晶データセンター(Cambridge Crystallographic Data Center, CCDC)から入手した.
(2023.11.6)